【高田美也子の章】=大団円=

 後日、島田専務の計らいで、悠人さんはワタシの手元で面倒を見ることになった。

 父へはウソ偽りない事実を報告し、悠人さんの面倒を見ながら大阪で暮らすことに了解をもらった。さらには悠人さんの会社への配慮の件についても礼を述べた。

 ワタシたちは大阪の郊外に庭付きの戸建てを購入し、親子三人での生活を始めた。義忠さんが莫大な資産を遺してくれたおかげで何不自由なく暮らせているけれど、ピアノ講師も少しずつではあるが活動を始めた。自らの生活力も見失いたくはないし、ワタシにとっては励みにもなるから。

 時折り悠人さんにもピアノを聴かせてあげるようにしている。ピアノが置かれている部屋には、彼が描いてくれたワタシの肖像画を飾っている。彼にその肖像画を見せながらピアノを聴かせるのである。その時にはかなり穏やかな表情を見せてくれる。

 元々悠人さんは健康的に問題があるわけではなかったので、のんびりした環境でリハビリすれば、いつかは以前の悠人さんに戻るかもしれないと担当医も話していた。

 最近はよく笑ってくれるようになったし、悠也のこともちゃんと認識できているようになっている。

 あと何年かかるかわからないけれど、いつか三人で清水寺にお詣りしたいと思っている。



 そうそう。先日、谷口さんから連絡があって、清水さんと結婚することになったという話を聞いた。


 もちろん悠人さんと悠也と親子三人揃って参列させていただくつもりでいる。



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