透明人間

 昭和X年10月16日の早朝の7時に重信川の河川敷で着物を着た老婆の死体が発見された。

 被害者は日暮早苗・砥部町の古民家に一人暮らしをしている。死体の首元には生々しい傷があったため紐か何かで絞殺だと断定されて右手の薬指と左手の人差し指にはちょっとした傷があった。周辺に争った形跡は一切ない、死亡推定時刻は昨日の正午つまり10月15日の正午から一時に掛けて行われたものらしいが重信橋は人の歩きが多いので、もし死体があれば人目で分かるとのうな場所であるし周辺の聞き込みによると15日の午後五時にはそれらしき物はなかったと言っている。

 それらに基づき警察は被害者は別の場所で殺害されていたと判断して老婆の遺族や近所の人に話を聞いた。

 しかしそれらは警察の頭を悩ます結果になってしまった。

 まず早苗の孫の日暮和義は家族を持っており、その彼が務める会社の同僚が亡くなってしまったので祖母に子供たちを一時的に預かってもらおうと来たらしい。午後一時ぐらいに祖母の家に着いたが、その時にはもう祖母の姿はなく変わりに叔父がいたと発言した。

 叔父の名は日暮龍都・砥部町にある工場長である。

 龍都の話は近所の人によって知っていた。12時50分に祖母の家に入るのを見ている、そしてその後長話でずっと外にいたらしくそのまま一家が家に入るも見ている。

 その後4時頃になっても祖母が帰ってこなかったので結局全員が家を去った。っと言うのが一連の流れである。

 何故頭を悩まかしたって、早苗は19時間の間行方不明になっておりその行方を龍都も和義一家も誰も知らないのである。

 なので何か証拠が家に残っているのかもしれないと思った警察は調査に入ろうと一家から預かった玄関の鍵で扉を開けようとしたとき、とあることに気が付いた。

 玄関の扉を横に数歩歩いた所の中庭に大窓があり窓の鍵の部分が割られていた。警察がカーテンを払い除けてそこから中を覗いたとき驚きが隠せれなかった。

 中は和室になっておりそこにある棚やタンスなどから衣類や飾られていただろう写真などが棚からはみ出していたり畳の上に散乱していたり、しかも金庫の鍵が開けられており中は空っぽであった。

 空き巣に入られたのだ。

 この荒れた和室の風景を見た警察は手を強く握り締めた。警察のこれからの流れは遺族に部屋を見させて変化があるか確認させたり、指紋の採取をしたりしたいが、それが困難になるのもそうだが犯罪がまた発生した事や死んだ人の家に土足で入ったことにも怒りを覚えた。

 しかし感情のまま捜査をするのは絶対してはいけないのは警察の心得である。それを忘れるほど彼らは馬鹿ではない。

 そのまま現場を調べる警察だが物が散乱していたため何が怪しいか何が重要かの識別に手を焼いている。遺族に部屋の確認させたらしいが何も分からなかったらしい。では指紋はどうだろうと意気込んだが被害者と龍都と和義一家の指紋だけで、それ以外に怪しいい物証はなかった。

 様々な人の話によると彼女はあまり自室に人を入れたくなかったと言っていたらしい、どうやら重度の潔癖症だったらしく、最初はレストランで店員が持って来たフォークやナイフを店員が去った後ハンカチに拭いたり、御土産店で買った箱を外に出て拭いたりして周りからは失礼極まりない人だったらしくて近所でも有名である。そんなことをずっとしていたら龍都が激怒してそれからは自室でしか潔癖症を発揮しなくなった。それからは外へハンカチを持って出しても使うときが少なくなり、唯一使うとしたら御手洗いしかなくなったと聞いている。

 周辺の捜査をしているととても気になる情報を聞いた。それは被害者の家から5分歩いた所にある定食屋を営んでる老婆が体験したもので、死体発見される前日の午後10時5分ぐらいに一人の男性が訪れたらしいがその男性は客ではなく被害者の家を尋ねてきたらしい。その男は聞いた後すぐに立ち去った。男の特徴を掴もうとした警察だが相手は帽子にサングラス・マスク・手袋・外套でいかにも怪しいい風貌なので警察はその男を犯人としたが肝心の特徴が一切なく犯人の特定はできない。

 警察は今の所行き詰まっており、全員頭を悩ましている。

 それらの捜査状況を山根蒼の探偵事務所に持ってきたのは警察署長の三宗虎太郎だった。

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