4月29日 昭和の日
【条件】
1.毎日0:00〜23:59の間に、瀬良康太に対して「好き」と一回以上言うこと。伝え方は問わないが、必ず、瀬良康太が「自分に対して言われた」と認識すること。
2.1の条件を与えられたことは決して、瀬良康太に悟られないこと。
3.1、及び2の条件が実行されなかった瞬間、瀬良康太は即死する。
☆
『スイーツビュッフェ?』
『そうそう!あそこの駅前のビルの七階にあるんだけど……ばなさんは行ったことない?』
『ないなあ……行ってみたいとは思うけど。あっちまで行く機会がなくて……』
『そうなんだ!でもほら、これからオープンキャンパスとか行くでしょ?それで通ることあるんじゃない?』
『確かに……あ、俺が今度行くところ、あの駅通るかも』
『じゃあ行ってみなよ!瀬良っち誘ってさ』
『え、えー?何でそこで康太になるの?舞原さんじゃないの、こういう時』
『私だってばなさんとビュッフェ行ってみたいよー!でも、ばなさんにはこういう"初めて"のことを共有してきた相手がいるでしょ?』
『それは……』
『ばなさん、絶対"康太だったらこうだな……"とかそんなことばっかり考えちゃうもん。だったら、最初から瀬良っちを誘っちゃえ!』
『う、うーん……でも、康太来るかなあ?あんまり興味なさそうだけど……』
『ばなさんが行きたいって言ったら、絶対来るよ!瀬良っち』
『そうかな……?』
。
。
。
『いいな、行こうぜ』
「ほ、本当?」
その返事があまりにも意外すぎて、俺はびっくりした。
先日、舞原さんに、ここから電車で一本のところにある「スイーツビュッフェ」を教えてもらって、行きたいなって思ったから……思い切って、康太を誘おうと、電話してみたんだけど。
『明日、瞬はオープンなんちゃらってのに行くんだろ』
「オープンキャンパスね。うん、そうだけど……」
『俺も、この前の進路面談で『就職すんなら資格くらい何か取れ』とか言われてよ……そこの駅前の専門学校でやってる高校生向けの講習会に行くことになったから。丁度いいだろ』
「え、そうだったの?」
『何だよ。意外そうな声出しやがって……俺だってさすがにもう、真面目に進路を考えなくちゃいけねえだろ』
これまた意外だった。康太、ちゃんと進路のこと考えてたんだね……俺はなんだか感動して、康太に拍手した。
「康太、偉い!頑張れ!」
『お、おう……何か馬鹿にしてねえか?』
「そんなことないよ。前に言ったでしょ。俺は……真面目に頑張ってる康太は好きだよ、って」
『言ってたか?ふうん……ま、瞬に好かれてるなら、それは別にいいことだけどよ……』
都合よく解釈したくなるようなこと言うな……俺の「好き」は康太が思ってるようなものと、違うのに。
──それでも、今は……ずっとはそうできないけど、もうちょっとだけ……このままで。
「じゃあ、明日……俺の方が終わったら康太に連絡するから。そこの駅で待ち合わせしよう」
『おう、分かった。楽しみにしとく』
じゃあね、と言って、通話を切る。
「通話終了」の文字を見つめて、俺は康太が言った何でもないことに、心がふわふわしていた。
──楽しみにしてくれてるんだ……。
それは、たぶん……ビュッフェの方かもしれないけど、こっそり、都合よく……俺は解釈することにした。
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