狂気
喉をわしづかみにされた。
錯覚だと気づくのに、数秒を要する。
周囲の森が揺れていた。木々の上で休んでいた鳥たち、草むらに隠れていた蛇や獣が、本能を揺さぶる威圧に怯え、一斉に逃げ出したせいだった。
この光景をカラノは、何度か見たことがある。
「な、何だ、この……。音? 誰かの、声?」
怯えるようにすぼんだ肩を、軽く叩く。なだめるためにしたことではあったが、対象はサクラではなく、自分だったかも知れない。
「リアの詩だ」
「これが?」
「かなり、機嫌が良い時の。……サクラ。この先に、アンタの仲間は何人くらいいる。あの八人だけか。もしリアとやり合うことになったら、どれくらいに影響が出るかを知っておきたい」
「は、何でそんな話になるんだ!」
「アンタらが不用意にリアに触れたからだ。過去がどうだったか知らないが、今のリアは恐らく二三本、頭の螺子が飛んでいる。最悪、俺が相手でも関係なく壊しに来る」
害するために愛するという順序は、狂気によって、容易に反転しかねない。愛しているから害するという順序になれば、むしろ比較的親しいカラノこそ、標的になる。
「……あいつらがいるのは、いつもは、強奪した品や食料を保管している場所だ。十人で警備しているから、今は二十人程度いるだろう。あと……そう遠くない場所に、私たちの村がある。戦えない者も含めると、三百人くらい」
「とりあえずアンタは、それ丸ごと人質に取られた状態だと思っておけ」
断末魔のような鳥の声がする。
「そうだ。縄、取らないと拙い。腕出せ」
空が白み始めて、手元が見えるようになっていた。これ以上傷をつけないように気をつけながら、腕を拘束していた縄を切った。
何となく、その手に触れる。
念頭には、今のリアに不自由な人を見せることへの危惧があったが、それだけでもない。サクラを縛りつけるのに、罪悪感を覚えるようになっていた。サクラの人の良さを感じているうちに、久しぶりに、善人らしい振る舞いを思い出したとも言える。
何か他に言わなければならないことは、と考えていて、ふと、サクラの目が、髪と同じ赤色であることに気がついた。
失われるのは、惜しい美しさだった。
「アンタとは、太陽の下で会いたかったな」
「何言っ……」
サクラの眉間に、谷のような皺が寄った。
「見るな。馬鹿にするのなら目を潰す」
「馬鹿にはしていない。顔を合わせて、きちんと話してみたかった。だが、見られたくなかったのなら、申し訳なかった。見ないようにする」
自分を見られたくない気持ちは、よく知っている。
気まずそうに視線が逸れた。
「……どうせお前には、殺した二人のことを、詫びてもらう必要がある」
軽く手を叩く音が響いた。それは拒絶ではなく、例えば、敵同士が一時的に手を結ぶための儀式に近かった。
サクラの案内で森を歩く。明確な声としては聞こえないものの、時々、魔術の余波か、不意に肌が粟立つ。
じきに森の中に、微かに道らしい筋が現れる。一歩進むごとに道幅は広がって、奥にちらつく明かりが見えるようになった。大勢の人の気配と、それを覆い隠すような怪物の気配を感じる。
サクラもその時には、覚悟していたようだった。
炎が見えた。
納屋らしい建物と天幕、物見櫓などが、大きな焚き火を囲むように立ち並んでいた。納屋はどれも立派なものではなく、強風が吹いたら壊れてしまいそうな造りだ。他に、住処に必要な設備、例えば門や炊事場などは見当たらない。サクラの言っていたように、ここは食料などの保管場所なのだろう。
一つ、扉が開いたままの小屋が、目についた。中はよく見えなかったが、火の揺らめきが時々入り口のそばに、倒れている人の影を、浮かび上がらせていた。
そしてリアは、物見櫓に立てかけられた梯子に、寄りかかっていた。
ひれ伏した獣人や矮人が二十人程、リアとの間に、絨毯のように並んでいる。
