第5話 俺の部屋

 俺は美少女3人を自分の部屋へと案内した。


 そこは8畳の広さ。こだわりが詰まった俺の城だ。


 扉や壁にはアニメのポスターが貼られている。

 本棚には千冊を超える漫画。

 アニメや漫画のフィギュアは専用の棚があって見栄えが良い。

 スチールラックにはゲーム機とソフトが山積みにされている。ラックの引っかけれる箇所にはアニメグッズがぶら下がっていた。


 ふむ。

 今日もいい感じだ。


「ゲェ〜〜。オタク臭ぁ〜〜」


 凛華は青ざめる。

  彩弥音あやねは目を瞬いていた。

 そして、ターゲットである咲。


「うわぁ! 凄ーーい♡ 漫画とゲームが一杯あるよぉ♡」


 よしよし。

 凛華の反応はこの際仕方ない。

 まずは咲の好感度を上げる。


「うわ!? 何これぇ!? 人形ぉ?」


 咲はフィギュアを見て感動していた。

 フフフ。自慢のコレクションだ。


「これ可愛い! 見て良い?」


「ゲロゲロォ。美少女フィギュアじゃん。キモすぎなんですけどぉ」


 う……。しまった。

 カッコイイ男のフィギュアに混ざって、3体ばかり美少女フィギュアが混ざっているのを忘れていた。

 流石にこれは引くかな?


 しかし、 彩弥音あやねを見ると、平然としていた。

 意外と受け入れてくれてるのかな?


「うわ! ねぇ、見て見てぇ、これパンツがリアルだよ」


 と、咲は女の子フィギュアを逆さまにして、スカートの中から下着を覗いていた。


 おいおい。そういうのは男がやるやつなんじゃないのか?

 下着確認って女の子もするのか……。

 



グラ……グラグラ。




 急な違和感。

 こ、これは、もしかして!?


 俺は直ぐ様3人の数値を見た。

 すると凛華の♡−28の表示。その♡マークがグラグラと揺れているのだ。


 まずい!! 

 これは数値が下がる予兆だ!!

 いわゆる、マイナス演出。

 プラスには存在しないマイナスだけにある特別仕様。

 

 美少女フィギュアのパンツは嫌悪感がマイナスすぎるのか!


ピコーーン!


 ああ!!

 凛華の数値がぁぁあ!!


♡−30(嫌い)


 いかーーん!

 マイナスが増えてしまった!

 しかも、まだグラグラ揺れてるぞ!


 このままいけば−31(大嫌い)になってしまう!

 −31以上は大嫌いの段階だ。

 ここに突入するのだけは絶対に避けなければ!


グラグラ……。


 そ、それだけじゃない!

  彩弥音あやねの♡マークもグラグラ揺れてるぞ! 

 彼女の数値は♡0だ。

 この数値をマイナスにはしたくない!


「ねぇねぇ、 彩弥音あやねちゃん。パンツパンツ」


 話題を変えるんだ!


「さ、3人ともゲームやらないか? 俺、結構、強いんだけど?」


「あーー! 大乱闘アタックブラーズだぁ!」


「やる?」


「うん! 咲やりたい!」


 凛華は目を細める。


あたしはパス。ゲームなんてオタク臭いし」


  彩弥音あやねは苦笑い。


「私もいいかな。不器用だしね」


「そ、そうか。残念だな。じゃあ、2人で対戦するか?」


「うん、やる♡」


 俺はゲームを用意しながら 彩弥音あやねと凛華の♡マークを見た。


「ふぅ……」


 良かったぁ〜〜。

 グラグラは止まってるぞ。

 ひとまずピンチは切り抜けたな。


 俺と咲はゲームを楽しむ。

 当たり前だが、俺の方がテクニックは上である。よって、彼女からは泣き言のような呟きが漏れる。

 

「つ、強ぉ! 結構やるじゃん!!」


 しかしな。

 ここでも俺の作戦が遂行されているのだ。


 その名も、接待ゲーム!


 これはゲーム好き同士の友好関係を構築する上で非常に役に立つテクニックだ。主に対象者と俺のゲームテクニックがかけ離れている時に効果を発揮する。よって、やり方には慣れが必要だ。


「あ、ちょ! 咲、負けちゃうう!!」


 まずは、戦いで接戦する。そして、わざと負けるのだ。

 ポイントは白熱するところ。わざと負けていることが相手にバレれば即座に盛り下がってしまう。よって、拮抗するのがベストで、最後はしっかりと負けるのである。

 要は、美味しい所を譲るのだ。勝利のカタルシスを対象に与え、親睦を深めるのである。


「勝ったぁ♡ 咲が勝ったよ!」


「うーーん、強いなぁ」


「キャハハ! 弱ぁあッ!!」


 お兄ちゃん……。

 今、お兄ちゃんって言ってくれたぞ。

 うう、嬉しすぎる。

 フフフ。接待ゲーム。効果覿面だな。


「お兄ちゃん、咲に勝てないじゃん。キャハハ!」


「よぉし、もうひと勝負!」


「えーー。もぉ、仕方ないなぁ♡」


 こうして、俺と咲は仲良くゲームをやったのだった。勿論、全部負けてあげたのは言うまでもない。


 さて、3人の数値を見てみるか。


 まずは咲からだけど。

 彼女は−5(嫌い)だったんだよな。どんなもんだろ?


 好感度数値化ハートデジット



♡+5(好意的)



 おおおお! 

 プラスになってるぅ!!

 仲良し大作戦成功だ!

 初日から好調だぞ。


 続いて、凛華。

 彼女は♡−28(嫌い)だったんだよな。

 それが美少女フィギュアで♡−30(嫌い)になってしまった。

 彼女とはゲームもやってないし、何も作戦は実行していない。自己開示で俺の部屋を見せたくらいだ。凛華は俺と咲がゲームをしているのを退屈そうに見ているだけだったな。数値を見ても仕方ないかもだけど、一応な。



♡−28(嫌い)



 あれ?

 −30だったはずなのに、プラスが増えたのかな?? 

 まぁ、どっちにしろ良かった。♡が−31以下になると評価が(大嫌い)になってしまうからな。同じ家族として絶対にそれだけは避けたい。


 さて、最後は 彩弥音あやねだけど。彼女とも何もやってないんだ。凛華同様。俺と咲の対戦を後ろで見てるだけだった。だから、数値なんて見ても仕方ないだろうけど……。



♡+2(好意的)



 え!?

 なんで!?

 フィギュアのパンツのところでは0だったのに、プラスに増えてる?


 つまり、ゲームをしてる時に増えたのか。


 凛華と 彩弥音あやね、ともに+2ほどあがっているな。

 一体何があったんだろう?


 姉妹独自の何かかな?

 一人っ子の俺には理解できない何かだろうか?


 まぁ、とにかく、プラスに傾いてるのは良いことだな。

 凛華はマイナスだが、まぁ、初日にしては良いだろう。


 目指せプラス20!

 仲の良い関係になるぞ!

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