第23話  ルート分岐If 教えてくれれば、止めてくれれば……【ヒナタ視点】

急展開の弊害で省いてしまった詳細部分などは長編版で書かせていただきます……。

予告通りIFルートです。14話の続きから


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 あの場から逃げるようにして去った私たちは啓汰の家にいた。


「ねぇ、啓汰」


 あの場で何もしなかった啓汰に少し不機嫌そうに声をかけると啓汰は何も言わなかったが、肩をわずかに揺らした。


「なんで何も言ってくれなかったの?」

「……ごめん……」


 啓汰は私に謝るだけで理由を言ってくれなかった。


 それのみで沈黙が訪れてしまったので私は話を変えた。


「それにしても、イブにまでバイト入れてた理由が私のための婚約指輪だったってどういうこと?本当なの?本当なら、私にあんなに隠さなくてもよかったのに……。そう思わない?」

「……」


 家に帰ってから少し落ち着いた私は現実から逃げるためにも啓汰に肯定を求めた。だが、彼からは何も返事が返ってこない。


「……啓汰?」

「……ああ、そう、かもな……」


 啓汰はどことなく歯切れが悪そうにそう言った。そんな啓汰に一種の違和感が生じた私は尋ねた。


「啓汰、大丈夫?何かあったの?」


 十中八九先程の事件に関するものというのは分かっても、その中の何が啓汰をこうさせているのか分からない私はただ訊くことしかできなかった。


「……」


 啓汰は再びそこでまた黙り込んでしまったが私の顔をしばらく見つめるとしばらくして口を開いた。


「ごめん、日向……。実は俺は……、洋介が君のためにバイトをしてたのを……知っていたんだ」

「……えっ?どういうこと?」


 後ろめたさと申し訳なさの混ざったような顔で唇を軽く噛んでいる啓汰の突然すぎるカミングアウトに頭の追い付いていなかった私は問い返すのみしかできなかった。


「洋介の思いを知っていながら、君の提案に俺は乗ったんだ……。日向を諫めることもできたのに、俺自身の願いを、想いを優先して」

「……それって本当?」


 頭をフルに稼働させて何とか頭に押し込んだ私は一応尋ねた。


 彼は顔を下に向けていたが、やがて首を縦に振った。


 私はそれでよく分からない怒りを覚えた。


「……私だけが何も知らなかったの……?」


 そう独り言のように私はぼそりと漏らした。


 啓汰が教えてくれれば。止めてくれれば。私はそう考えるだけで自分が誘ったのだから私が悪いなどとは考えなかった。


 そう考え出すと私は止まらなかった。


「なんで、なんでなんで?なんで私に教えてくれなかったの?止めてくれなかったの?啓汰が教えるか止めるかしてくれれば、こうはならなかったのに!」


 彼が私に好意を抱いていて、私を止めなかったことは理解していた。ただそれ以上に私は怒りのようなものに包まれていた。私がそう言うと彼は更に俯くのみだった。


 その彼の反応が私は気に入らずしばらくそれを続けたが、状況は何も変わらなかった。


 これ以上啓汰にぐちゃぐちゃ言っても仕方がない。洋介くんのところに早くいかないと、そう思うと私は立ち上がった。


「もういい!洋介くんのところに行く!」」


 慌ただしく啓汰の家を飛び出すと私は再び大学へと足を向けた……。




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