第6話 第2ラウンド開始

 まず俺が風呂で体を清めた後、すぐに瀬名さんと交代した。


 それからはテーブルに座ってじっとしていた。スマホをいじる気にもなれないし、未だ心臓がバクバクしている。

 だってさっき寝間着姿も撮らせてあげると言ったんだぞ。それでどう落ち着けというんだ。


 しかし瀬名さんは何でこんな事をするのだろうか。

 単なる余興としてはヤケに乗り気だし、いわゆる仕事の練習みたいなものだろうか。


 うん、きっとそうだ。

 まさかモデルの瀬名さんが俺みたいな平凡な奴に……。


「お待たせ勇人君」


「せな……」


 名前を言いながら振り向こうとした時、文字通り言葉を失った。

 

 キャミソール、カーディガン、そしてロングパンツ。

 それらが薄青で統一されたルームウェアを、瀬名さんが身にまとっていたのだ。

 

 ルームウェア特有の薄目仕様が、瀬名さんのプロポーションのいい身体つきを強調させている。

 しかもルームウェアの中から、綺麗なI状をした胸の谷間が……。


「ごめんね、すっぴんの状態で。印象変わったでしょ?」


 今がすっぴん? 


 いやいや、さっきのメイク状態とほとんど変わっていないよ?

 ぶっちゃけメイクなんていらないくらい出来すぎている。


「変わったとは感じませんね……。というかルームウェア、似合ってると思います」


「そう言ってる割にこっち見てないね。しかも耳真っ赤よ」


「これは生理現象で……」


「へぇ、面白い生理現象。そんなにもドキドキしているんだ」


「…………」


 悪戯っぽく微笑む瀬名さんに対して、俺の身体はヒートアップ中だ。

 こんなにも寝間着姿が綺麗だったら、誰しもこの生理現象が起きる訳で。


「さてと始めるよ。スマホの用意はいい?」


「は、はい……」


 ともあれ撮影の第2ラウンドが始まってしまう。


 俺がスマホを用意した後、瀬名さんがベッドへと寝そべった。

 そうして仰向けの無防備体勢になって、こちらへと流し目を送るというポーズが出来上がりだ。


 なんてセクシーな……それでいてエロい。

 薄目のルームウェアを着ているのも、それらに拍車をかけている。


 あと仰向けになっているのに胸が潰れないってすごいわ。

 それほど実っているって事だろ? 一体どれくらいあるんだカップ。


「ほーら、ぼぉっとしないで。風呂上がりの寝間着姿を撮らせるなんて、勇人君が初めてなんだから」


「でしょうね……」


 寝間着なら普通の撮影にあったかもしれないけど、今回は「風呂上がり」という点が最も違うところだ。


 肌がしっとりとしていて、ピンク色に上気している。

「仕事用の寝間着姿」よりも「風呂上がりの寝間着姿」の方が色気が強いのは、目に見えて明らか。

 そして前者とかならともかく、後者なんて仕事ではやらないだろう。


「……いきますよ」


 俺は息を呑んでからスマホ撮影をした。


 何回か撮影したところで、次々とポーズを変えていく瀬名さん。

 うつ伏せになって豊満な胸をむにゅうとさせるポーズ、シーツを身体に巻きつけるポーズ、カーディガンを半脱ぎさせて肩出しをさせるポーズ。

 

 どれもこれも男性を虜にさせるような、まさに瀬名さんからの精神的攻撃。


 俺は口をキュッと閉めながら、ただひたすら撮影するだけのナニカに成り果てていた。


「勇人君、何かリクエストとかある?」


 そう瀬名さんが尋ねてくるけど、もうこれで満足な訳で……。


「いや、十分ですよ。本当にありがとうございます」


「そっかぁ……じゃあこれは?」


「えっ……っ!?」


 何と、瀬名さんが胸元をこちらに見せるという暴挙に出たのだ。

 

 キャミソールが重力で垂れた事で、見事な双丘が現れてくる。

 ギリギリ下着は見えていないけど、そんなの露になった深い谷間の前ではどうでもいい問題だ。


 この人、俺を悶え殺す気なのか?

 まさか仕事場でこんな事していないでしょうね!?


「さすがにそれは……撮影できないです」


 こんなのを撮影する度胸なんて、俺にあるはずがなかった。

 ええありませんとも。


「ううむ残念。でもこれはやりすぎよね、ごめんなさい」


 そう言って瀬名さんが身体を起こす。

 今さっき残念とか言っていたけど、一体何に対してなのか俺には分からなかった。


「謝る事は……。とにかくポーズすごい良かったです……どれもほんと魅力的でして」


「魅力的……魅力的かぁ。そう言われると嬉しく感じてくるね……ありがと」


 そうお礼をしつつ、屈託のない笑顔を浮かべてくれる。

 俺は目を泳がしながらも、「どうも……」と小さく返すしかなかった。


「……そろそろ時間だし、ここでお開きにしようか」


 チラリと時計を見た後、ルームウェアを整える瀬名さん。

 どうやら撮影はこれで終わりのよう。長かったような短かったような。


「本当の撮影みたいでしたね。お疲れ様です」

 

「どうも。よかったら撮った写真、大事に保管していいから」


「……分かりました」


 俺の手元には、瀬名さんの写真を収めたスマホがある。


 魅力的で、綺麗で、それでいて扇情。

 そんな写真が俺の手の中にあると思うと、顔や胸とかが熱くなってしまう。


 にしても風呂上がりのルームウェアを撮らせるなんて、なんてサービス精神が強いのか。


 そもそも今さっきの胸元を見せるやつ、あれを仕事でもやるのか微妙な辺りだ。

 一体どうしてあんな事をしたんだろう。


 ともあれ……まるで夢を見ている気分だわ。むしろ夢であってくれ。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 当初、佐矢香さんは女優という設定でしたが、諸事情によりモデルへと変更いたしました。

 そのおかげで上記のような展開が出来たので、まさに怪我の功名ですね。


「面白い」「続きが気になる」と思った方は、ぜひとも☆や♡やレビューよろしくお願いします!

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