アリステラの姿は見当たらない。
改めてリアに目を戻し、両手についた血に、気がついた。
「怪我をしたのか、リア」
長い睫毛がゆっくりと上下する。
「カラノさん」
喉奥が、蜂蜜を流し込まれたように甘くなる。
「生きてた。良かった」
嬉しそうに、目が細められていた。
「俺は大丈夫。アンタ、その手は?」
「あぁ、これは。気にしないで。自分でやった傷だから。皆さんは、傷つけないようにって、私のこと丁重に扱ってくれた」
自分の前にひれ伏す魔物たちを示すように、手が広がった。まるで女王のようだった。
やはり、魔術を使うために、リアは魔物たちを愛することにしたらしい。
リアを乞う甘やかな気持ちと裏腹に、傷口に塩を塗り込まれるように、胸が痛む。
「遅れてごめん。それと、こんなことになったのも。全て俺の力不足だ」
「そんな――ことは」
目が合った。それだけで、お互いに分かった。リアは護衛としてのカラノを見限っている。カラノはそれを心から理解している。軽く笑い合い、ひとまず話を切り上げた。今はそれ以上に話すべきことがある。
目の前に広がる魔物たちの背と、カラノの右に立つ人。
「私たちのことよりも、お出迎えが先。失礼しました、愛の如き紅の方。魔物たちのお姫様。先程少しお目にかかりましたが、改めて、ご挨拶させて頂きます」
視界の右端に、炎とは似て非なる赤が映る。横顔は凛として、恐れる風情は見当たらなかった。
三日月のように、唇が引かれる。
「――人呼んで、愛なきレウ、と申します」
リアは、そう名乗った。
「では、遅くなったが私からも、改めて名乗らせて頂く。この者たちの頭領を担っている、サクラだ」
サクラはまた少し前に出たが、それでも、握手をするには距離が離れ過ぎていた。二人は正面から対峙する。
落ち着いた声で、サクラが問う。
「まず、お聞きしたい。アリステラは、今どこに」
「そこに。醒めない夢を見ていらっしゃいます」
示されたのは、扉が開いたままの小屋だった。すると、あの入り口に倒れている人影が、アリステラなのだろう。カラノもあの人物を憎んではいたが、こうなってしまうと、少し憐れだった。
「そうか。では、続けてになるが、ここにいる私の仲間たちは、今どういった状態にあるのか、お聞かせ願えるだろうか」
「そう急がないで、サクラ様。この方々へは、まだ、動かないでと頼んだだけです。ほら、ご覧ください」
浅瀬を泳ぐ魚のように、華奢な指が伸ばされた。
「立ちなさい。元気な顔を、サクラ様に見せてあげて」
一人ずつ、指さされた魔物が立ち上がり、全員同時に体を反転させる。魔物たちの、恍惚と恐怖の混じった顔が、見えるようになった。
リアならば相手の意識を完全に乗っ取ることも出来るはずだが、今は単に魅了して命じているだけのようだ。ただ、だから安心だとは、到底言えない。
「皆さん、「幸せ」そうでしょう」
横から微かに歯の軋む音がした。
「最後に。御身の望みを、お聞きしたい。御身を拐おうと企んだ身で言えたことでないのは、重々承知だが、それと引き換えに、こいつらを解放してほしい。謝罪は無論、頭領である私の力の及ぶ範囲で、出来る限りの償いをさせて頂く」
「ふぅん。無理」
落とし穴に落ちる瞬間のような、ぞっとする静けさが満ちた。
「……それは、か、返す気がないと」
「返す気がないとは言っておりません。単純に、無理。解放と言われても、これは、この方々の選んだ自由の結果ですから」
「意味が、すまない、分からない」
リアは氷のような目でサクラを見ていた。
白い肌も髪も、炎が赤く染め上げる。
「私は、好きになさい、とこの方々に申し上げました。私の虜になるのも、私を見逃すのも、全て自由だと。そして、これが、その結果です。この方々は、自ら、私の虜になることを選んだのです。ですから解放と言われましても困ります。これ以上、私にはどうすることも出来ません」
