11話 禁断の黄金果実

◇◇◇

選択肢の集計結果は……2が三名、5が三名!

なろう、ツイッターのリプでも集計してます。


参加してくださり……ものすごく嬉しいです! 

胸が熱くなりました。ありがとうございます!


◇◇◇




「あ、お、俺は————」


 天下のヒカリン様へ、俺はYouTuberとしての名を告げる。



「【おっさんと妹】チャンネルのおっさんだ!」


 とどろけ、俺たちの名! そして日本一のYouTuberに届け!

 ここで自らのチャンネル名を語れないなら、頂点を目指す芽瑠めるに示しがつかない。

 YouTubo界の女王その人に告げるならなおさらだ。


 だから俺は、精一杯の去勢を張って宣言した。



「あっそ。その素直さは嫌いじゃないわ。でもやっぱり、あんたは新参者ニューチューバーなのね」


「にゅ、え?」


「ほら、こっちにきなさいよ」


 ざわめきを物ともしないヒカリンに手を引かれ、いや、問答無用で引きずられる形になった俺はあれよあれよという間に校舎裏に来ていた。

 ここで、なにを?

 と疑問をぶつける前に彼女はなぜか俺をお姫様抱っこする。


「え!? ちょっ!?」

「黙ってて。舌噛むわよ」

「へ!?」

「【空に走るは我、雷光なり】——」

 

 ヒカリンがそう呟けば、ガクンッと重力が全身にのしかかった。次に微弱の痺れが流れ、俺が見る景色は高速で空へと近づく。


「ゔゔゔゔゔゔゔッ……ヴッ」


「はーやっぱり人に触れたままこの魔法を調整するのは難しいわね」


「ヴッ……ヴァ!?」


 完全にヒカリンと共に空中というか、校舎を超える高さを飛翔していた。



「電気の力を使って壁を走ったの」


「え、ヴァ……?」


 見れば確かにヒカリンは電流をまとっているように見えた。

 どうにも視界がぶれてしっかり見れてないけれど。


「よっと、屋上なら誰もいないわね。ここなら誰にも邪魔されずに話ができそうね」


 俺は彼女に屋上へとおろされ『調子はどう?』と何度か尋ねられるが……正直最悪な気分だった。

 頭がぐるんぐるんするし、全身が痛い。

 もしかして吉良くんが痺れた原因って……。


「よっわ。あんた全然ダメじゃん。ほら、大丈夫?」


「……え、はい」


 ようやく口の痺れが取れたので『大丈夫』だと手を軽く振ってみせる。


「で、本題なのだけど。昨夜の出来事は覚えているわね?」

「……あ、はい」


 彼女はサクサク話を進めようとするが、非現実的の連続で頭がちょっと追い付いてない。

 

「この高さを一瞬で登りきった……んですか」


 学校の屋上といえば、優にビル4、5階分の高さがある。それをいとも簡単に飛び越え、何の怪我もなく屋上に着地とかありえない。

そこに驚愕していると、彼女は不思議そうに小首を傾げてくる。

 その態度からは、『今更なにを驚いているんだか』と軽い呆れがうかがえた。


「昨夜はもっとひどい体験したでしょ。これぐらいでいちいち驚いてたら、あんた死ぬわよ?」


「じゃあ、吉良くんがしびれたのも……」


「キラ? あぁ、あのゴミ。スタンガンであんなふうになるわけないじゃない」


 バチチチィィィィっと左手に電撃を走らせるヒカリンを前に、思わず後ずさってしまう。



「えーっと……チャンネル名は『おっさんと妹』だったわね」


 あんなに電撃を身体に走らせていたのに、彼女は平然とスマホを操作し始める。


「で、あんたの本名は? あたしだけ名乗らせて終わらせる気?」


「え、はい……神無戯かんなぎ勇真ゆうまです」


 ヒカリンのスマホをスライドする指がピクリと・・・・・・静止する・・・・

 もしかして電流でスマホの調子がおかしくなったとか?

 


「あ、あの……ス、スマホ、壊れないのですか? すごいですね」


「自分の権能スキルぐらいコントロールできなかったら話にならないでしょ?」


 ヒカリンがふふんっと自慢げに語った直後、俺のポケットで何かが弾ける音がする。何事かと思い、確認してみれば俺のスマホがプスプスと黒い煙をあげていた。



「ま、他の人のスマホはわかんないけどね」


「……コントロールできてないやん……」


「うるさいわよ……」

 

 ちょっと恥ずかしそうにこちらを睨んでくるヒカリン。

 そんなバツの悪さをごまかすように彼女は俺から視線を外し、自分のスマホへと向ける。



「って、え!? あんたってチャンネル登録者がたったの2万人ぽっちなの!?」


「え!? 2万人も!?」


 俺は急いでヒカリンのスマホに映る画面を見ると、確かに俺たちのチャンネルは2万4000人に爆増していた。



「うそ……昨夜の配信動画が上がってる……? これって【過去に眠る地角クロノ・アーセ】の映像よね!?」


「く、くろのあーせ? って、もしかして昨夜、俺たちがいたっていう地球の過去ってやつですか?」


「ぷんぷん。なんだ、わかってるじゃないの。新参のくせに落ち着いてるわね」


 ロザリアさんから色々聞いたって点はまだ伏せておいた方がいいかもしれない。

 なにせ、昨夜の今日で俺の学校を特定してきた点を考えるとヒカリンは驚異的すぎる。



「とんでもなくキラッキラに眩しい新星が来たじゃないの。あんた、やばいわよ?」


 そう言ってニコリと美しい笑みを浮かべた彼女に、俺はなぜか背筋がゾクゾクした。


「まず、あんたはありえない現象を……これまでの常識を二つほどぶち壊してるわ。一つ目は、チャンネル登録者が30万人以上じゃないと【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に行き来できないわ」


 な、なるほど。

 それは昨夜もロザリアさんからうっすら聞いたけど、チャンネル登録者が2万人ぽっちの俺が【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に行けるのはおかしいらしい。



「そもそも、そんな弱小チャンネルじゃVRゲームの企業案件がこないし」


「企業案件?」


「そっ。超大手ゲーム会社のスクフェニを名乗って、ベータテストのプレイレビュー動画を出してくれーって。前金の時点で3000万円って超高額報酬だから、ほとんどのYouTuberが引き受けちゃうのよね……そうなるとデスゲームへようこそって感じよ」



 やはりVRゲームをプレイするのがきっかけだったのか?



「俺の場合は……ベータテスターに当選したって形で、アーセに関わりました」


「そこよ。おおっぴらにベータテスターを募集するなんて前代未聞なのよ。私たち・・・も警戒したわ」


 もし仮にあの世界に誘致されるきっかけが、ゲームにあるのだとしたら……影響力を持つYouTuberたちが事前に警告してくれてもいいはずだ。

 

「ヒカリンさんたちは知ってたのですよね? どうして公表しないのですか?」


「話を戻すわね。チャンネル登録者が30万人以下で【過去に眠る地角クロノアーセ】に来たYouTuberはあたしが知る限り初めてなの」


「はあ」


「2つ目は、【過去に眠る地角クロノ・アーセ】は無関係な人達に決して伝えられなかったの。口外するのはもちろん音声データの録音や筆録、ネットへの書き込みやメッセージアプリ、あらゆる場面で私たちは【過去に眠る地角クロノアーセ】を現代に伝える手段が取れなかったわ」


「それは……どうして?」


「しようとすると身体が勝手に停止するの。あとは声がでない、とかね」


「え、こわ……」


「あとは偶然とか意図せずに【過去に眠る地角クロノ・アーセ】について漏らしてしまった場合、地球アースで死ぬような出来事が起きたりするわ」


 だから誰も口外できない。

 そんなヒカリンの双眸は底冷えするような剣呑さを放ち、冗談を言ってるようには思えない。そもそも、俺もトラックにひきかけられた身として笑い話にできるわけもない。



「でも! あんただけは、YouTuboに【過去に眠る地角クロノ・アーセ】を配信できてるわ。ほら、しっかり私が【狂い神】と戦ってる姿や【ハラハラ三銃士】が死ぬところ・・・・・もアーカイブに残ってるわよ」


「……どうして……?」


「あんたの権能スキルや、祝福ギフトに関係があるんじゃないかしら?」


 ヒカリンの言葉に【背信者はいしんしゃ】の三文字が脳裏をよぎる。



「でもじゃあ……思いっきりアーセの存在を配信って形でばらしてるのに、俺はどうして無事……?」


「これはあたしの私見だけど、あんたの権能スキルによってリスナー全員が【過去に眠る地角クロノ・アーセ】の関係者・・・に変換されてるのかもね」


 無関係な者にもらすのは御法度。だけど関係者ならこうやって今、俺たちが話し合っているように自由に議論できると。



「ま、あんたの権能スキルについて詮索はしないわ。【過去に眠る地角クロノ・アーセ】を行き来するYouTuberにとって、自分の権能スキル能力は生死に関わるもの」


「生死……?」


「ほら、このヤッホーニュースの記事を見てみなさいよ」


 そうやってヒカリンが見せつけてきたのは、【3人組の女性YouTuber が同時に死亡】と書かれた記事だった。



「これって……【ハラハラ三銃士】……!?」


「そ。これでわかったと思うけど、【過去に眠る地角クロノアーセ】で死んだ人は現在リアルでも死ぬわ」


「まじかよ……」


「あんたはそのおかげでチャンネル登録者が増えてるってわけね」


「え?」



「ほら、こっちの掲示板サイトに【ハラハラ三銃士の死因が動画にあがってる件】とか【ハラハラ三銃士、龍に殺されるwww】とか拡散されて、憶測が飛び交ってるわね。これを見た人があんたのチャンネルを登録してるってわけ」


「そんな……。本当だ……昨日の動画だけ再生数が20万超えになってる……」


「よかったわね。これであんたの広告収入が増えたんじゃないの?」


「そういう言い方はひどい、です……」


 冷たく言い放つ彼女に、ほんの少しの違和感を抱く。

 昨夜の戦いぶりから【ハラハラ三銃士】と【ヒカリン】は旧知の間柄のように思えた。それをこんな風に言い捨てて終わりにしてしまうのは、どうにもサイコパスさを感じる。



「ヒカリンさんは【ハラハラ三銃士】が死んでしまって、何も思わな————」


「あんたが自分の意思でこの動画を出したんなら、この場で殺してるわよ」


 俺の疑問に言葉をかぶせたヒカリンはスッと闇が落ちたように表情がなくなる。『それ以上は言わせない』といった気持ちが伝わってきた。

その瞳の奥に広がる虚無は深まり、よく見れば彼女の目元はほんの少し赤く腫れていた。



「……でも違うんでしょ? それにあんたはもう、こっち側の人間になってしまったの。なら、あんたの生存確率を上げる方に思考を……感情をく方が生産的なのよ」


 言ってる内容とは正反対に、ヒカリンの顔は苦渋に染まってゆく。

 彼女は明らかにハラハラ三銃士を失った悲しみを受け入れられていない。



「あたしたちは、感傷に浸ってる時間なんてないのよ。この瞬間もね」


「それはどういう意味ですか?」


 俺は彼女の秘めておきたい心の傷には触れず、敢えて先を促す。



「YouTuboにおけるチャンネル登録者の数は……YouTuberの力の源であるのよ」


「力?」


「私たちYouTuberは自身のチャンネル登録者数が、自分の能力値ステータスになるの」


「え、じゃあ俺は2万人しかいなくて、ヒカリンは1500万人だから……ステータス差は750倍?」


「そうよ。神にも等しい能力を持つYouTuberを、仮に神と呼称するなら……現にあっちじゃ神だと崇められてるのも何人かいるけど。とにかくチャンネル登録者は、神々あたしたちに力を付与する信者とも言えるの」


「……」


「ほら、ステータスって念じれば色々と情報が出て来るでしょ? あんたの場合は2万人だから、2ポイント分ステータスに振れるんじゃないの?」


 確認すれば、ヒカリンの言う通り……ステータス表記の下にある数字が変わっていた。

【割り振り可能なポイント2 = 信者数/登録者数25107人】


 昨夜までは割り振り可能なポイントは確かに1だったはず。それが今では2に増えている。


 

「1万人で1ポイントだけ……?」


「でも、あんたも実感してるでしょ。その1ポイントで身体能力が物凄く変わるって」


「それは……」


 確かに力も素早さも、たった数ポイント上昇しただけで万能感を覚えるほどだった。

 それがヒカリンは既に1500ポイント分も自身のステータスに振ってるなら、コンクリートすら素手でぶちぬけるんじゃないのか!?

 そんな彼女ですら【過去に眠る地角クロノ・アーセ】では苦戦して、仲間を3人も失っている。

 ステータスの低い俺が、日常的に龍が襲ってくるような世界で生存できるのかって点だ。



「理解できたようね。あんたは一刻も早く、自分のチャンネル登録者を増やして……【過去に眠る地角クロノ・アーセ】で生き残る手段を模索するのよ」


 絶望的な説明がヒカリンの口から発せられ、俺の中でワクワクだった世界は一変する。まるでデスゲームにぶち込まれた気分になった。



「ここまで何か疑問はあるかしら」


「疑問……どうやって俺の居場所を、学校を特定したのですか?」


「電気人間にとってPCのハッキングも、街の監視カメラ映像の過去データも見放題ってわけ」


「あ……それで俺を発見したってわけですか……」


 ヒカリンのような権能スキルを現実でも使用できるYouTuberが暗躍している事実に不安は募る。

 たまたま彼女はいい人だから、その力を犯罪に使わなかった。けれど他のYouTuberは違うかもしれない。いや、そもそも彼女もデータを無断で活用しているから危ない?

 


「どうして俺に、親切に色々と教えてくれるのですか?」


れいが……守ろうとした人間だからよ」


 零……今もなお俺の影に潜むロザリアさんの本体を指しているのだろう。

 口ぶりからして彼女たちは仲間だったはず。それなのにヒカリンが現れても、姿を見せないところを鑑みるにロザリアさんに何らかの思惑があるのかもしれない。

 ここは黙っておくべきなのか、それともヒカリンを信用して分体の事を話すべきなのか……恋子こいことお隣さんの件があってから、どうにも女子に対する疑念が深まってしまう。



「ユーチューバー同士の殺し合いは過去にありましたか?」


「それぞれ譲れない何かを抱えてる者同士が衝突して、どちらか一方を殺したケースはあるわね」


 ……やっぱりあるのか。



「次に【過去に眠る地角クロノ・アーセ】へ転移するタイミングはいつですか?」


「今まではVRメガネで【アーセ】にログインできる時間が夜の20時~24時と決まってたのよね」


「今までは……?」


「今は【禁断の黄金果実タイム・アップル】を【まじめしゃちょー】一派が握ってるから、昨日みたいなこともあるわ」


禁断の黄金果実タイム・アップル?」


「【過去に眠る地角クロノ・アーセ】には世界の声ワールドクエストって、ユーチューバーにしか聞こえない声が響く時があるの。ゲームでいうシステム音みたいなやつかな。色々な課題を提示してくるのよね」


