第16話 妹のおっぱい揉んでいた……のか!?

「ただいまー」

「あっ、おかえりお兄ちゃん」


 リビングに入ると、先日と同じ、肩紐のキャミソールにショートパンツという露出度高めの格好の妹が、ソファでうつ伏せになりながら足をぱたぱたとさせて出迎えてくれた。

 俺はだらしない妹の元へと向かって行き、そのまま妹の上にのしかかる。


「いだいいだい! 何すんのお兄ちゃん⁉」

「お前、桂華ちゃんだけでなく、上白根になんちゅうこと吹き込んでんだっつーの! 俺、社会的に終わるところだったんだぞ⁉」

「ギブギブ! ごめんなさい!」


 バシバシとソファの淵を三回叩いてギブアップ宣言をする妹。

 俺は、軽く力を緩めてやる。

 妹はぜぇ……ぜぇ……と息を吐いて息を整えてから、俺に咎めるような視線を向けてくる。


「確かに、私も桂華と光莉先輩ををそそのかしたのは悪かったと思ってるよ? でも聞いてお兄ちゃん。お兄ちゃんが私のおっぱいを揉みまくってたのは事実なの!」

「いつ俺がお前の胸揉んだんだ? 言って見ろ。あ“?」


 意地でも虚言を言い張る妹に、俺は追加でベッドロックをかます。


「いだい、いだい! だから私の話を最後まで聞いてってば!」


 俺が再び力を抜いてやると、愛実は首元を押さえながら、こちらを恨みがましい目で向けてくる。


「これだから、無自覚系鈍感エロモンスターは……」

「何か言ったか?☆」

「いえ……何でもないです」


 俺が張り付けた笑みを向けると、妹はビクっと身体を震わせて謝罪の言葉を口にする。

 しかし、まだ納得は出来ないといった様子で、妹は不満げな表情を浮かべた。


「それで、俺がいつお前の胸を揉んだんだ?」


 俺がにっこり笑顔を向けながら優しい口調で尋ねると、愛実は少々頬を染めて、拗ねたように唇を尖らせ、ぼそぼそとした声で語りだす。


「私がお兄ちゃんのベッドに忍び込んだ時、寝ぼけたお兄ちゃんが私のおっぱいを情熱的にねっとりと……」

「んなことするわけないだろ?」

「待って、待って! これだけはガチだから! お兄ちゃんだって、起きた時に私が隣に寝てるときあるの知ってるでしょ⁉」

「いや、確かに受験期頃から頻繁にベッドに忍び込む回数増えたなとは思ってたけど……えっ……嘘でしょ……?」


 俺は、口をあんぐりと開いたまま固まってしまう。


「ほんとだって! 最初はちょっとした出来心というか、ドッキリで忍び込んでみたんだけど、そしたらお兄ちゃん、私を思い切り後ろから抱きしめてきて、その手を胸に当ててムニムニと触るんだもん」

「待て待て、この期に及んで嘘を吐くなって」

「嘘じゃないもん! そりゃ最初、妹相手に何欲情してるのって私だってびっくりしたよ⁉ でもお兄ちゃんの揉み方が凄い絶妙だから……」


 言葉尻に声が萎んでいくのに比例して、愛実の頬はリンゴのようにドンドンと真っ赤に染まっていく。


 えっ……嘘だよね。

 何、その蕩けたような表情。


 いや、いやいやいや、流石にそんなエロハプニング、アニメや漫画以外でありえないだろ。

 それこそご都合主義万歳じゃねぇか。


 ……本当に何もしてないよね?