言葉の内容よりも、その様子が如実に伝えて来る。今のリウには正攻法は通じない。
「……解放でなくても、何だっていいんだ。とにかく元に戻してほしい」
「それも気が向きません。貴方が持っているもの全て、欲しいと思えば簡単に手に入る。代価として安過ぎる。謝罪も不要です。むしろ、私の詩を聞かせる機会を与えて頂いて、感謝したいくらいですから」
「じゃあ……何が。何なら」
「さあ」
とうとうサクラは言葉を失った。
「お話は終わりですか」
「終わりじゃない。待ってくれ」
「もういい加減、私も眠たいのですが。姫様の命ですから……仕方ありません。では、影が白鶺鴒の背と同じ色になるまでは待ちましょう。……待つ間、遊んでいようかしら」
奇妙な抑揚のついた、鳴き声のような声でリアは何か言う。すると数人の魔物が動き出し、隣り合って、四つん這いになった。四つん這いになった二人の上に、また別の魔物が四つん這いになって乗る。繰り返しで、まるで塔を造るように、魔物が積み上がっていく。
サクラは立ち尽くしている。
顔を見なくても、その雰囲気から絶望が感じ取れる。
「あはは。どれくらいの高さになるかなぁ」
無邪気そうな声にため息をつきながらも、カラノも考える。
傍観しているだけでは仕方がない。
結局、自分はどうするのか。
いつもならばリアのそばに控えるところだが、リアに加担するのは、今回は気が進まない。
サクラに協力したい気持ちはある。カラノには、リアを動かす方法が、恐らく分かっている。少なくとも、サクラの自己犠牲的な方法では通じないことも知っている。
ただ、考えの元になっているのはあくまで、カラノの知るリアだ。自ら「愛なきレウ」と名乗った今のリアの心算が、まだつかめていない。
加えて、サクラ自身はともかく、サクラの知人まで助ける程の熱意がカラノにはない。
隣で深く息をする声がした。目を向けると、諦めの悪そうな表情があった。
「そんなに、助けたいのか」
問いかけると顔が向く。よく見ると、赤い瞳は微かに潤んでいた。
一度口を開き、何も言わずに閉じる。待っていると、絞り出すような声で言った。
「……家族、だから。魔物売りの檻の中で出会ってから、ずっと」
サクラの過去の風景を幻視する。魔物売りの檻の中にいる獣人たちと、その中にぽつりと座り込む赤髪赤眼の少女。
血の繋がりのない家族はカラノにもいた。呪物を管理するためとは言え、身寄りのないカラノを、死なないよう育ててくれた。サクラの持つ魔物たちへの感情が、サラサへ向ける感情と同じならば、魔物たちへの同情はなくとも、助けてもいいような気がする。
だが、リアの笑い声が思考を遮った。
「家族だから。それだけかしら、サクラ様」
「……何のことだ」
「聞かずとも、貴方は知っているはず。かわいそうな魔物たちのお姫様。思い当たらないのなら、先に来たものたちが貴方が死んだと報告した時、この方々が何と言ったか、再現してあげましょう」
「――やめて!」
頂点に一人立ち、小山のような高さになった魔物の塔は、リアの一言で崩壊した。押し潰されてうめき声を上げる魔物たちの中から、二人が起き上がった。操り人形めいた動きをしながら、言う。
「あの人間もどき、やっと死にやがったか。清々するな! いつも偉そうにしやがって」
「次はどいつが頭になる? いい加減、矮人やら小人やらと一緒にいるのもうんざりしてるんだ。いっそ他の奴ら追い出して、俺たちだけの村にしちまおうぜ」
他の魔物たちの上げた笑い声が、辺りに響き渡った。
最後に残っていた意志も失ったように、サクラはよろよろとしゃがみ込んだ。
「知ってるよ……」
消え入りそうな声ではあったが、笑い声にかき消されることなく、確かに耳に届く。
