第3話 とりあえず動いてみよう
・・・気が付くとそこは、森の中だった。
(変わってねーよっっっ!)
て、自分で突っ込んでいてもしょーがないな。
どうやらしばらく意識を失っていたようだ。
あのぐるぐるエネルギー、使いすぎると意識が飛ぶみたいだ。
こういう時にステータスとか数値でわかるようになってると楽なんだがな~。
やっぱゲームってよく出来てたわ。現実はツライな。
この状態で意識を失うと、敵が来た時にヤベーな。
疲れて意識が飛ぶ直前でやめるか・・・。でもあれが仮に魔力だとすれば、枯渇するくらい使い込むと総量が増えていくってのがラノベのお約束だ。
そのあたり、どのように折り合いをつけて対処していくか、悩むところだ。
とにかく、触覚、視覚、聴覚の三つは確認できた。
先ほどから、ズルズルと引きずるように移動することはできる。
全体の体のイメージからすると、かなりデローンと溶けて崩れているような気がする。
いわゆる『グロデスク系スライム』のイメージだ。
これは間違いなく討伐系でジ・エンドのパターンだ。
某伝説のRPGゲーム「ドラ〇エ」のように『かわいい系スライム』としてティアドロップ型をマスターし、「ボク、スラえもん! 悪いスライムじゃないよ!」って宣ってかわいい巨乳エルフの胸元にダイブするのだ!
・・・現実逃避? ほっといてくれ。
だいたい、ズルズル引きずる移動自体気持ち悪いし、何より移動スピードが遅い。
だが、ティアドロップ型のスライムならば、ぴょんぴょん飛び跳ねて逃げることでスピードを上げることができるはずだ。何より、気持ち悪さ軽減だ!
例のエネルギーぐるぐるを行いながら、なんとか体を丸くなるようにまとめていく。
(ぐぐぐっ・・・ぐぐっ・・・)
だんだんギュギューっと丸く集まってくるが、
(ぐはっ・・・疲れた!)
疲れ切ってエネルギーぐるぐるが出来なくなると、途端にデローンと崩れてしまった。
(うわ~、この姿ラクだわ~)
デローンと伸び切った状態だと、ほとんどエネルギーを消費しない。
深夜残業を終えて帰ってきたマイホームパパが背広の上着を放り出し、首元のネクタイを緩めてリビングのソファーにドテーッと寝転がった時くらいラク。
・・・いや、地球時代ボッチで独身社畜サラリーマン戦士な上に彼女なぞ出来たことなかったから、マイホームパパの気持ちなんて実際は知らんけど。
(だがなぁ・・・)
どう考えてもこの「デローン」はヤバイ。見つかればソッコーアウトだ。経験値の元だ。
何としてもかわいい系をマスターせねば生きる道はない。
(やったるぜー!)
そして2か月後(笑)
いや、もはや体感的に、だから。テキトーだから。
スマホチェック出来るわけでもないし、カレンダーで日にちや曜日が確認出来るわけでもない。
日が昇って、そのうち日が暮れて夜になって。でもってまた朝になって日が昇って。
最初の一週間くらいかな。今日もしかして日曜日? みたいな自虐ネタ考えてたの。
以降数えてもいない。
この間気づいたのは、腹も減らなきゃ、排せつも無し。眠くもならない。熱い寒いも意識をしないと感じない。ただしエネルギーをぐるぐるするとメッチャ疲れる。
だが、かなりエネルギーぐるぐるに慣れて来たのか、長時間ぐるぐるしていても疲れにくくなってきた気がする。それにぐるぐるしているエネルギーの総量が大きくなった気もする。
これについてはやはり読み通りというべきだろう。
魔力だよね? 魔力だよね? 誰か魔力と言って! まほー使いたい!(セツジツ)
まあ、それは置いておくとして。
スライムボディ、なかなか強靭だということが分かった。
木登りしていて枝がボキッと折れて地面に落下し激突した時も、ちょっとビシャッっと飛び散っちゃった気はするが痛みも無く、戻れーとエネルギーをぐるぐるすればまた一つに戻ることが出来た。
野生の草や花も包み込むようにして取り込もうとすると消化するのか体内に吸収できた。
ちょっとチャレンジして小動物・・・うさぎっぽい何か?(うさぎに角は生えていなかったはずなのでうさぎっぽい何かだ)を捕まえて吸収したりもしてみた。
反撃されて噛まれても全く痛くなかったし、噛みつきも手ごたえなさそうだったし、このボディに攻撃は通じにくいのかもしれない。
・・・もっとも油断は禁物だ。何せ大半のゲームでスライムはザコキャラなのだ。なんとかスラッシュとか、なんとかスレイブとかの必殺技はもとより、どこかの一般戦士におおかなづちで一撃もらうだけで木っ端微塵に爆散してしまうかもしれない。
・・・とりあえずザコキャラとしての悩みは横に置いておこう。
トレーニングの結果、ついにティアドロップ型でぴょんぴょん飛び回ることができたのだ。
今は達成した事象を噛みしめ喜ぶこととしよう。・・・共感してくれる相手はどこにもいないが。
だが、油断すると・・・
(うわぁぁぁぁぁ~)
デローンと溶けるように崩れてしまう。
なんだかティアドロップ型でぴょんぴょん飛び回るのはウサギ飛びでもしているかのように疲れる。
(これは、このティアドロップ型でいることが自然になるくらいにならないとな・・・って俺はスーパーサ〇ヤ人かっ!)
一人ツッコミを入れながら、俺は一生懸命丸くなった。
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