【小話】康太「人の下心発表ドラゴン?」


※康太と瞬の卒業後の話です。

(康太→就職 瞬→大学生)


──────────



康太「久しぶりに出てきたと思ったら、何だよこいつは」


人の下心発表ドラゴン「⌒◇⌒」


澄矢「あーこいつはな、ちょっと何やかんやあって、儂が預かってんけど。色々とのっぴきならん事情でなあ、ちょおっとだけ、お前らに面倒見てほしいねん。せやから連れて来たんよ。分かったか?」


康太「何一つ分かんねえよ。なあ、瞬」


瞬「うーん、俺もよく分からないけど……澄矢さんがお世話できないなら、この子は一人になっちゃうし、放っとくのはかわいそうかも……」(ドラゴンを抱っこして撫でる)


人の下心発表ドラゴン『康太と二人きりじゃなくなっちゃうのはちょっと残念だけど、一緒にお世話するのは悪くないかも?』


瞬「!?」


康太「お、おい……何だ、今……?瞬が喋った……のか?」


瞬「え、そ、そんな……俺、何も言ってな──」


人の下心発表ドラゴン『ああ……でも、すごく久しぶりに康太と一緒にいられるのになあ……こんなことなら昨夜、やっぱり一緒に寝よって言えばよかったかも……』


瞬「ちょ、ちょっと!?勝手に喋らないでよ!!」(ドラゴンの口を塞ぎつつ)


康太「し、瞬……?」


瞬「澄矢さん!この子、本当に何者なの?」


澄矢「そいつは名前の通りの奴や。触った人間の持ってる下心を勝手に発表するドラゴンやで」


康太「とんでもねえ害獣じゃねえか!デリカシーが無いにも程があるだろ」


澄矢「お前には言われたないと思うけどな」


康太「おいクソドラゴン、こいつを燃やせ」(ドラゴンを瞬からひったくる)


瞬「あ、康太……!」


人の下心発表ドラゴン『ああ〜……最近、仕事が忙しくて瞬に全然会えてなかったからな……昨夜は久しぶりすぎて、お互いなんか……妙に緊張して、そういう雰囲気にならなかったし、結局布団も別に敷いたしな……本当は一緒に寝て、あわよくば……』


康太「おい……!黙れ……!クソが……っ!」


人の下心発表ドラゴン「>人<;」


瞬「康太!ドラゴンをそんなに引っ張ったらかわいそうだよ!」


澄矢「ちなみにやけど、お前ら……全然会ってないって、どのくらい会ってなかったん?」


瞬・康太「「一週間くらい」」


澄矢「……もうツッコむんもアホくさいわ」


人の下心発表ドラゴン『だからもう一週間抜いてねえんだよ……あー……瞬にぬ──』


康太「瞬!ドラゴンが瞬の方が落ち着くって。ほら」


瞬「え、で、でも俺も勝手に発表されちゃうよ……!」


康太「俺だけ発表されるのは不平等だろうが……!」(ドラゴンを瞬に押し付ける)


瞬「うぅ……!」(仕方なくドラゴンを受け入れる)


人の下心発表ドラゴン『一週間……こ、康太……じゃあ、結構溜まってる、のかな……?(ごくり)もしかして今だったら、ちょっと押したら、いつもはダメって言われちゃう口の方でも──』


康太「お、おい!今日もダメだからな!あんな汚いモン、瞬の口に入れられるわけないだろ!」


瞬「だ、だから、俺は康太のは汚くないって言ってるよ。どうしても気になるなら、洗うのも俺がするから……」


康太「洗うとかの問題じゃねえ……なんか、こう……瞬にそれをさせるのは、罪悪感があるというか……」


瞬「そんな……俺は大丈夫なのに……」


人の下心発表ドラゴン『こうなったらもう寝込みを襲うしかないかな……』


康太「!?」ゾワッ


瞬「あ……!い、今のは……ちょっと、魔が差したというか……!康太がダメって言うことは、勝手にはしないから。大丈夫……」


康太「お、おう……」


澄矢「なあ、瞬ちゃん。こういう時こそドラゴンや。ドラゴンをこいつに触れさせてみ」


瞬「え……?こ、こう?」(抱えてたドラゴンを康太にくっつける)


