第15話  乗り越えていけ

 そして、それからあっという間に三週間が経った。あれから一度もヒナタと啓汰は大学に来ておらず、偶然道端で会うなんてこともなかった。


 俺の日常はカノジョと親友を失ったものの、特に色を失うみたいなことはなく、亮や瀬川さんとよく一緒に話すようになったことで別の色に染まっただけで大きく生活自体が変わることはなかった。


 俺と瀬川さんはあれ以来仲良くなり、ちょくちょく一緒に出掛けたり、たまに俺の家に招いたりするような関係になった。家に招くといっても昼食を見ていると食生活が不安だからと瀬川さんに言われて夕食を作ってもらっているだけだが、それでも挨拶をしていただけの時代と比べればかなり親密な関係になっていた。


 そんな彼女と一緒にいたり、笑顔を見せられたりするだけで俺は気持ちが安らいだ。


(……好きなのか?一緒にいると居心地がいいからってそうなのか?でも、助けてもらったっていうのがあるからな……。ただそもそも、彼女を大切にできなかった俺に恋愛なんてものをするのが許されていいのか?)


 俺はそんなことをぐちゃぐちゃと一人で頭を悩ませたが、結局何もわからずため息を漏らした。


『どうかしましたか?』


 現在、俺を救う要因の一つとなったAqexを瀬川さんとやっていていつも通り通話もつないでいたため、俺のため息が伝わってしまったのだろう。少し心配げな声で俺に尋ねてくる。


「いや、特に何もないんですけどね……。色々あったなと……」


 俺はこの悩みをまさか張本人に話すわけにもいかないので適当なことを言って誤魔化した。


『まぁ、そうですね……』


 そうして二人して感慨に浸っていたからだろう、いつの間にか敵が接近していたことに気付かず、俺らは攻撃された。


「やばっ」


 俺はそう声を漏らすもあの日とは違い冷静に対処し、相手を倒した。瀬川さんも、もう一人を倒してくれていた。


「瀬川さん、ナイスです」

『ヨースケくんもナイスです』


 俺らはそうお互いを称えあうと思わず笑いあってしまった……。



 翌日、俺はいつも通り大学に向かった。そうして教室に向かっている途中でもう一生関わらないと決めた奴に俺は背後から突然声をかけられた。


「なぁ……洋介……」

「……啓汰……」


 俺はそいつの名を呟き、ちらりと啓汰を見た。俺は啓汰の表情に思わず息をのんだ。


 啓汰の顔にはどこか思い詰めたような暗い表情と、申し訳なさそうな顔が浮かんでいたからだ。


「……」


 ただ啓汰はそれからまだ何か悩んでいるようで何も話し始めず、お互いそこで何も話さず、見つめ合うだけの時間が流れる。


「何もないんだったらもういいか?」


 俺がそう言い、立ち去ろうとしたところに誰かが呼んだのだろう、亮と不安げな顔を浮かべた瀬川さんが来た。


「おい、啓汰。お前また来て。何の用だ?まさか、洋介に嫌がらせしに来たのか?」


 初めから少しけんか腰の亮に啓汰は少し体を震えさせたが、前回とは違い、消えそうな声ではあったが口を開いた。


「……違う。……どうしても話したいことがあるんだ。……少し付き合ってくれないか、洋介……」




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