彼女をNTRれた俺を救ったネッ友 正体はいつも俺の隣の席に座ってる同級生の女子って本当ですか？【中編版】

第18話 襲来ヒナタ

　翌日、一日で悩みは解決するはずもなく、俺はどこか重い心持ちのまま、大学に向かった。講義室に着くと、俺の顔の表情の硬さから何かを感じたのか既にいつもの席についていた瀬川さんは俺に尋ねてきた。

「何かありましたか、ヨースケくん？」

　それに対して俺が何か返答する前に亮は今の俺の頭を悩ませているものの正体を当ててきた。

「啓汰のことだろ、どうせ……」

「……土田さんのことですか？」

　彼女は亮の言葉に首をコテンと傾げさせた。その反応を見た亮はひょっとしてと尋ねた。

「あれ？知らないのか……。啓汰が昨日、自殺したっていう話……」

「えっ？」

　彼女はどうやら本当にそれを初めて聞いたようで驚いた様子だった。その後、しばらく黙り込んでいたが、ふと思いついたように声を出した。

「あれ？でも別にそれでヨースケくんが何か悩む必要ってありますか？」

「さぁ？そこまでは俺にも分からない。……ただ、どうせ洋介は優しいから謎の責任感とかを感じてるんじゃない？」

「……そうなんですか？ヨースケくん」

　亮の言葉を受けて瀬川さんは再び対話相手を俺に戻してきた。

　反応に困った俺はもう気にしないと決めたはずなのに悩んでいる自分が恥ずかしかったのもあり、軽く頷いて誤魔化そうとした。

　ただ、俺のことをじっと見てきた瀬川さんはそんな俺を見抜いたのか本当ですか？と再度尋ねてきた。

　まぁ、悩んでいても仕方ないし啓汰の遺書について話すか……とそう決断したときだった。

　突然とある人物が教室に入ってきたため、教室が静寂に包まれた。何かに追い込まれたのだろうか、今にも倒れそうな少しやつれた悲痛な表情をしているその人物、ヒナタを見て、教室中の人全員が息を呑んだのが伝わってきた。彼女は妨げのいなくなった道を通り、俺の方へとフラフラと歩いてきて目の前で立ち止まり話しかけてきた。

「ねぇ、洋介くん……」

「……」

　啓汰の置き土産だけで悩んでいたのだから、当然そこで啓汰に一方的に託された本人を目の前にした俺は何も反応することはできなかった。ただ、ヒナタはそんな俺の様子が目に入っていないのか気にせずに話し続けてきた。

「ねぇ、もう私はどうすればいいの？啓汰くんもいなくなっちゃった……」

「……」

「どういうこと？私が間違えてたの？」

「……」

「私のこのやり場のない思いはどうすればいいの？ねぇ、教えてよ、洋介くん……」

　知るかよ。そんなの。もう俺とは別れて関係のなくなった赤の他人なんだから俺にそういうことを訊くのはやめてくれ。そう言いたかった。ただ、そんな俺を妨げるように俺ののどに突き刺さっている魚の骨である啓汰の遺書が邪魔をしてくる。

「お願い。私を……救って、洋介くん」

　そんな俺に彼女は俺に手を伸ばしてくる。

　振り払おうとしても金縛りにあったように体が動かない。彼女の手が俺の頬に触れる、そう思った時だった。俺の隣の席から声が降ってくるのと同時に手が伸び、それを阻止した。

「いい加減にしてもらってもいいですか？岩崎さん」

———————————————

星や、ハート、フォロー等押してもらえると嬉しいです。