第2話
ただ。
「大抵実年齢よりも下に見られる、可愛らしい容姿」を、
めぐちゃん本人は、存外気にしている…と言うか、
はっきり言ってコンプレックスに思っているということも、私は知っている。
昔は長く伸ばしていた髪を、やや短めのボブスタイルにしたのも、
そんな気持ちの表れらしい。
「頼りない」と見られることと同義である、と、
…決して、普段からそう声高に主張するタイプではないのだけれど、
事有るごとに、
例えば、「可愛い」だの、「高校生って言われても判らない」だのと言われるたびに、
言葉の上では「ありがとう」、または「ありがとうございます」と、礼儀正しく振る舞うけれど、
そう言われて全然喜んでいない証拠には、
身体をくねらせながらの「やだあ、本当に~?嬉しい~」なんぞという台詞は、
私の知る限り、一度も口にしたことがないどころか、
私の目の前で、
めぐちゃん本人に「実年齢よりも若く見える、可愛い」という旨の「褒め言葉」が向けられるごとに、
初対面の相手、…特に男性の場合ならば、
めぐちゃんの可愛いらしさそのものに目を眩まされて、まず気が付かないだろうけれども、
その、当の称賛の対象である、彼女の「可愛らしい」瓜実顔に、
いっそ律儀な程に毎回その都度、奇妙に引き痙った笑顔が形成されるのを、
めぐちゃんとの付き合いの長い私は、これまた毎回その都度目撃している。
これもまた、本人は気にしているらしいことなのだけれど、
めぐちゃんは、思っていることが顔に出やすい性質である。
「…良いじゃん、素直で」と言うと
「良くない!
二十代も半ばを過ぎて、ポーカーフェイスひとつできないなんて情けない…!」
と、彼女は余計に憤慨する。
(私から見れば、その、本気で自分に腹を立てているらしい様子も、また可愛らしくて、
傍で見ていて、思わず顔がニヤけてしまうのだけれど)
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