第三葉 馬鹿ばっかり
「戦前はよう、ちょっと名の通った学校だったらしいけどよ、行ってみたらひでえやつばっかりで、勉強はできないはタバコは吸うは、万引きするは喧嘩もするはでどうしようもなかった。先公も先公で・・・・・・、あんた、先公って分かるか?」
「学校の教員のことですね」
「あんなもん教員なんて呼べるもんじゃないって! 俺ら生徒に向かって、自分はこの学校卒業で三年のとき総番長張ってたって威張るんだぜ。そんなもん生徒に威張ることかよ、おかしいだろ!」
「はっはっはっ!」
「はっはじゃねえよ、おかしいだろ。それで、もうこんなところ嫌だと思って、勉強ほったらかして山行ったり川行ったり・・・・・・」
「・・・・・・、それでこのお話は、・・・・・・」
「それがよう、俺背高くて結構もてたんだよ。相撲も強くて・・・・・・」
「いや、それは分かりましたが、その・・・・・・」
「おう、その話じゃなかった。俺は勉強しなくなったから成績ががくっと落ちてな、俺を勧誘に来た例の校長に呼ばれて、校長室に行ったんだ」
「ほう」
「そしたらな、校長が何て言ったと思う。君には失望させられましただと! 俺言ってやったよ、失望したのは僕の方ですってね」
「はっはっはっ!」
「いや、だから笑い事じゃねえんだよ。それで俺は家出して、一人で汽車に乗って上野駅に行ったんだ。何にもアテはなかったけどさ。自分で稼いで自立したいと思ったわけ。そしたらさ、たまたま偶然にさ、集団就職の行列が目に留まったんだ」
里山は、「集団就職」と書き留めた。
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