第12話 待ち構える、世紀の大事業とは
大槻氏は、かの少年について述べた。
彼は昔の私に、結構似てきました。
御存知の通り、私はクルマでしたけど、彼はそれが鉄道になっているだけで、本質的な部分というのが、ますます似ているような気がしてならんのです。
うちには2人息子がおりますけど、その息子ら以上に、私とよく似ている気性と言いますか、そういうものを感じることが多いです。聞けば、彼の父親という方が、私とよく似た要素を持っている人物だそうですから。まあその、今は諸般の事情で音信不通になっておりますから、お会いしたことはありませんがね。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
両者ともここで、高級茶葉によって出されたお茶を飲んだ。
湯呑も、それこそ賓客に出すべきものが使われている。何と言っても、その湯呑の上にかぶせられていた蓋が、その「高級感」をさらにかもし出している。
「大槻君、君は確実に、この養護施設創立以来の大事業を行わねばならなくなるぞ」
大宮氏は、そう言い切った。これまでにないほど、正面を切った問いかけである。
「大事業とは? すでに全面移転も終えまして、何とか落ち着きが取り戻せつつあるところですけれど、それ以上の大事業が待っているということでしょうか?」
鳩が豆鉄砲を食ったような心持で、大槻園長が尋ねる。
「大事業というなら、この度の全面移転のほうがはるかに大事業であり、歴史に残る話ではある。ただ、次のこの大事業は、あくまでも、園長である大槻和男君御自身の決断によってやり遂げなければならないものである。それはこの際明言しておこう」
「他の職員や理事、それに、国や県の助けを借りるわけには・・・」
言葉が途切れたところで、大宮氏は、ぴしゃりと一喝するかのように断言した。
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