 確かに、愛実が俺のベッドへ頻繁に入り込むようになったのは事実だけど……。


 寝ている間の事なので、当然俺は記憶にない。

 なので、妹の言葉が真実なのかどうか確かめることは不可能。

 とはいえ、この俺を見つめるメス(妹)の顔を見てしまったら、信憑性を疑わざる負えない。

 段々と確信が持てなくなってきてしまい、俺は冷や汗が吹き出してきてしまう。


「私、お兄ちゃんにいっぱいシてもらって、おっきいおっぱいにされちゃったんだよ?」

「いやっ……そんな責任取ってみたいな風に言われても」


 自信が無くなってきてしまい、俺も言葉も詰まり気味になってしまう。


「私は元々おっぱいがコンプレックスだったから、お兄ちゃんには凄い感謝してるの。いっぱい揉んでもらって、こんなにたわわなおっぱいに成長させてくれたんだから」


 頬を染めながら感謝の意を述べる妹は、まさに発情したメスの顔をしていた。

 待て待て、俺は妹のことをそんな性的対象として見たことはないぞ⁉


「まあそれで、桂華も光莉ちゃんも同じ悩みを抱いてたから、私がちょっとだけ知恵を働かせて、そそのかしてみたってわけ」

「いや、それどちらかというとそれ悪知恵じゃね?」

「ノンノンノン。お兄ちゃんは自分のその類稀なる潜在能力にまだ気づいてないだけ。お兄ちゃんのその手には、無限大の可能性が広がってるんだよ」

「いい様にまとめようとしてるけどな。結局原因がお前であることに変わりはないんだからな!」


 俺が咎めると、愛実はキョトンと首を傾げてきた。


「でも、お兄ちゃん的には役得でしかなくない? 無償でおっぱいを揉むことが出来て、尚且つ成長したら、お兄ちゃんの求める巨乳おっぱいを手に入れることが出来るんだよ?」


 確かに……ってそういうことじゃなくて!


「いやいやいや、そもそも他人にそんなことできるわけないだろ。それに、俺の潜在能力は俺の意識がないときにしか発動しないんだから、意識的にやったら効果ないだろ」

「そこはやってみないと分からないじゃん」

「だからって揉めるか! いくら知り合いとは言え、していいことと悪いことがあるっつーの!」

「じゃあお兄ちゃんは、桂華や光莉先輩のお願いを無下にするってこと?」

「ぐっ……そ、それは流石に申し訳ないから、胸を揉む以外の方法で協力することにはしたよ」

「なるほどねぇー」


 目を細め、幻滅したような顔を向けてくる愛実。


「なんだよ。そのジト目は?」

「いやぁ? お兄ちゃんは本質が見えてないなぁーと思ってね」

「何がだよ?」

「まっ、気づいてないならいいんだけどねぇー」

「どういうことだよ。そこまで言われるとすげぇ気になるんだけど?」

「その気持ちは分かるけど、私の口からは言えないかな」

「意味が分かんねぇ……」


 全くもう、こいつのせいでとんでもない目に遭ったってのに……。


「とにかく、お兄ちゃんは欲望のままに見境なくおっぱいを揉んでればいいの? Are you ok?」

「sorry not understand」

「はぁ……こうなったらもう、自分の能力を目で見てもらうしかないね」

「はっ?」

「まっ、そのうち分かるよ。ってか、そろそろ重いから私の上から降りてくれない?」

「おう、悪い……」


 俺たちはソファで絡み合ったまま寝転がっている状態。

 しかも、俺が愛実に半ば身体を乗せている体勢になっていた。


 とその時、ガチャリと運悪く、リビングの扉が開かれてしまう。


「ただいまー! ごめんね遅くなっちゃって、今から夕食作る……か……ら」

「げっ!?」


 なんというタイミングの悪さ。

 端から見たら、兄である俺が、愛実をソファに押し倒しているようにしか見えないだろう。


 母ちゃんは驚いた様子で口元へ手を当てると、恐る恐る尋ねてきた。


「も、もしかして……朝陽の夕飯は愛実なの⁉ ダメよ! 近親相○だけはお母さん認められないわ!」

「ちげぇよ!」


 こうして今日も新治家は、にぎやかな夜を過ごすのであった。

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