康太「あ……おい、やめろ……!」


人の下心発表ドラゴン『口は早く出やすいって聞くし、正直一秒と耐えられる自信がねえけど、本当はめちゃくちゃ瞬にしてほしいんだよな』


康太「うおおおおおおおおお!!」


瞬「康太!ドラゴンをサイドスローで放り投げたらかわいそうだよ!」


人の下心発表ドラゴン「>人<;」


人の下心発表ドラゴン「°◇°」ハッ


澄矢「っ、あかん……!『人の下心発表ドラゴン』の様子が……!」


康太・瞬「「え?」」



『人の下心』発表ドラゴン「>人<;」ブルブルッ



『    』ドラゴン「°◇°」カッ



『人の心が分からない』ドラゴン「つべこべ言わずヤればいいのに……」



澄矢「おお!人の下心発表ドラゴンが、『人の心が分からないドラゴン』に進化したんか……!」


康太「何でだよ!」


澄矢「お前と瞬ちゃんのやり取りに挟まれてヤキモキするあまり、感情よりも効率重視のドラゴンになったんや!」


瞬「え!?そ、そうなの……?」


人の心が分からないドラゴン「性欲は動物の本能なのにあえて逆らうなんて理解できないなあ」


康太「なんかすげえ嫌な奴になったな……」


瞬「うーん……でもこの子はドラゴンだから、人の心が分からなくてもしょうがないよ……」


澄矢「まあええわ。この状態になったんなら、儂、こいつ連れて帰るわ。もうおもんないし」


康太「おいお前」


澄矢「ほなな、瞬ちゃん。こいつと仲良うせえよ。これで……康太がほんまは、瞬ちゃんともっとしたがってるって分かったやろ」


瞬「澄矢さん……そっか。ありがとう」


澄矢「おう、頑張り」ノシ


人の心が分からないドラゴン「何でもいいから早く交尾すればいいのに」


康太「おい!待て……って、クソ……消えやがった」


瞬「まあまあ……結局、ドラゴンも帰っちゃったし……」


康太「最後まで迷惑な奴だったな……」


瞬「うん……」


康太「……」


瞬「……」



気まずいというか、気恥ずかしいような……こそばゆい沈黙が流れる。


──本当は、どうしたいのかは分かっていた。


やがて、並んで座っていた瞬が、俺に一歩身を寄せてくる。

それから、俺の服の袖をきゅっと摘んで、俯きがちに口を開いた。


「康太……あ、あの」


「おう……」


「俺……一週間も、康太の顔見れなかったこと、今まで全然なかったから、なんか、すごく……ずっと会ってなかったような気がしちゃって、どんな風にしてたか、急に……分かんなくなっちゃって……」


「俺も……同じだ」


「そっか」と頷いてから、瞬が続ける。


「……俺はまだ学生だけど、康太はもう働いてて……だから、康太の大変さの全部を、俺は分かってないかもって思ったら……自分が気がつかないまま、康太の負担になりたくなくて……気持ちを抑えてたかも」


「……そうか」


「こういうの、ちゃんと共有してこうって決めたのにね……」


眉をへの字に曲げて自嘲気味に笑う瞬。俺は、そんな瞬の頭にぽん、と手を置いて言った。


「俺も……くだらない見栄、張ってた」


「見栄?」


「ああ」と頷き、俺は瞬の頭を撫でた。


「……久しぶりに瞬に会えて、正直、舞い上がってるのを自覚して……でも、何かそれを表に出すのは、恥ずかしいっていうか……」


「ふふ……うん」


すると、くすぐったそうにしながらも、瞬がからかうように笑う。

それが何か、ちょっとだけ悔しくなった俺は、瞬の後ろ髪をわしゃわしゃと乱しながら続けた。


「がっついてるとか思われたらとか……てか、会った時、瞬、割と普通だったし……だから……」


瞬みたいに上手く言えないのがもどかしい。だけど、こんな俺の言葉でも、瞬には十分だったらしい。


瞬は俺の肩に頭を乗せると、耳元でそっと囁いた。


「俺だって、期待してたの……」


「……っ」


ふと、瞬と目が合う。心臓が跳ねた。


「瞬……」


「ん、康太……」


部屋のベッドの上に、瞬を押し倒す。熱っぽい目で俺を見上げる瞬が、背中に腕を回してきた。


それがトドメだった。



こうして下心を伝え合った俺達は、昨夜取り繕ってたのが馬鹿に思えるほど、この後、めちゃくちゃ──……。

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鈍感幼なじみに毎日「好き」って言わなきゃ死ぬ とんそく @tonsoku

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