第2話 周りの状況を把握してみよう
とにかく、自分がヤベー状態だということはわかった。
ここがどこかもわからない。真っ暗だし、何も見えない。
唯一、自分の体の下が草っぽいとだけ触感? でわかる。
とにかく、周りの状況を確認しないと、早々に詰んでしまう・・・。
う~ん、う~ん、と唸っていると、なんだか体の中でぐるぐるとエネルギーが回っている気がしてきた。
いや、体がグニグニしている話じゃなくて、体の中をエネルギーが回っているという話ね。なんだか落ち着かない感じだ。
だいたいスライムだし、目とか鼻とか口とかもなさそう・・・いやまて、鼻が無いのはよくあるパターンだが、目や口はスライムでも存在しているパターンがあるぞ。ドラ○エとか、転○ラとか・・・いや、あれは公式ではシワだったっけ。
まずは周りの状況が分からないとどうしようもない。
目で見るイメージも大事だが、周りがどうなっているか何としても探らねば。
そう思ってなんとかならないかウンウン唸っていると、そのうち視界が開けて自分の周り360°の情報が伝わってくる。
どうやらここは森の中のようだ。鬱蒼とした木々に囲まれている。自分の周りはわずかに開けて草むらになっているようだ。
(てか、何で俺、360°全開で周りの景色が見えるんだ? というか、見えるというか、わかるというか・・・?)
おかしいと思いつつも、周りの景色が分かり始めたため、うれしくなって周りをぐるぐると見渡す。
(なんだかスゲー森の中・・・? いったいここはどこなんだよ・・・)
急に不安になってキョロキョロしてみる。見えることで不安になることもあるのね。
ガサガサッ
(な、何だ? どこだ・・・?)
音のした方に体を向けて目を凝らす。今の俺に目があるかどうか知らんけど。
集中して見ると、周りのイメージだったものが、視界のイメージに代わる。
じーーーーーっ
さらに集中して見ると、木々の根元に生える雑草の向こうに、キツネかイタチのような小動物が顔を覗かせていた。少し見ていると草むらの向こうに消えていった。
(ふーーー、びっくりした。ゴブリンやオークだったらどうしようかと思ったぜ・・・)
あれ? 今はスライムだから、モンスターより人間の方がヤベーのか?
俺ってばザコキャラすぎて、どっちがヤベーかわかんねぇ!
それにしても、360°俯瞰イメージの位置からすると、今のイタチかキツネ、すげー遠いな。あれを見つけるって、視力6.0くらいあるんじゃねーか?
むむむっ!今度は音を拾おうと集中してみる。
体の中のエネルギーをぐるぐるしながら集中して見ると、周りの音が聞こえてきた気がする。
イメージとして取り込んでいるようだが、俯瞰イメージと違って音は人間の頃に耳で聞いていた感じと同じだ。違和感がない。
風になびく木々のざわめきや、遠くで鳥の鳴き声などが聞こえてきた。
視覚、聴覚の他に、触覚もある。自分の腹?の下の草の感覚が感じられるからだ。
だが、それ以外の感覚は不明だ。とりあえず違う触感を試そう。
俺はズルズルと近くの木の根元まで寄っていった。
そのまま木の幹にべっとりとくっついてみる。
幹の触感がじんわり伝わってくる。
(むむむむむ~)
木の幹に自分のイメージでは両腕で抱きかかえるようにくっついてみる。
もちろん腕はないが。
自分の体が伸びて幹の両側から巻き付くように伸びていく感覚が分かる。
きっと傍から見たら奇妙な光景だろうな。木に纏わりつくスライム。う~む、シュールだ。
それにしても、周りは完全に木々に囲まれている。
森の中だ。完全に森の中だ。
それ以外に言いようもない。
(そうだ! さっき俯瞰で周りの景色がイメージ出来たぞ。それならば気合を入れればもっと広く遠くまでわかるかも!)
早速体内のエネルギーっぽいものをぐるぐる回すイメージをしてから周りの景色を見ようとさらにイメージする。
(おおおっ!)
自分の頭上から視線が空にずっと上がっていく感じがして、広い森が全体に見えてくる。
(すげー、スライムってこんな感じで周りを認知してるんだな~)
当然スライムなんて元いた世界じゃいなかったから、自分の想像でしかないけれど。
(おっ、あっちに村っぽいのが見える! ヤベーな、そんなに今の位置から遠くないな)
村のような集落が確認できた。少なくとも人が住んでいる証拠だな。人とコミュニケーションをとりたいところだが、今の所その方法がわからない。場合によっては瞬殺される。
(おっ、反対側に泉があるぞ! すぐ近くだ)
自分の場所からすぐ近く、木々の合間から泉らしき水が溜まった場所を見つけた。
(あ、あれ・・・?なんだかグワングワンしてきたぞ・・・あれれ?)
そして、俺の意識は暗闇に包まれていった・・・。
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