「でも、だって。何でそんなこと言うんだ。助けるしかないのに」
「助ける、しかない?」
殺気のこもった視線が突き刺さった。だが、引かずに見返す。血を吐くように、サクラは答えた。
「こいつらを守れず、村を追放されたら、私の居場所はなくなる。一人で生きることは出来ないし、この見た目じゃ人間に受け入れられもしない。こいつらを助けられなかったら、どうせ私も、死ぬしかないんだ」
「――リア?」
咄嗟に確認する。口元には笑みがあるが、空色の目には、憎悪が浮かんでいた。
「
魔物たちが、狂喜しながら自分の手で、自分の首を絞める。
神に脅威とされた災い。
「サクラ様、太陽が時を告げております」
山から出た太陽が、リアの白髪を輝かせていた。月の下では魔性となる相貌が、今はまるで神への供物のような美しさを湛えている。その輝きと反対に、足元の影は濃く伸びていく。
「何もないようなら、好きにさせて頂きます。私、最後に一人残るまで、戦わせてみようかと思って。どなたが勝ち残るか、賭けでもします?」
「あ……」
魔物たちはリアの指令を受けて、自らの首に手をかけたまま、体をぶつけ合い始めた。見た目だけは滑稽な遊戯のようだったが、少しずつ本質から目を逸らせなくなる。
一人、競り負けて押し出され、火にくべられた。獣人は、皮膚は厚いが、毛が燃えやすい。人間の街では燃料として使われることもある。火勢が増して、肌に熱風が吹き付けた。
一人、蛾のように争いそっちのけでリアに近づいた。指令をさらに強化され、自分の首をさらに強く絞めさせられて、気を失い倒れた。
惨い。
だが、呪いのことを知っているから、カラノには分かってしまう。
これは紛れもなく、魔物たちとサクラへの愛だ。
目的に状況からの脱出があったのだとしても、今は心底、魔物たちを自由にし、サクラを不自由から解放したいと思っているから、リアは歌うことを許されている。
その愛は、人間には身に余るとは感じながらも、進んで止めようとは思わない。被害に遭う人への同情よりも、リアへの憐れみが勝ってしまう。人間として、正しく在るために必要な心の部位は、もう大分失われている。
だが、サクラが再び立ち上がるのを見た時には、不思議と嬉しさが湧き上がった。
「諦めないんだな」
「……家族だから、という理由も、本心だ」
赤眼には、痛みと決意があった。
それは酷く美しかった。
リアだけが美しいのではない。当たり前の事実が、突風のように胸に迫る。
震える手が、近くに落ちていた石斧を持ち上げる。
確かに、大体の場合、魔術を使っている魔物を殴れば、魔術の効果は切れる。だが石斧はサクラの手には重そうで、リアの息の根を止められるとは到底思えない。サクラ自身もきっとそれは分かっているだろう。何もせず死ぬよりも、ということかも知れない。
この美しさを、そんな風に無駄に失いたくはない。
自分勝手だとは承知しながら、リアの元へ向かわれる前に、石斧を横から取り上げた。赤眼に苛立ちと恐怖が浮かぶ。
「結局、私を殺すのか……?」
まだ、殺さないとは言い切れない。サクラの味方にはなれても、リアの敵にはなれない。
石斧を遠くに放ることで答えに代え、リアに向き直った。
「……何?」
優しげな微笑みで、背筋に悪寒が走る。だが、もう慣れた。
「アンタのいないところでの話で悪いんだが、由あって既に、サクラは俺の捕虜になっている。肉体も精神も、俺の財産だ。毀損するのであれば、それ相応の対価を払ってもらう必要がある」
「へえ。道理で」
「言うのを忘れていたから、今までのは不問にする。だが、警告した以上、対価を払わず、このまま毀損し続けるのであれば、俺は俺の財産を守るために、アンタに刃を向けざるを得なくなる」
軽く首を傾げたリアは、争う魔物たちを静止させた。悲鳴とうめき声と焚き火の音が、大きくなったように感じられた。
