水の子
花房
生誕
ここにいることに気づいたのはいつからだっただろうか。
ぼくが始まった日の記憶を想起してみると、思い起こされるのは
上も下も見えるもの全ては黒。ぼくというものも黒で、世界とぼくという境界線は目視できない分、酷く
ぼくはその
黒の中に生まれた黒は、誰に見つけてもらえるだろう。目に見えない蠢きを、一体誰が見つけられるというのか。
黒い海は寒い。氷の中に身を浸しているように、
音もなくうねりを繰り返す海の中で、ぼくは少しずつ黒い海の水を吸い、崩れやすい自分の身体を粘土のように
少しずつ、少しずつ、誰かが捨てて隠し、溜まり続けて
悪夢を通り越した
この水は黒ではない。
ぼくは気付く。この青色こそが、この海の本質となる色なのだ。
こんなになるまで、この場所に水を捨てた誰かは、青い感情を溜め込んでいたのか。
ぼくはぼくの身体が青い
それならば、
本質の色を
どこまでも暗いこの空間は、ぼくの小さな身体の光では、
それは
でも、今はそれで良かった。今のぼくには、それで十分だった。
光ひとつ無い暗闇で、波は静かに打ち寄せては引いていく。その波の流れに身を任せているうちに、ぼくの身体は
ちゃぷん、とコップの
お母さん、その言葉は知っている。ぼくがお母さんと思っているこの海の水は、とても冷たい。その海の水から産まれたぼくの身体は、
足は無い。けれど、小さな手はある。使い物になるのか少々疑問の残る大きさではあるが、物は
そうだ、ぼくは生きている。産まれたのだから。
ぼくは初めて
そこが、ぼくが最初に見た世界だった。
やがて海の
水の子 花房 @HanaBusaxxx
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