第34話 色気勝負!?

 南央と彩音に連れられて向かったのは、周りを見渡すのも憚られてしまう、男性禁制のエリア。

 見渡す限りの女性、女性、女性!

 心なしか、女性の甘い香りがプンプンと漂っている気がする。


 やってきたのは、レディースフロアの一角にあるランジェリーショップ。

 店内の入り口前で、南央と彩音は俺を挟んでいがみ合っている。


「いい? 勝負は簡単。慶悟をムラっとさせた方が勝ち。それでいいかしら?」

「おっけー。判断は慶悟に任せるということっていいっしょ?」

「構わないわ」

「では、いざ陣上に……」

「勝負!」


 お互いバっと俺の元から離れると、そのままシュタッと駆け出すようにして、ランジェリーショップの中へと入って行ってしまった。


「どうしてこんなことになった?」

「そうよ。元はと言えば、私が佐野と遊んでいたのに」

「凜花、復活したのか⁉」


 いつの間にか、凜花が俺の隣に立ち、ため息を吐いていた。

 不満げな様子で、腕組みをしている。


「どうしようか? あの二人は置いてって、二人でどこか行く?」

「そんな身勝手なこと、出来わけないでしょ。後でのしっぺ返しが怖いもの」

「で、ですよね……」


 一人は、世間に大人気のTikT○kr。

 もう一方は、体力お化けのフードファイター。

 凜花が素手で太刀打ちできる相手ではない。


「それに、実は私も、少し興味があるのよ」

「えっ、凜花も下着買いたいのか?」

「なっ。違うわよ! 私が興味あるって言ったのは、あなたがどういう下着が興味あるのかって話!」


 顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに答える凜花。


「いやっ、別に俺は下着に興味なんか……」

「本当かしら?」


 凜花は訝しむ目を向けてくる。

 正直、俺だって年頃の男子高校生だ。

 女の子のそう言うデリケートな部分であるものの、垣間見えるエロに興味がないと言ったら嘘になる。

 けれど、凜花の前で肯定してしまうのも、なんか違う気がした。


「私も二人の勝負に加わってもいいかしら?」

「……はい?」


 あれ……?

 なんか不穏なこと言いだしたぞこの子。

 俺が素っ頓狂な声を上げると、会長は握りこぶしを作って手をプルプルと震わせた。


「私だって、佐野をイチコロにするぐらい、造作もないんだから!」

「落ち着け凜花。趣旨が変わっちゃってるから!」

「待ってなさい佐野。私の魅力でメロメロにしてみせるから」

「ちょっと⁉」


 俺の話なんて聞いちゃいない。

 なんと凜花までもが、ランジェリーショップの中へと入って行ってしまった。

 俺は一人寂しく、お店の前に取り残される。


「あの三人、マジで身勝手すぎるだろ……」


 俺は大きなため息を吐き、またもや虚空を見上げることしか出来ないのであった。


「帰っていいかな?」


 そんな独り言を呟きながら。

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