淡々と、尋ねられる。
「好きになったの?」
「うん」
「恋をしたの?」
「美しい花に水をやりたくなる気持ちを、そう呼ぶのなら。そうなのかも知れない」
リアの目が据わる。元々血の気のない顔から表情まで消えると、ますます彫像めいて見える。
「どうする、リア」
笑いかけると、微かに眉間に皺が寄った。
「……ちなみに、対価を払う、と言ったら、カラノさんは何を要求するつもり」
「俺は、無理難題は言わない。アンタになら確実に出来ることだ」
「何かしら。言ってみなさい」
「俺も「幸せ」にしてくれ。こいつらに、したように」
思いがけず楽しくなって来てしまい、頬が緩む。
「と言うか、酷くないか。他の何も理解出来なくても、俺が死にたがっていることだけは、アンタにも分かっていただろう。それを、役立たずとは言え、ずっと尽くして来た俺でなく、会ったばかりのこいつらだけ救うなんて。アンタ本当に優しくない。情がないにも程がある」
思考するための部品が、一つ一つ、剥がれ落ちていく気配がある。ずっと大切に守って来た、自分の形が、不定形になっていく。だが、それで良い。狂気には狂気をぶつける。
「黙って置いていかれかけた時から考えていたんだが、もしかしてアンタ、俺のこと嫌いか? アンタを病的に好きだという点で言えば、俺もアリステラもそう変わらないから仕方ないかも知れないが、だけど嫌いなら嫌いとはっきり言えよ横暴陰険鳥」
脊髄から脳にかけて、熱が引いていくような感覚があった。陽だまりから引き剥がされたようだ。
不快ではあるが、今はそれを待っていた。
集積していた魔力が拡散を始めたのか、心持ち、空気が軽くなったように感じられる。体力も精神力もとっくに使い果たしていた魔物たちが、自分の体の主導権を取り戻し、その場に倒れ始めた。
どの言葉が作用したのかは分からないが、自己暗示が解けて、呪いが発動した。
「サクラ。今のうちに、動ける奴だけでも逃がしておいた方が良い」
「え、これ……。いや分かった」
恐らくこの場は凌げただろうが、念のため魔物たちの救出をサクラに任せ、すぐにリアに向き直る。
カラノにとっては、これが始まりだ。
「何だ、かわいい顔して」
口に手を当て、不服そうににらんで来るリアに、首を傾げて見せる。
「……会った頃と比べると、カラノさん、ずいぶん良い性格になった」
「飼い犬は飼い主に似るらしいから。仕方ない」
「ふ……はは。つまらない飼い主をお持ちのようで」
様子を見ながら一歩ずつ近づく。倒れた魔物たちの合間を縫って、リアの前に辿り着く。
頬に血がついている。
拭ってやろうとすると、軽く手を押し返された。
「降伏ではなく、一時撤退。私は今、一旦、引き下がるだけ」
顔は笑っているが、明らかに本気だった。自己暗示が解けた以上、魔物たちとサクラの救済を本心から目論んでいるとは思えず、恨みを持っているにしても、そう根に持つ方でもなかったはずなのだが、動かしがたい鉄の意志を感じる。
諦めた。
「分かった。だが、今のところは停戦協定を結ぼう。さすがに、疲れた」
「賛成。では、お互い、怪我が治るまで」
「……滞在する気か? ここに?」
「それくらいきっと許してもらえる。それに、頭領を虜にしたのでしょう」
反対しかけたが、それも、諦めた。これから寝床を探すのは苦しい。加えて、リアの傷がどの程度なのかも不明で、カラノ自身、アリステラに切られた左肩には、応急手当しか出来ていない。
サクラに声をかけて宿を頼むと、ほとんど二つ返事で了承された。捕虜だからと言うより、どうせ近くにいられるのなら、目の届く場所にいた方がまだ良い、と判断したらしかった。
皆、疲れていた。
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