「……ワールドクエスト」


「クリアしたらボーナス扱いかしらね。そのワールドクエストをこなした人が、次の【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に転移するタイミングを決定できる【禁断の黄金果実タイム・アップル】がもらえるの」


「じゃあ、いつ【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に飛ばされるかわかったもんじゃないと……」


「そ。だからあたしたちは、感傷に浸ってる時間なんてないのよ。この瞬間もね」


 ヒカリンは暗に、【過去に眠る地角クロノ・アーセ】で生き残る確率を少しでも上げるために、この瞬間もチャンネル登録者を増やしてステータスを上げろと言っていた。

 なるほど、巨万の富を築いた女子高生が未だにYouTuboへ毎日欠かさずに動画投稿をしている理由はこれだったのか。なんて過酷すぎる環境を続けているんだ。



「別に【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に行かないって選択もあるけどね」


「……強制転移じゃないわけですか」


「うん。でも【過去に眠る地角クロノ・アーセ】には自分の根源が在るでしょ?」


「それは過去の自分だったり……親だったりって事ですか?」


「そうね。ま、大半は両親か祖父母よね。その両者が何かの拍子で死んだら?」


現在リアルの自分も死ぬ……」


「だから、みんな血眼になって自分の根源を探し、守ろうとするわ。死に脅迫されて【YouTubo界の闇】にもぐるのよ」


「なるほど……知ってしまったら、見て見ぬフリができるほど死の恐怖は軽くないですしね……」


 万が一にも両親が死んで、芽瑠が消えてしまったらと想像すればいてもたってもいられない。俺が【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に行かない理由はもはやない。


「ここから重要な話なのだけど、ユーチューバーは大きく4つの派閥に分かれているの」

「……やっぱり派閥とかあるんですか」



過去に眠る地角クロノ・アーセ】を理解し、生き残るためには重要な話題が彼女の口から出た途端、妙な感覚を覚える。

 右手のあたりがムズムズ痛むというか、何かに噛まれたような————


「そう。その四つの派閥っていうのは————って、やばいわね。来たわよ」


「——え!?」


「【まじめしゃちょー】が【禁断の黄金果実タイム・アップル】を使ったわ!」


「え? じゃあ【過去に眠る地角クロノ・アーセ】に!? ど、どうやって行くのですか!?」


「はぁ!? あんた失楽園の鍵ログイン・キー】をあたしが知るわけないじゃない! あんた、どうやって行ったのよ!?」


「え、えっと、確かお隣さんに無理やり水を飲まされて……それから水をこぼして……」


「意味わかんない。あーもうっ、教えるわよ! あたしは光れば【過去に眠る地角クロノ・アーセ】が見えるわ!」


 そう言って、彼女は降り注ぐ太陽の陽ざしの先にまるで何かがあるかのように見据える。そしてその何かを掴むよう空へ向かって両手をあげた。すると光の粒子が雪のように舞い落ち、ヒカリンはスーッと姿を消し始める。

 

「ひとまずの目標は、あっちであたしと合流ね! それじゃあ生き残るのよ!」


 制止する間もなく彼女は光の中に溶けていった。

 俺は俺でどうすれば【過去に眠る地角クロノアーセ】に行けるかでこんがらがった頭を、どうにかまとめようと四苦八苦する。


「えっと……ヒカリンは光の中に【過去に眠る地角クロノ・アーセ】を見るって言ってたから……俺が初めてあの世界を見た時は————グラスの中の水だ!」

 

 そうとわかれば俺はすぐさまスクールバックからグラスを取り出し、水筒から水を注ぐ。キラキラと陽光に反射して輝くグラスの中を眺めれば、確かに異世界の風景が映っている。


「これを……こぼせば!」


 世界がひび割れ————

 その亀裂の中へと飛び込む。


 すると目論むどおり、視界は一瞬にして空に浮かぶ大地へと様変わりした。


 そして隣には、月のような美しさをまとったロザリアさんがちょこんと鎮座しているのだった。



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