第7話 お兄ちゃん陥落大作戦

 プルルル……プルルル……。

 私は、とある人物で電話をかけていた。

 二コールほどしたところで、相手が電話に出てくれる。


『もしもし桂華?』

「あっ、愛実? 私だよ」


 私、台村桂華は、今回の報告も兼ねて、お兄さんの妹であり親友でもある愛実へ電話を掛けていた。


『良かったね桂華。お兄ちゃんに勇気出して言えたんだねぇ!』


 結果を報告する前に、愛実の方から言ってきた。

 とその前に、一つ怒らなくてはならないことがある。


「ひ、酷いよ愛実ちゃん。私のこと騙したりして」

『ごめんごめん。でもそれぐらいの荒療治をしないと、お兄ちゃんに効果ないからさ』

「た、確かに……」


 今日の反応を見ても、私のことを異性として意識しているというよりは、妹みたいな接し方だったもんなぁ……。



『それで、お兄ちゃんはOKしてくれたの?』

「えっ? 知ってるんじゃないの?」

『私は『桂華ちゃんに変なことを吹き込むな!』って怒られただけだから、事の顛末は何も聞いてないよ』

「大丈夫だった?」

『ぜんぜーん! まあ、しばらくお兄ちゃんからのベッドロックはごめんだけど』


 どうやら、愛実ちゃんは、私に嘘を吹聴したとして、お兄さんから鉄拳制裁を食らってしまったらしい。

 悪いことをしてしまったと思いつつ、私は愛実ちゃんに、お兄さんとバストアップの協力体制を敷いたことを伝えた。


『おぉー! それは良かったじゃん!』

「うん。でも、どうやってお兄さんに手伝ってもらったらいいのか、具体的な案が全く浮かばないんだよね」

『そこは、私にお任せあれ!』


 電話越しから、愛実が自身の胸を叩く音が聞こえてくる。


「な、何かいい方法があるの?」

『もちろんだよ! とっておきの秘策を用意してるよ』

「とっておきの……秘策ってなに?」

『ふっふっふ……それはね……』


 私は息を吞んで、愛実ちゃんからの返答を待つ。


『答えは、CMの後!』

「ちょっと! ふざけないでよ!」


 愛実のふざけっぷりに、私は張り詰めていた気を弛緩させてしまった。


『ごめんごめん。一回言ってみたかったんだよね、このセリフ』

「それで、本当に秘策があるんでしょうね?」

『あるある! ただ、見せた方が早いと思うから、明日学校に持っていくよ!』

「持っていく?」

『実は、私も試したバストアップの方法が書かれてる雑誌があるんだよ』

「えっ⁉ そんなのがあるの⁉」


 私と同じAカップだった愛実が、この一年半でEカップまで成長したのだ。

 効果は実証されているため、これはかなり期待できそうである。


「じゃあ、そのバストアップトレーニングをすれば、私も胸を大きくすることが出来るって事だよね?」

『そういうこと。興味湧いてきたっしょ?』

「うん……!」


 そりゃ、愛実ちゃんが実際に試して成果を出した方法なのだ。

 真似したいに決まってる。


『ただ、一人で出来るトレーニングもあるんだけど、誰かに手伝ってもらった方が効果があるらしくて、桂華はそれをお兄ちゃんに手伝ってもらえばいいんだよ。一人でやるより、効果三倍だって』

「さ、三倍!?」


 ってことは、お兄さんに手伝ってもらったら、半年もあればバストアップ出来るって事⁉


「愛実ありがとう。私、頑張るね!」

『うん、桂華がお兄ちゃんの意中のおっぱいになれるよう、私も応援してる』


 こうして、私のバストアップと、お兄さん陥落大作戦が、幕を開けようとしていた。


『あっ、そうそう! 明日なんだけどさ――』


 そこから、明日以降のお兄さんへのアプローチについても、綿密な打ち合わせが行われた。

 上手く行くかは分からないけど、お兄さんに異性として見てもらうためにも、なりふり構っていられない。

 私は愛実ちゃんからの提案を受け入れ、決意を固めるのであった。




「それで、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る