九話 準決勝

 コロッセオ型おフェンシングフィールドは、満員すら超越していた。

 通路を埋め尽くす立ち見令嬢に、姉の膝上に乗る初等部生。

 学園中、全てと言っても過言ではない生徒達が、戦いの始まりを待ちわびている。

『さぁさぁ、ついにこの大会も準決勝、残す試合も後わずかだぁ!』

『誰と誰が戦うか、説明する必要もないでしょう』

 案内ボットの合図を受け、一人の女がフィールドに姿を現す。

『最早何も言うことなし! 最強の女! 無敗の女! 最上級生の大貴族級!』

 爆発したような歓声が、実況をかき消そうとする。それに負けぬように、叫ぶ。

『おフェンシング無双、ヤギューインッッッ!!!』

 歩みと共にたなびく、長い黒髪は濡れ羽の如し。

 ヤギューインが、その切れ長の瞳を伏せ、観客席に一礼した。

 その瞬間、再び歓声が爆発する。

 それが鳴りやまぬうちに、もう一人もフィールドに現れた。

『彗星の如く現れたニューヒロイン! 一年生? 庶民級? 侮れる奴はもういない!』

 ヤギューインのものよりはやや小さいが、観客席は湧き上がる。

『ザ・下剋上、ユチナァアアッッッ!!!』

 中等部一年。ヤギューインと比べれば、小さな子供のようにさえ見える少女が、堂々と頭を下げる。

 降り注ぐ声や視線は、ヤギューインの人気を考えれば意外なほどに好意的だ。

 といってもその好意の種類は、粘って欲しい、食らいついて欲しいというような、負けを前提としたもの。もしくは同情や、哀れみだ。

 ユチナが勝つと思っている者など、この会場にはいない。

 この、二人しか。

『ガンバッテェ! ……じゃねえんだよクソどもがよぉ。吠え面かかすぞユチナァ!』

「当然ですわ」

 ユチナはソードを腰から抜き、力のこもった瞳でヤギューインを射抜く。

 睨まれたヤギューインも応じるように剣を抜き、口を開いた。

「……剣、変えていないのだな」

「……愛剣ですわ」

「だが……いや、そうだな、すまない」

 頭は下げず、袖を捲った。


「おフェンシング……エト・ヴ・プレ(来い)」

「ウィ(当然ですわ)!」

 花が舞い散る。

 貴族級進級をかけた戦いが、始まる!


『ヤギューイン選手、いつも通り、王者の余裕を見せつけるぅ!』

 白の道着に紫の袴と半仮面、チューンスーツを身に纏ったヤギューインは、刺突剣型のスタンダードなおフェンシングソードを構え、ユチナを待っていた。

『さぁて、とりあえず第一段階クリアだ』

 ユチナは黙ってうなずき、下半身に力を溜めた。

『……その余裕、後悔しても遅いぜ!』

 溜まった力が、解放される!

 恐るべき速さでステップインしたユチナが、渾身の突きを放つ。

 ヤギューインは、バックステップ。

 ユチナの腕が伸びきり、ヤギューインの胸部 一センチ手前で止まった。

 完全な見切りだ。

「ですわぁっ!」

 だが、そんなことで驚くはずもない。相手が化け物だということぐらい、嫌というほどもう味わったのだ。それでもなお、勝ちに来た。

 さらに踏み込み、中段突き、上段突き、下段薙ぎ払い……とみせかけた倒立回転蹴り!

 プロペラじみたキックだ!

「……!」

 ヤギューインは、その全てを反らし、躱し、腕で受けた。

 同じ攻撃が、二度通じる相手ではない。

「ですわっ!」

 それも理解している。すぐに立ち上がり、体術とソードを組み合わせた、超至近距離での連続攻撃に入る!

 突き、左拳、右下段蹴り、振り下ろし、突き、サイドキック、止まらぬ連撃!

 だがしかし、それもヤギューインには届かない。

 的確に受け、反らし、防ぎ、攻撃と攻撃の間の僅かな隙に、前蹴りを放った。

「ふんッ!」

「――ッ!?」

 ユチナの身体が、くの字に曲がってフィールドの端まで後退させられる。

 追撃の好機だが、ヤギューインは動かない。ただ、ユチナを見る。

「ふー、はぁー」

 鳩尾に一撃を貰ったユチナだが、戦意は衰えてなどいない。

 大きく一度深呼吸し、剣を構え……投げた!

「……」

 眼前に迫りつつある切っ先を、ヤギューインは無感情に眺めた。

 叩き落とすために剣を構え、目を見開いてバックステップした。

『……これも、通じねえか』

 そこには、突きを放った体勢のユチナがいた。

 投げた剣に追いつき、空中で掴んで刺突したのだ。

 だが、それも、ヤギューインには届かない。

 ユチナは距離を取り、構えようとし、諦めたように体から力を抜いた。

『乾坤一擲! 一歩間違えば即敗北に通じかねない凄まじい奇策! だが、それもこの女には通じなかったァ! なんという強さ、ヤギューイン!』

 観客席から、健闘を称える声と拍手が、起こり始める。

「……もう、終わりか」

 無表情のヤギューインが攻撃の構えに移り――。

 ――ユチナが飛び出した!

 そのスピード、試合最初に放った渾身の突きの、実に一、五倍だ!

 ヤギューインが、驚愕に目を見開く。

 渾身の突きの、更に一、五倍など、あり得ないはずだった。

 いったいどのようなカラクリが、そんな一撃を生んだのか!



