間奏(1)

「そうして街を発ったのだが、結果から言えば、一箇月経っても、道程の半分にも達していなかった。出発する前に危惧していた、天候や襲撃のこともあったが、その最たる要因は、リアの寄り道が多すぎたことだ。風の向くまま気の向くまま、リアは色々なことに首を突っ込んで……」


 呆れたような言い方だったが、カラノの顔には、親愛の情が詰まっていた。

 カラノはつらつらと、ガフミまでの旅の中であった出来事を語った。ほとんどが誰かを騙したり、貶めたりするような、反社会的な話だったが、カラノは赤裸々に話した。自慢げではないが、恥じることもないと、心底思っているようだった。

 ヘルメスは話をあるがままに書き留めるだけだ。

 話が一段落したところで、ふとカラノは言った。


「俺も、よく嫌にならなかったものだ。あの頃はまだ……」


 家の外からは、絶えず波の音が聞こえる。


「そう言えば、そうだった。あの頃はまだ、何も知らなかった。リアのことも恐れていたのに……好きだから、というだけで」


 懐かしむように目を瞑った後、再びカラノは口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る