第18話 悲しみの祝勝会

「それじゃあ、南央ちゃんのウィンターカップ最優秀選手賞受賞と、日本代表合宿選出を記念して……乾杯!」

「乾杯!」


 南央のお母さんである俊子としこおばさんの掛け声により、祝勝会が始まった。

 全員が立食形式でテーブルを取り囲み、グラスを合わせる。

 テーブルの上には、チキンやピザ、ピラフなど、母さんがよりをかけて作った豪勢な食事が大量に並べられていた。

 相当気合を入れて作ったのだろう。

 俺の誕生日の時より豪勢じゃねぇか……。

 ちなみに、俺と南央はオレンジジュースで、大人勢は皆お酒を嗜んでいる。


「いやぁ、南央ちゃん、本当におめでとう!」

「ありがとうございます尚子なおこさん! こんな盛大にお祝いまでしてもらっちゃって恐縮です」

「いいのよ! 南央ちゃんは自慢の娘なんだから」

「いや、母さんの娘ではないだろ」


 俺が冷静にツッコミを入れると、母さん(尚子)は、息子にジトリとした目を向けてくる。


「うるさいわね。そんなこと言うなら、アンタも何か一位や優勝っていう実績を残したらどうなの?」

「ぐぬっ……」


 俺は何も言い返すことが出来ず、顔を引きつらせてることしか出来ない。

 歯痒い。

 一応これでも、成績は学年二位だし、サスケでサードステージ進出してるんですよ?


 もうちょっと、自分の息子の功績を湛えてくれたっていいんですよ?

 南央がいなきゃ、余裕で学年一位レベルの学力だからね?


「そんなことないです。慶悟だって、ちゃんと結果残してますよ!」


 そこで、母さんに対して、南央が反論してくれる。


「私がいるから、見劣りしちゃってるように見えてるだけで、同学年と比べたら、慶悟だって立派な成績と功績を残してます」


 本日祝杯を受ける立場であるはずの南央が、俺のことを擁護してくれている。

 南央のフォローに、俺はふいに感動の涙が流れてきてしまいそうだ。


「南央ちゃん、そんなに慶悟の事立てなくてもいいのよ? 今日は南央ちゃんの祝勝会なんだから」

「おいこら、せっかく南央が擁護してくれたってのに」


 それでもアンタ、俺の親か⁉

 まあでも、努力はしてるものの、何か形の残る結果を出していないというもの事実。

 それに、南央が比較対象になってしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまうのは仕方ない。

 小さい頃から、ずっと隣で南央と比べられてきたからこそ、母さんは俺に対して劣等感のようなものを感じているのかもしれない。

 クソ……両親からもこんな仕打ちじゃ、いつまで経っても報われねぇ。

 一番俺の努力を認めてくれているというのが南央というのも、皮肉な話だ。

 王者であるが故の余裕だろうか?

 南央に擁護されているのが、なんだか虚しくなってきてしまうのであった。


 その後も、話題の中心は南央のことばかり。

 まあ、今日は南央の祝勝会なので当たり前だけど、俺のサスケで活躍した話など、一度も話題に上げられず、ちょっぴり心が傷ついた。


 畜生……今に覚えてろよ。

 絶対に完全制覇して、周りにも凄い奴だって事を証明してみせるんだからな!

 改めて、俺は完全制覇という目標を、絶対に達成してやろうと心に誓うのであった。

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