第11話 陸斗はイケメン?


〜〜陸斗視点〜〜


 今日は日曜日。


 3姉妹からの提案で、俺は散髪をすることになった。

 なんでも引っ越しを手伝ってもらったお礼だとか。

 

 別に気にしなくていいんだけどな。

 強く断るのも何んだか悪い。

 

「家で切るのか?」


 俺は椅子に座らされ、シートを被された。

 

「そうよ。私が切るの」


彩弥音あやねが?」


 散髪は床屋に行ってするものでは?


「私たちが貧乏っていうのは前に話したでしょ? 美容室に行くお金がないから、髪の毛は自分たちでやっているのよ」


「えへへ。咲の髪の毛は 彩弥音あやねちゃんに切ってもらってるんだよ」


 ほぉ。

 姉妹でそんな工夫をしているのか。

 でも、

 

「なんで俺まで? 切れと言うなら床屋に行くが?」


  彩弥音あやねは微笑む。


「ふふふ。引っ越しのお礼なんだもん。それに咲と仲良くしてくれているしね」


 別に気を遣わなくもいいんだけどな。

 

「えへへ。お兄ちゃんとは漫画の貸し合いっこするんだもんねーー♡」


 凛華は鼻で嘆息をつく。


「ふん!」


 まぁ、散髪になれているなら任しても大丈夫か。

 三姉妹の髪型はお洒落だしな。


「じゃあ頼むよ」


「うん。期待してて。あ、そうだ。一つ聞いていい?」


「ん?」


「バッサリいってもいいよね?」


 そう言って取り出したのはバリカンとハサミである。


「何ぃいいいいいいい!」


 ちょいちょいちょーーい!

 バリカンが輝いてるよ!


「待て待て待てぇ! 俺を丸坊主にする気かぁあ!?」


「大丈夫よ♡ 任せて♡」

「お兄ちゃん、動いちゃダメだよ♡」


「ぎゃあああああああああああああ!!」


 俺の悲鳴は家内に響いた。


 30分後。


 鏡の前に俺はいた。

 そこに映る俺はまるで別人のよう。

 耳はしっかりと出て、襟元まで伸びていた髪はすっぱり切り捨てられた。

 不思議なことに、大量に切ったにも関わらず、頭のてっぺんはボリュームがある。


 シンプルに……。


「いい」


 咲は目を輝かせる。


「ふぁああ……。お、お兄ちゃん……」


 と同時。

 突然、警戒なポップ音が流れ始めた。


キラキラキラーーーーン♪


 おおお!

 これはチャンスタイムだ。

 好感度が+10以上の時に出る演出。

 咲の♡は七色に輝き、やがて光は収まった。


 あれ?

 俺の選択肢はなかったけど、特に対応しなくても良かったのか?

 まぁいい。彼女の数値は後で確認しようか。


 咲は飛び跳ねた。

 

「わはぁッ! お兄ちゃん、カッコいい!!」


 カ、カッコいいだとぉ?

 俺がぁ?


 カッコいいってのは大体こういうのじゃないのか?


『我の中に眠る闇の魂を呼び覚ませ。漆黒の邪眼にて封印を解き放つ。我は魔王の転生者! アーク・ヴォルド・ザガーー!!』


 って、こういう奴だと思っていた。

 まぁ、これは俺が好きなアニメのキャラのセリフだが……。


 鏡に映る俺は……。住む世界が違う住人だな。

 そばにいるのに違う空気の存在。

 いわば、スクールカースト上位勢……。


「バリカンは揉み上げを刈るのに使ったの。陸斗くんは耳を出した方がスッキリしてていいと思うんだよね」


「なるほど……しかし、不思議だな。てっぺんがフワッとしてなんだかボリュームが出たような気がするが?」


「少し空いてみたの。動きが出るようにね。髪の量が多いとベタっとして膨らまないのよ」


 そういうものなのか?


「気に入らなかった?」


「いや……凄くいいよ。ありがと。すげぇ気にいった」


「そう! 気に入ってもらえて良かったわ」


 チラリと凛華を見る。


 一応、聞いておくか。

 このキモオタとか言われて終わるだけのような気もするがな。


「どうだ? 俺、マシになったか?」


「は、はぁ?」


 彼女は顔を真っ赤にする。

 熱でもあるのだろうか?


「ったく! お姉ちゃんの腕がいいんだからな!」


「ふふ。まぁそうだな。プロの美容師みたいだよな」


「ふ、ふん! ちょ、調子にのんなよな!」


 妙な反応だな。

 キモオタって言わないし。

 これは良い反応なのかな?


 よし、それじゃあ3姉妹の好感度を見てみるか。

 と、その前に一覧表で段階の確認も必要かな。





プラスの場合。


0〜30 好き。

31〜50 大好き。

51〜80 恋人になりたい。

81〜100 結婚したい。





マイナスの場合


0〜30 嫌い。

31〜50 大嫌い。

51〜80 殴りたいほど嫌い。

81〜100 殺意を覚える。






 俺は3姉妹を+20にするのが目標なんだ。


 さてと、好感度数値化ハートデジット


 まずは、チャンスタイムがあった咲からだ。



♡+35(大好き)



 うおーー!

 段階が1つ上がってしまったぞ。

 髪型効果凄いな。

 しかし、大好きってもうオーバースペックですよ。

 まぁいいか。予想外だけど、好かれる分には問題ないだろう。


 続いて、 彩弥音あやね

 彼女は引っ越しが終わった時点で♡+6(好き)の状態だった。

 さて、今回はどうかな?



♡+10(好き)



 おお、彼女も上がってる!

 これなら目標の+20まであとわずかだ。


 さぁて、最後は問題の彼女だぞ。

 前回は♡−26(嫌い)だったからな。

 今回はどうだ?




♡−20(嫌い) 




 何!?

 +6もされてるぞ!

 凄いな。

 なんだかんだ言って、俺の髪型を気に入ってくれてたんだな。


 俺は凛華を一瞥する。

 彼女はチラチラと俺の方を見ながら「ったくぅ……。キモオタの癖にぃ」と呟いていた。

 その意味はよくわからんが、少しは改善されているようだ。



────


次回は最終回になります。

かなり時は進んで、6ヶ月後の世界となります。

さぁ、好感度はどうなったでしょうか?

みんなで確認してみましょう!



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