ワタシには武器がある

小鳥居。

開戦

さて天気が大雨で身体は重く、ダラけた部屋着でやる気もない。飲みかけや飲み終えたエナジードリンクがそこら辺に散らばり、そんなことを諸共せずにネトゲをしまくって現実逃避をしていた。ただ、そんなワタシもニートになるつもりなどなく、何かをしようと片耳にイヤホンをして最近の流行り物でも流しつつ、片手はスマホでネットでも漁っていて、もう片手で勉強でもしている。いや厳密に言うと頭の中に入ってなんてないし、それっぽいことをしてるに過ぎない。流石に課題の山という山を取り除いていかないと、まずいのはわかっている。ただなんというか、やる気にさせるものを感じさせないというか。こんなんだから留年しそうになってるんだ。あ。課題の山…そういえば今週末が期限だったっけ。

…そういえば課題に将来の夢とか、何したいかってのがあった気がする。そんなのその時になってみないと分からないし、書きようがないじゃん。と適当なことを思いつつ、シャーペンをカチカチと課題用紙に押し当てるだけだった。

いや親は目立たないような将来望んでないらしく、「もっと華やかで、ちゃんとした日常を送りなさい」って毎回言われて正直うんざりしている。ワタシは華やかな生活なんて望んでないし、好きな人がいる…的なものもない。それでも自分が生きてて楽しい人生がいいなっていうのは思っていた。詰まるところ自己満足の凡人になりたがっているわけなんだけど、どうなんだろうね。

おそらくワタシにそんな凡人のような人生にはなれないと思う。"あるもの"が他の人と違うせいで。


…ともかくこの課題を終わらせないと今日という今日は終われない。このやる気のないワタシの全力をこの課題にぶつけて見せる。

そんな中ワタシのスマホから緊急の通知が来る。


―大規模テロが発生。神原区域内の被害者の避難を開始。…とのこと。

あぁ。ウチ周辺ってこういう事件よく起こるよなぁ。一体こんな何の変哲もないこの街で治安が悪いって…。深掘りしたら消されるのかな?

とにかく、内容は近所の神原区のササキデパートにて殺人テロが起こったというもの。そして人質に捉えたのはなんとワタシの唯一の友達と言える「春日部ユキ」がニュース速報で顔付きで出ているから驚きだ。


―さて。てことはそろそろ電話がかかる頃合いだ。

…Prrrr!

毎度の如く非通知。スマホを持っていたからバイブにはすぐ反応できた。あぁ。スマホ依存症で良かったのかも。

いつもの渋い声で挨拶される。

「こちらNo.1。応答せよ。」

「はいはい、No.2ですよー。」

「速報で出ているササキデパート殺人テロ事件の犯人の始末を求む。」

「人質はワタシの友達だから今回はちょっとだけ本気で行こうかな。」

「いつも本気でやれ。以上だ。」

―ブチッ。全く…。冷たいんだから。まぁワタシもこんな性格だけれども。

まぁこんなやつだけど、一応は仲間になる。

ちなみに報酬は大体1つの事件を解決するごとに10万ちょっとで学生のワタシからするといい金稼ぎである。命取りではあるけれど。

とにかく、ワタシは考えることをやめて、机にあった自転車の鍵と家の鍵を手にして猛ダッシュで外へ向かう。


―ザーッ。大雨特別警報も出てるし。なんか今日運がないというか。まぁ。ユキは大切な友達だし、金稼ぎだし。

と言ってもユキのやつこんな大雨の中なに遊びに行ってんだよ。こんな日くらいワタシみたいに家でゆっくりしておけばいいのに。

なんだかんだワタシはこの大雨の中チャリンコを飛ばして神原区までやってきた。

まぁ。厄介な連中…といえば敵のように思われるが、警察が彷徨いていた。いやワタシからしたら今は警察も敵。簡単に言うと、ワタシからすると犯人、そして警察も敵そのもので、まさに三つ巴の戦いというわけ。

…まあ殺人テロが起これば警察沙汰になるのは誰もが予想をするだろう。


―警察です。不審な男がまだ周辺を彷徨いています。なので神原区は現在全面的に立ち入りを制限させてもらってる次第なのですが。

「ワタシは関係者でね。」

「…は?身分を証明できるものはあるのか?」

「うーん。証明できるものはないかな。ただ人質はワタシの唯一の友達だから通させてもらうよ。」

「ちょっ!待ちなさいっ。犯人は銃を持っている!」

「ワタシは銃で死ぬことはないから。」

そう言い残し自転車を全速力で漕いでいく。雨で視界は悪く、体力は消耗するばかりではあるけど、この任務…割と報酬高いんだ。

さて。目的地はもうすぐだ。

警察官がウロウロしていて、まともに太刀打ちすることは不可能に等しいこの状況。どうするか?

そんなの分かりきっている。変装だ。いつも持っているハンドバッグには武装用の服がある。

変装していけばいいんだけど、急用のときって外で着替えたほうが身が引き締まっていいワケで。

それに銃声も聞こえてきて―


―あぁ。開戦だ。

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ワタシには武器がある 小鳥居。 @takayarn82

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