第3話:私の彼氏になって

「なに?、どんな話?」


「男と女の話・・・」


「はあ?・・・そんなの、わざわざ学校でしなくても家でも話せるだろ」


「私と付き合って・・・」


「・・・・」

「なに?・・・なんて言った?」


「だから、私の彼氏になって、って言ってるの・・・」


「俺と暮らしてもう2ヶ月以上立ってるぞ」

「今更かよ・・・」


「つうかさ、俺たち兄妹ってことになってるんだぜ?」

「兄妹で付き合うって・・・世間的におかしいだろ、それ」


「兄妹って建前だけで、他人でしょ?」


「そうだけど・・・・」

「つうかさ・・・そんな話、こんなところでしなくていいだろ」


「こういう話は学校でよくあるシュチュエーションだと思って・・・」


見ると食堂に来てる生徒全員の目が俺たちに、注がれていた。


「ちょっと来い・・・校舎の裏へ行こう」


そう言って俺は姫の腕をつかんで教室から出た。

校舎の裏に着くと、俺は俺の手がかるくなったことに気づいた。


「またかよ」


左腕がはずれた姫がニタニタ笑いながら後ろから付いてきていた。


「あ〜不気味だ・・・ホラーだ・・・」


「ほら、ちゃんとつけとけよ、そんなのクラスの誰かに見られたら大変だぞ」


「で?さっきの話だけどさ・・・俺に彼氏になってくれって?」

「なんでまた?」

「他に彼氏になってくれる奴がいないから、俺でもいいやって思ったか?」


「あのね、私のお友達の美幸ちゃんがね、お友達でもないけど・・・

んで、その美幸が男子五人から同時に告られたって自慢するのよ」

「みんなの前で・・・」


「悔しいでしょ」

「私に、告ってきたのはヘタレのヨコチ先輩だけよ」

「そんなの私のプライドが許さない」


「他の男が、なんで姫に告らないか?・・・それは多分、姫が

近寄りがたい存在だからなんだよ」

「みんな、姫にはすでに彼氏がいるんだろうな、とか告っても断られるだろう

なって諦めてしまうんだと思うぜ」

「それは俺でもなんとなく分かる気がする・・・」


「たとえばだぞ・・・」

「俺だって姫に付き合ってくれって言うのに、けっこう勇気がいるからな」


「ヨコチはプライドなんてないやつだからな・・・自分の欲望の方が

勝ったんだろうな」

「ごめんなさいも言わずに、いきなり往復ビンタ食らって落ち込んでるぞ」


「そんなの私の責任じゃないし・・・」

「とにかく私がモテる女だって証明出ればそれでいいの」

「手始めにウソでもいいから、ツッキーから告られたって話をでっちあげたいわけ」

「なにも、本気で私の彼氏になってくれって言ってるわけじゃないの」

「形だけでいいから、そういうことにしてほしいの・・・」


「あのな・・・俺はそんなくだらねえ女同士の見栄の張りやいに利用されよう

って訳か?」


「お願い・・・もう家で暴力ふるわないから・・・」


「え?まじで?」


姫が暴力振るわないってのは、話に乗って見る価値ありだな。


家にいるときは、よく背中叩かれたり、足蹴りされたりするからな。

俺でも本気出したら、姫とやりあうことだってできなくないと思うけど

万が一にも女を殴ったりしたらDVだとかなんか言われて最低男のレッテル

貼られるからな。

まあ、偽の彼氏になってやってもメリットはあってもデメリットが

あるわけじゃなし・・・。


「暴力ふるわないな」


「ふるわない・・・」


「俺だけじゃなくて、ヨコチとか他にやつにも暴力はふるうなよ」


「分かった」


「よし・・・なら、彼氏になってやるよ・・・仮の、だけどな・・・」


「本当に?・・・でも、仮の彼氏でも私を裏切ったら殺すよ」

「浮気なんかしたら殺すからね」


「それも暴力じゃないのかよ」

「それに、おまえな・・・仮とは言え彼氏を脅迫してどうすんだよ」


「殺さなくてもヨコチ先輩みたいに入院することになるよ」


「分かったよ、でも彼氏ったって話の上だけだろうが・・・」

「お互い好き同士でもなんでもないのに、俺が他の女と仲良くしても、それは

浮気にはならないだろう?・・・」


「ツッキー・・・いっぺん、死んでみる?」


つづく。

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