第6話 なんて呼べば良い?
「えーーと。ちょっといいかな?」
と、
「なに?」
「君のこと……なんて、呼んだらいいんだろ?」
え?
「苗字が同じになるじゃない。だから、松田くんって言うのも違うと思うし」
「……確かに」
あんまりそんなこと考えてなかったな。
互いに快適に暮らすことへの最適解を探すのに必死だった。
俺も彼女も松田だからな。家の中で松田さん、松田くんじゃあ違和感しかないよな。
そうなると名前で呼び合うのがいいけど……。
彼女は俺が答えるより早く、次の話題に移っていた。
「いきなり兄妹か……。……なんか私。妹みたいだし」
混乱してる……ぽいな。
慣れない家、慣れない家族。
俺だって、まだ納得してるわけじゃないからな。
「俺さ。君たちのこととか、美桜子さんのこととかさ。3日前に初めて聞いたんだよね」
「え? そうなんだ……。私はもう少し前かな。1ヶ月前くらい」
「ははは。それでもいきなりだよな」
「ふふ。そうね」
「親がこれじゃあ子供は戸惑うよね」
「……本当。ママはマイペースだから」
「ああ、俺んとこもそうなんだ。3日前にいきなり再婚するってんだもん。喜びより驚きの方があるよね」
「ふふふ。本当ね」
それで、呼び名をどうするかだよな。
「兄妹のことだけどさ」
「うん」
「俺、一人っ子だったし、よくわからないんだ」
「……いきなりは戸惑うわよね」
「まぁ、それで考えたんだけど」
「うん」
「友達みたいな感覚ってどうかなって」
「友達?」
「うん。いきなり兄妹って言われても難しいよね。お互い困ると思うんだ。それに……」
お兄ちゃんって言われても、対応に困るんだよな。
こんな可愛い女の子にさ。
彼女の見た目は、俺を蔑んできたスクールカースト上位勢そのものなんだよな。
そんな子と、いきなり共同生活するのだって驚いてんのに。
兄妹とかいわれてもどうすればいいのかさっぱりわからないよ。
「君と俺とは同い年だろ? 兄妹とか言われても困るよね。だから友達みたいな感覚でいいかなって」
「友達……」
「ああ、別に親友にならなくてもいいんだ。そういう友達じゃなくてさ。顔見知りより上ってか。……人畜無害な関係」
「人畜……無害?」
「だって、同じ家で暮らすんだよ? 出会った時に気持ちよく挨拶できるくらいにはなりたいじゃん」
「……なるほど。確かにそうね。お互いに嫌っていたら家で過ごすのは嫌になるものね」
「だろ。加えて、いきなり家族ってのも難しいと思うんだ。だからさ。友達みたいな関係。もっと詳しくいえば、良好な関係を築けている同居人」
「うん。いいね!」
おお!
賛同してもらえた!
「で、俺は一応、友達とかは呼び捨てにしちゃうタイプなんだ。だから、さっきも咲って呼ばせてもらったしね」
「私、それ聞いてちょっと驚いちゃった。いきなり呼び捨てだもん」
「え?」
「なんかお兄ちゃんっぽいなって」
俺がお兄ちゃん?
いやいやいや。
「ははは。柄じゃないよ。まぁ、俺のことは呼び捨てで良いと思うよ」
「よ、呼び捨て……。私、そんなのしたことない」
「あ、そうなんだ……。まぁ、好きに呼んでくれていいよ」
「そう……。じゃあ、陸斗くんでいいかな?」
「ああ。そうしてくれ。じゃあ俺は……。
「名前にさん付けって年上みたいね。それに友達は呼び捨てなんでしょ? だったら私も呼び捨てにしてくれていいわよ」
「そうか……」
彼女との距離感はまだわからないけど、仲良くなるなら、
「呼び捨てでいい?」
「……うん。いい」
じゃあ、
「
俺は気軽に言ったつもりだったんだけど。
彼女は真っ赤な顔になった。
「……う、うん。よろしくね。陸斗くん」
「なんか照れるな」
「もう、言わないでよ」
「ははは」
「……陸斗くんって、結構、頭いい方?」
「え?」
「あ、なんか良さそうっていうか……」
うーーん。
まぁ、席次は上の方だけどな。
でも、そんなに自慢できる程じゃないし。
「大した脳みそじゃないよ。それに頭の中のハードディスクは趣味の情報で大半を占めてるしね。勉学に使う容量は残ってないんだ」
「ははは。部屋、凄かったもんね」
さて、
前回は♡+2(好き)だったよね。
今回はどうだ?
♡+5(好き)
おお、ちょっと上がってる。
良い感じだな。
次の日。
彼女たちの引っ越しが始まった。
よし。
これを手伝えばもっと数値が上がるぞ。
めざせ♡+20だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます