9月2日(土) ②
☆イチャイチャレート表☆
【100pt~】
見つめ合う(30秒以上)
手を繋ぐ
腕を絡める
頭を撫でる
正面ハグ
添い寝
【200pt~】
バックハグ
腕枕
膝枕
肩にもたれかかる
【500pt~】
くすぐり
【1,000pt~】
下着を見せる
肌を見せる(全体の80%以上)
【5,000pt~】
性器を見せる(30秒以上)
【~100,000pt】
▷キス
【150,000pt~】
キスマークを付ける
~(自主規制)~
。
。
。
【18,083,150pt】
セックス
※表にない行動でも加点される場合があります。行動に対する加点の有無は随時判定されます。
加点対象となる行動が確認されるごとに、表の追加・更新を行います。
______________
──9月2日 PM14:10。
「……」
「……」
エアコンの駆動音だけが響く部屋で、俺と瞬は正座で向かい合い──お互いの顔を見ては視線を逸らし、ふと相手が気になり、ちらりと見ると、視線がぶつかってしまい、また逸らす……そんな、無駄な時間を過ごしていた。
一体、どうして俺達がこんなことになったのか。それは──。
。
。
。
『お前らが苦労してそうやなあ、思て、【レート表】を手に入れてきたで!これさえあれば、何で何点貰えるかばっちりや』
【ペナルティ】を避けるため、とりあえずノルマのポイントを集めようにも、どうすれば──と思っていたところに、クソ矢が持って来た一筋の光……【レート表】。
藁にも縋るような気持ちで、俺達はそれを隅々までしっかり確認した。
俺達にとって負担なく、効率よくポイントを稼げそうなものはないか?と。
だが、ない。そんなものは、ほとんどなかった。
負担がないものはポイントが低く、ポイントが高いものは、今の俺達にはハードルが高い。
レート表にもその傾向が顕著に出ている。
刺激が強いっていうか、まあ……エロいことになればなるほどポイントは高くつく。
俺達が真面目にクリアを目指すなら、毎日集めなきゃいけない【150,000pt以上】のものは、目を覆いたくなるような内容のオンパレードだったし、実際、瞬は顔を真っ赤にして俯いてしまったのだ。
しかし、そんな中で、俺達はこの【レート表】の中で唯一できそうだと思うものを見つけた。それは──。
『キスは……100,000ptも貰えんのか?』
『そうみたい……だね。は、恥ずかしいけど……二人で交互にすれば、一日200,000pt集められるよ』
『なるほど……それなら、一日1,000ptどころか、150,000ptだって集められる。無理に……しなくても、クリアが現実的になるな』
『そうだね』
これは光明を得たと、二人して喜んだ。
……まあ、確かに瞬の言う通り、これから12月31日まで毎日欠かさずキスするなんて、恥ずかしいが……ペナルティや「する」よりはマシだ。大丈夫。俺達はキスだったら、もう何回かはしてるし、なんとかなる。どうだクソ神ども、ざまあみろ──と。
『……それはどうやろなあ』
『何だよ、負け惜しみか?』
『うーん……』
何故かクソ矢は渋い顔をしていたが。まあ、いい。
それから、善は急げとばかりに、俺達はやり終えた課題と始末書を提出し、早速、実行に移ろうと急いで俺の家へと帰ってきたんだが──。
。
。
。
「……」
「……」
このザマだ。全然簡単じゃなかった──あれ?
