黒電話

 本署では署長が必死になってブツブツと何か言いながら犬のように歩いていた。

 彼は何かしらの不安があり、それは曇と鴉のせいが余計に落ち着かない。

 そんな時に黒電話がけたたましくなると思えば、相手は鑑識係の者でその結果を電話を通してしてきたのである。鑑識係の話を最後まで聞いた時の署長の表情は気難しそうにした時、署長室の扉が開いて現れたのは山根であった。

「署長さん、誰と話しているのですか?」

「鑑識から検死の結果を聞いているのだが、それがどうした?」

 すると突然馬のように三宗署長に躍りかかりに来た。彼は何かしらこの上なく慌てており、今にも興奮しだして暴れしだしそうだったが、山根はグッと堪えて

「あの、電話を変わってくれますか?」

 肌に汗一滴も流れていないのに、発情期の犬のような息使いをしながら頼み込む山根に署長は渡した。

「あの、すみませんが遺体の血液型を教えてくれませんか?」

 しばらく頷いた山根が、鑑識から何か言われたのでしょう。急に笑顔になったと思えば「ありがとうございます」と一言言うとそのまま受話器を置いた。

「まさか遺体の血液型と早苗さんの家で見つかった血液型が一致したのですか?」

「その通りです。ここに来る前に橋山三平に式森がいつ頭に怪我をしたか心当たりがないか聞きましたところ、早苗さんが行方知れずになった10月15日の午後6時頃に橋山三平が外出から帰宅した時には中には式森がおり、包帯をしていたそうです。その包帯は昨日の昼に出掛けようとしたとき外して行ったそうです。」

 喉を鳴らしている署長は両腕を交えて考えていたが、ふいに何かを思い出したようで

「つまり殺された式森が犯人だったということですね。しかしそれだと逆に式森を殺したのは一体誰なのか?それより山根さんは何故龍都さんの家に行ったのですか?龍都さんとは話せましたか?」

「いいえ、龍都さんには最初っから用はなく、用があったのはそこへ使えている使用人にありましてね。やっと終止符を打てます。」

 その言葉を署長は毎度毎度の事件で山根の口からその言葉が出るのを、子供のように心待ちにしていて、今回も激しく椅子から立ち上がった。

「つまり犯人が分かったのですね。」

「ええ、私の推理が正しければ式森を殺害した犯人は、、、、」

 それを聞いた三宗署長は予想外の人物であり、自分の耳を疑いもう一度聞いたが、聞き間違いではない。

「何故その方だと分かったのですか?」

「それは後でお話しますので、まずさっきおっしゃった人物にお話しなければならない、つまり答え合わせをしようと思います。それで自首を薦めます。」

 彼は署長はアワアワしながらパーキンソン病患者のように手を震えさせながら

「大丈夫なのですか?その人は人を殺しているのですよ」

 そんな心配性を前に山根は

「ハハ、署長さんそんなに心配するならば一緒に来ますか?それだと私は楽に行けますし、署長さんのモヤモヤを解消することができて、一石二鳥ですよ。私は別にあなたがどうしようと勝手ですので」

 署長は二口返事で承知した。

 寒い道をひたすら山根が教えた場所をひたすら向かいに行き、着いたのは日暮龍都の家であった。

 二人が龍都邸で会ったのは、ああいくらなんでも分からなかった。なんと日暮龍都の妻の京子であった。そう彼女が工事現場で式森を殺害した犯人だったのです。

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