この世界について詳しく
僕の父さんは大学教授だ。要は頭がいいということだけど、父さんは父さんで色々苦労したらしい。そんな父さんがいつも僕に勉強のことを相談するときに言う言葉がある。
「智信、お前は頭がいい。でも、驕ってはいけない。その知識は、他の困っている人のために役立てるんだ」
僕もその言葉は正しいと思う。歴史上の頭脳派の人物、孔子やエジソンだって、世界がよりよくなるために、その頭脳を使った。逆に、私利私欲のために使った人物は、そろいもそろって悲惨な運命をたどった。
でも、そんな言葉すら、この世界では簡単にへし折られることになる。
「お主たちには、世界を救ってもらいたい」
………は?
「………ずいぶんと手の込んだドッキリをするね、鈴村さん」
「ち、ちがうよ!」
「知ってた」
「何それ!?」
それはともかく、なんだこの状況は。急に変なところに呼び出されて、急に変な人に変なことを言われた。まずは、情報を整理しよう。
「すみません、まずここはどこなんですか?」
「ここは、王国ハラル。そして、私がこの国の国王、ホルストだ」
「大陸は?この国はどの辺に位置しているんですか?」
「ジル大陸の北東部に位置している」
「この国は、成立してからどのくらいの歴史があるのですか?」
「暦の上では、3000年以上の歴史がある」
「この国の政治体制は?」
「王政であるが、無論他の者の意見も取り入れる仕組みはある」
「軍事、経済、宗教などその他諸々……」
「青木くんストーーップ!!」
唐突に鈴村さんが止めにかかった。情報収集は基本中の基本なのに。
「なんで止めるの」
「いやだって、ただの質問攻めだもん!王様見てよ!汗だくだよ!」
「いや、急に転移させられて混乱するのも無理はない。私の方こそ、説明不足ですまなかった」
どうやらこの王様は名ばかりの王ではないらしい。というか一番の問題を忘れていた。
「世界を救うって、どういうことですか?」
「うむ………今、われらの王国は未曽有の危機に瀕している」
「危機とは?」
「うむ。それはだな………」
大体の整理はできた。ハラル王国、ジル大陸の北西部に位置する大国だ。軍事、経済をとっても、他国と比べてトップクラス。人口もまもなく1億人を超える。政治体制も絶対王政にはならないように、国民の代表者による議会もあるらしい。
そして、この世界のことも大体わかった。簡単に言うと、僕らで言うファンタジー世界ととらえても問題ない。科学はそこまで発展していないが、とにかく魔法が発達している。それに、モンスターなるものも存在しているらしい。というか、魔法とかの類じゃないと、僕らがここに飛ばされたことの説明がつかない。
そして、この国が見舞われている危機だが、隣国に問題があるらしい。まぁ僕も、どうせ戦争かなんかだろうなとは思っていたが。
その隣国というのが、ゼルム帝国。ジル大陸の西部に位置する国だ。聞く話だと、そこを治めているのは、人間ではなく、魔族らしい。にわかには信じがたいが、話の信憑性は高いので、信じるしかない。で、その国を治めているのが、魔王ことリリアーナ・デモンズ・エッジワンダーらしい。そのリリアーナだが、長らく治めてきた先代シュバン・デモンズ・エッジワンダーが、王位を継承し、つい最近、リリアーナが新生魔王となったとか。
そのゼルム王国が、ここ最近、ハラル王国に戦線布告をした。元々、対立していたが、どうやら国境付近でのハラル王国の憲兵による魔族殺害が引き金らしい。憲兵曰く、正当防衛らしい。そして相手は人間より魔法に優れた魔族、どう考えたってこちらに勝機はない。
「………ということですね?」
「う、うむ。理解が早くて助かる」
「いや、理解が早いなんてもんじゃない気もするけど………」
あ、そういえば
「自己紹介まだしてませんでしたね。青木智信といいます」
「あ、私は鈴村七海です。よろしくお願いします」
「ふむ、よろしく頼む」
だが、ここで一つどう考えたって不可解な問題がある。
「で、勇者として呼び出した僕たちに世界を救ってほしいと………で、なんで僕たちなんですか?」
「うむ、それはこの国の歴史に鍵がある」
「あ、また話長くなるやつだねこれ」
そして、王は語り始めた。僕たちをこの世界に転移した真意を………
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