第13話:仏像の仮面を被ったヒーロー

ってことで、俺はその異星人・・・とやらに会うことになった。


姫が異星人と話をつけてくれたらしい。

姫がベランダから異星人を呼んでくれるみたいだ。

テレパシーとやらで・・・なんでもありだな。


しばらくするとノイズが入ったデジタル画像みたいな映像が現れてはっきりとした

形になったと思ったら、異星人「ブッダー」だろう人物がベランダに立っていた。


俺は、なんか異星人って有名なタイプ「グレイ」みたいなやつかと思っていた。

でもブッダーは身長も俺とさほど変わらないし、なんでか知らないが仏像の面を

かぶっていた。


・・・・なんで?


その時、俺は気づいた。

そう言えば、俺の子供の頃ヒーロー物ブームがあって、猫も杓子もヒーロー物に

ハマっていた頃、仏像の仮面を被ったヒーローがいたっけ。

人気がなかったのか、すぐ打ち切りになったけど・・・。


たしか・・・「仏像仮面ブッダー《ぶつぞうかめん》」


金属っぽい黄金の色をした仏像の仮面を被ったヒーロー。

それだ・・・なんで異星人が仏像仮面?の格好してるんだって思うよね。

体も仏像仮面とそっくりで、手袋にブーツ・・・長めのマント・・・

そっくりだった。

ブッダーはおよそ異星人らしからぬいでたちで俺の前に現れた。


(訳わからん・・・)


「ツッキー紹介するね・・・こちらブッダー」


「ブッダー、こちらツキオ・・・私の彼、ツッキー」


「どうも、ツッキー殿、はじめまして・・・ブッダー・ジャイア

・マハーディーラ・ガウマタ・シッダールナ・アーナンガ・ハマー・

プラシャーナティー・アデルヴァ・ヴェーナアーンギラナでござる」


「え〜・・・なげえ名前・・・」


「またの名を、仏像仮面ブッダーでござるよ」


「ご、ござる?って・・・侍?」


「ツッキー殿・・・貴殿のことは姫から聞いてよく知ってるでござるよ」


「あ、そうなんですか、それはどうも・・・って日本語おかしくないですか?」


「なんで、時代劇風な喋り方なんですか?」


「姫の面倒を見なければなりませんゆえ・・・日本語を勉強してたでござるよ」

「映画なんかも好きでよく見てたでござる・・・」


「たとえば、るろうに剣心とか・・・」


「ああ・・・なるほどね、カブれてるんだ・・・」


「どこの星の人も同じなんですね」


「で?なんで仏像仮面なんですか?」


「ああ、昔、日本のテレビでやっていた仏像仮面ですが、あれは実はそれがしで

ござる」


「え?・・・あの特撮って、中に人が入ってやってたんじゃないんですか?」


「当時から、それがしはこの地球に来ていて、バイトでテレビ出演なんか

してたでござるよ」


「それ、マジですか?・・・本人が本人を演じてたって?」

「そうだ、素朴な質問・・・その仮面の下の顔・・・気になるんですけど・・・」


「仏像仮面ブッダーは謎の人でござるから、お見せすることは、できないでござる」

「ご勘弁願いたい」


姫はなんのことやら分からないらしく、ボーッと俺たちの話を聞いていた。


「という訳で、姫が幼少の頃、彼女の命を救ったのは、それがしでござる」

「それ以来、今日までずっと姫を見守っていたでござるよ」


「それがしの存在は、人には知られるとマズいと思って姫とは内緒で会っていたで

ござる」

「それがしは、ただ姫のことが心配だっただけでござるよ」

「もし、この地で不自由なことがあったら姫をわが星に連れ帰るつもりでおったで

ござる」


「連れ帰るって?」


「姫はもとは、この世では生き残れなかったかもしれない命でござるからな・・・」

「それを無理やり我々が蘇生した責任があるでござるよ」

「姫さえ、よければでござるが・・・我々の星に移住すれば、それが一番よいのでは

と考えてる次第でござる」


「姫は・・・姫は?・・・ブッダーと一緒に行きたいのか?」


「行かないよ・・・私にはツッキーがいるもん」

「どこにも行かない」


「ブッダーにもそう言ってあるよ」


「それがし、貴殿と姫の日々を見てきて思ったでござるが貴殿は、姫にとって

なくてはならない存在のようでござるな」

「貴殿は姫を正しい方向に導いてくれる羅針盤のような存在とお見受けいたした」

「欲望に駆られて、禁を破るような方ではないと・・・」


「仏像仮面さん・・・満月の夜の俺たちのやり取りも聞いてたんですか?」


「・・・・・・・」


「それって、盗撮、盗聴と変わんない行為ですけど・・・」

「姫の後見人としては・・・いたしかたなく」

「後見人って・・・・」


「それでもプライバシーの侵害ですよ・・・今後やめてもらえます?」


「承知つかまつった・・・悪かったでござる」

「ですが、満月の夜以外は、それがしはここで、おふたりの動向を観察させて

いただくことにしたでござるよ」


「え〜っ・・・ブッダー、ここに居座るつもり?」


ブッダーに居座られると思った姫がクレームを出した。


「ダメダメ・・・私とツッキーのラブラブな時間を邪魔しないで?」


「けっして、おふたりの邪魔はいたしませんゆえ、ご安心を」


「お疑いなら満月の夜はUFOに帰ってることにするでござるよ・・・」


「ああ、ぜひそうしてください・・・」

「え?で?・・地球まで乗ってきたUFOは?、今どこにあるんですか?」


「UFOは月の裏に駐車してあるでござるよ」

「ここのベランダにはUFOから転送して来たでござる」


もうジャンルがラブコメじゃなくSFになってないか?


「あのさ・・・ずっとUFOに帰っててくれない?」

「ねえ、ツッキー、ツッキーもそう思うでしょ」


「まあ、邪魔さえされないなら、俺はいてもかまわないと思うけど・・・」


「ええ〜まじで〜」


「そこまで嫌がらなくても・・・ご迷惑はおかけいたしませんでござるよ」


「でも、自分のことは自分でやってくださいよ、俺たちは感知しませんから・・・」


「では、決まりでござるな、南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏」


「あ、思い出した、そのセリフ、敵をやっつけた時に敵に向かって

言ってたやつ」


ってことで、仏像仮面が我が家に、いついてしまうことになった。

家の中に、昔のヒーロー仏像仮面ブッダーがふつうに、うろうろしてるって、

どうなの?

誰かきて、仏像仮面を見たらなんて思うんだろう・・・?


まあ、普通にいい年したおじさんが昔のヒーローのコスプレしてるって思う

んだろうな。

異星人とも知らずに・・・。


まあ、いいか・・・どうぜ本当のことを言っても、誰も信じてもらえそうに

ないし・・・。


つづく。

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