──クソ……何で……。
俺は瞬の唇をじっと見つめた。あそこにさっとすれば、いいのだ。動け俺。いつもみたいに……そんなにいつもしてないけど。
……ダメだ。いざ、やるぞという状況になると、どうにも動けない。何でだろうな……と思いつつ、俺はなんとなく懐かしい感覚を思い出した。この感じは、【条件】をつけられた最初の頃に近い。あの時も、やらなければすぐそこに死は迫っているのに、簡単にはいかなかった。結局、最後はやるんだろうという気持ちがどこかにあるからだとは思うが、それ故になかなか踏ん切りも付かないものなのだ。……今も同じだ。
そんな葛藤をしている間も、部屋は相変わらず、じりじりするような緊張感で、空気が張り詰めていた。
慣れない正座で、いい加減足も限界だし、いつまでもこのままでいるわけにはいかない──今日はまだ、1ptも集められてないのだから。
俺は何とかして、この部屋の均衡を破るために、さらに集中して瞬の唇を見つめた。
ピンク色で、乾燥しちゃうからとマメにリップを塗っているからか、いつもぷるぷるしている、小さな唇。同じ男なのかと疑いたくなるような唇。身体が入れ替わったことがあるから確実に否定できるはずなのに、それでもなお、その存在で「シュレディンガーの瞬」疑惑を加速させてしまう唇……。
動け、いけ──そう念じながら瞬の唇を見つめ続けてどのくらい経った頃だろう……部屋の均衡を先に破ったのは、瞬だった。
「あ、あの……康太」
「な、なんだ?」
「そんなに唇を見つめられると恥ずかしいんだけど……」
「そうだよな……」
「そうだよ……」
瞬はぷい、と横を向いてしまった。これでまた、あのじりじりとした時間が繰り返されてしまうのか……と思っていると、瞬は顔は背けたまま、こう言った。
「く、唇じゃなくても大丈夫なんじゃない?」
俺はその言葉に、はっとする。そうか──。
「レートに書いてあったのは『キス』だけだもんな……場所までは書いてなかった。ってことは……」
「ほっぺとかでもいいんじゃないかなあって……康太に見つめられて、今、気付いたんだけど」
「その手があったか……」
見つめた甲斐があったもんだ。なるほど、これならなんとかできるかもしれない。唇にするのは、今はやたら緊張するが、頬なら……よし。
「分かった。じゃあ、ここは俺からする……」
「え?あ、でも……俺からするよ」
「いや、俺からする。これはプライドの問題だ」
「そ、そんなこと言ったら、俺だってプライドがあるよ」
「ダメだ。俺が先にする。そうじゃねえと、ここまで引っ張った上に妥協した自分を許せねえんだ……」
「それは俺だって……」
「「……」」
これはこれで、均衡状態となってしまった。
こうなったら仕方ない。
俺達の考えは自然と一致し、気が付くと俺達は互いに拳を前に出していた。
「「……じゃんけん、ぽん」」
瞬がチョキ。俺はグー。よし。
「瞬」
「え──っ、わ」
叩いて被ってじゃんけんぽん、の要領で、勝った勢いのまま──俺は瞬の額に口づけした。
【額にキス K+500pt】
「え」
「……」
現実では初めて見たその表示に、俺達は愕然とした。え?
話が違くない?
状況が理解できず、しばらく呆然と表示を眺めていると、ふいに、瞬が俺を呼んだ。
「……康太」
「ん?……っ」
振り向くやいなや、瞬は俺の頬にちゅっとキスをした。すると、再び表示が現れる。
【頬にキス S+500pt】
【本日のノルマは達成されました】
「……こ、これって」
新たに現れた表示を見上げてから、お互いに顔を見合わせる。
額と頬で500ptずつ。計・1,000pt。どういうことだ?キスは100,000ptじゃなかったのか?
そう思いつつも、正直なところ、やっぱりなとも思う。
そんな、うまい話はないか。やっぱり、100,000ptは唇じゃないと──。
「あー……いや、そこもちゃうねん」
「澄矢さん」
すると、そこへクソ矢が現れた。手にはさっきのタブレットを持って。俺は眉を寄せて、クソ矢に詰め寄る。
「おい、どうなってんだ。キスは100,000ptじゃなかったのか」
「いやいや、そうやけど、そうとは書いてなかったやろ」
「すっとぼけんな。書いてあっただろ、ほら」
クソ矢からタブレットを奪い、俺はさっきの【レート表】を開く。そこには確かに書いてあった。
【~100,000pt】
▷キス
「ほら見ろ」
「あ、あれ?でもこれ……」
と、そこで瞬が何かに気付く。俺が「どうした?」と訊くと、瞬は首を傾げつつ言った。
「他の項目は【〇〇pt~】なのに、ここだけ【~100,000pt】って書いてある。それに……何?この▷マーク……」
「……タップしてみい」
クソ矢が呆れ顔で、タブレットのそこを指さすので、瞬は▷マークをタップした。すると──。
【~100,000pt】
▽キス
(場所により異なります)
額 500pt
頬 500pt
手 1,000pt
唇 1,200pt【+5,000pt 舌を入れる】
首 1,200pt
胸 1,200pt
腹 1,000pt
足 1,200pt
性器 100,000pt
「おい、ふざけんな!」
ずらりと展開された「それ」に、俺はクソ矢の胸倉を掴もうとする。しかし、クソ矢はわざとらしくそれを避けると、首を振って言った。
「ほっぺにちゅーなんて、そない、幼稚園児でもするようなことでそんなポイント付くわけないやん。せやから儂、どうやろなあって言うたよ」
「そういうことはもっとでかい声で言え」
「言うたところで聞かんやろお前」
「ま、まあまあ……」
瞬が俺とクソ矢の間に入り、仲裁する。しかし、その顔には「がっかり」というのが滲んでいた。
──そう、うまい攻略法なんてあるはずもなく、俺達の受難はまだまだ続きそうだ……。
【現在の獲得pt】
瀬良康太 1,350pt
立花瞬 750pt 計 2,100pt
クリアまで残り 18,079,950pt
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