第6話   このあと彼女とデートの約束が……

「今後どうするつもり?とはどういう意味ででしょうか?」


 俺はムーンさんの質問に対して質問で返した。


「カノジョさん、親友さんとヨースケさんの今後の関係についてです」

「……」


 それについては昨日の夜からずっと悩んでいた。ただ、どうしても俺には答えを出すことができなかった。その原因は単純だ。まだ俺の中にはこの現実、俺が見た光景を信じたくないという気持ちがあるから。それが俺の決断を妨げていた。逆に言うとそれのみが俺の事情を聞いた上で別れるという決断を妨げていた。


「何か考えてたりしますか?」

「……正直なところ、俺はまだ状況も飲み込めてませんし、あれが現実だったとは信じたくはないんですよ……。ですが、あれが現実だったとしたら、事情を聞いた上で俺が悪いといわれたら素直に俺は謝って、別れるつもりです」


 俺は何とかそう言いきり、意思表示をした。


「……事情を聞くとは具体的にどのようにするつもりですか?」

「実はこのあと二時から彼女とクリスマスデートの約束があるんですよ……。そのときに何とかしたいですね……」


 何とかと言っても俺には特に何か案があるわけではなかった。ただただ、自分をデートから、俺が真実を確かめるための決戦の場になるであろうものから逃げないようにするために行けば何とかなると言い聞かせたかった。


「えっ、行くんですか?……電話とかじゃだめなんですか?」

「一応、会いに行こうと思ってますよ……。約束ですし、会いに行かなかったらそれこそ最後の可能性を自分から捨てることになって、完全に終わりでしょうから……」

「……大丈夫ですか?」

「まぁ、上手いこと顔とかに出さないように頑張りますよ……」

「……」


 俺らの間には沈黙が流れた。


 そうして十分後、俺らはカフェを出て池袋駅前にいた。


 心配そうにムーンさんが俺のことを見つめてくる。


「……ヨースケさん、無理だけはしないでくださいね」


 無理をしないと今立っていることすら厳しいんだみたいな無駄なことは言わずに俺は素直に頷いて、安心させようとする。


「……ええ。今日はありがとうございました」

「いえ、お力になれず申し訳ありません……」

「いや、相談に乗ってもらえて少し楽になりました。それでは」


 そうして別れようとしたその瞬間だった。俺の視線の先に信じられない、いや絶対に見たくもない信じたくもない光景が写った。


「えっ?」

「?」


 俺の突然出したひょうきんな声にムーンさんは疑問を抱いたのだろう。彼女は俺の顔を見てから、俺の視線の先を見た。


 そうして、彼女は何かを察したのだろう。途端に顔を険しくした。


(何でこんなところにいるんだよ……)


 俺は打ち崩れそうになった。なぜなら、俺の視線の先に、カノジョと親友だと思っていた男が並んで歩いている昨日も見た状況が俺に追い討ちをかける様に写っていたからだ……。




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