 庶民級寮中庭に、スーツを装着した赤髪の少女と眼鏡の少女が向かい合っていた。

 眼鏡の少女、トモの身体を借りたバーガーが言った。

「お前は、強くなったぜ。正直あり得ねえレベルにな」

 バーガーが続ける。

「でもな、断言できるぜ。このままどんなに練習しても、ヤギューインには勝てねえ」

 悔しそうにしながらも、赤髪の少女、ユチナは首を縦に振った。

 その様子を見てから、バーガーは口の端をニヤリと吊り上げた。

「だが、あいつには隙がある」

「ヤギューインさんに、隙、ですわ?」

 流石のユチナも、なるほどと首を縦には振れなかった。ヤギューインの今年の試合映像は全て見た。そして全ての試合で、相手の攻撃を無傷で受けきり、一撃で倒していたのだ。

 もちろん攻略の糸口を見つけようともしたが、無理だった。

(ヤギューイン様に隙なんてありませんよ! あの試合を見ておいてド素人以前の――)

「黙れ眼鏡。顔面保護シールドにソードで火起こしするぞ」

 トモは心の中で小さく悲鳴を上げ、黙った。

「……それはな、待ちの姿勢だ」

 ユチナが何か言う前に、バーガーが続けた。

「全ての試合で、必ず先手を相手に譲ってるよな?」

 ユチナは頷いたが、反論した。

「でも、どんなフェイントも力技も、通じていませんでしたわ。そこが隙なんて」

「確かに、何をしても防がれる」

 バーガーが遮り、続けた。

「だから、手を抜く」

「訳がわからないですわー!」

 ユチナが両手をあげ、降参した。

「八割だ。八割の力で攻め続けて、相手をそのスピードに慣れさせる」

「……それで途中から全力を出すんですわ? そんな程度でなんとかなるんですわ?」

 バーガーはニヤつきながら、首を横に振った。

「いいや、それだけじゃ足りねえ」

 バーガーは、どこまでも愉快そうに笑う。いたずら小僧のように。

「だから必殺技を作る」

「必殺技……おフェンシングビームでも出すんですわ?」

「……ドアホ」

 ソードが振り下ろされ、ユチナの頭から白百合が舞った。

「あだっ!?」

「必殺技は、顔面狙いの上段突きだ」

 ユチナが衝撃から立ち直ったのを確認してから、バーガーが続ける。

「それだけをひたすら練習し続けて、他の技より二割増しで早くするんだ。そうすりゃ、八割の力に慣れた相手からすりゃ突然」

 パン、と手を打った。

「一、五倍の速さの一撃が飛んでくる、ってわけだ」

 その秘策にユチナは……首を傾げた。

「八割で、二割増し……一、五倍……ですわ?」

 大きくため息を吐き、お手上げのポーズをしてから、バーガーは剣を構えた。

「……いいから、まずはバレずに八割の力で戦えるように練習するぞ」

 理解を諦めたユチナも応じた。

「この作戦で止めをさせなきゃ、もう勝ち目はねえ。死ぬ気でやるぞ」



 練習の成果が、発揮される。

 ひたすらに練られた顔面狙いの上段突き。

 八割のスピードに目が慣れてしまったヤギューインは、驚愕に目を見開く。

「ですわぁあああああ!!!」

『いけぇええええええ!!!』

 試合最初の渾身の一撃は、フェイク。

 今度こそ、全身全霊、全力の刺突が放たれる!

 足が踏み込まれ、腕が伸び、剣先が仮面に迫り、そして――。

「――ッ!」

 一ミリ手前で止まった。

「うそ、ですわ……」

 会場から、音が消えた。

 もうおしまいかと思われた一年生の凄まじい一撃と、それすら超える最強の女。

 神がかった反応で上体を反らしたヤギューインは、素早くバックステップで距離を取り、身構えた。

 だが、追撃はなかった。

 少女は、突きを放った姿勢のまま固まり、やがて項垂れた。

 少しして、観客席から拍手がパラパラと鳴り始めた。

 庶民級の一年生が見せた、予想以上の健闘に、誰もが感じ入るものがあった。

 ヤギューインは何か言いかけ、やめて、相手の関係者席を見た。

 おさげ髪の、撮影機材を担いだ少女が、撮影を忘れて呆然としていた。

 ヤギューインは首を振り、剣を構えた。

 相手を見据える。

 対戦相手の少女は、握っていた剣を、手放した。

 最強の女は寂し気な目をして、小さく呼吸し、介錯するため踏み込んだ。



 初めて彼女が剣を握ったのは、彼女に姉が出来てすぐだった。

 初めてのおフェンシング。一戦、いや、一合で、彼女はその魅力に引き込まれた。

 以降、暇さえあれば練習し、動画を見て、また練習した。

 中等部一年に上がる前に、彼女は自らの姉さえ凌駕した。


 一年の夏、初めての全校おフェンシング大会は、彼女にとって非常に楽しかった。

 常に勝つか負けるかギリギリで、試合の中で成長し、運も味方につけ、奇跡的に優勝をもぎ取った。その時の気持ちは、胸の奥に刻まれている。

 二年生になり、運に頼らずとも、実力で勝てるようになった。ひやひやするような試合もあったが、稀だった。実力の向上が、嬉しかった。

 三年生になった時、気づけば、周りには誰もいなかった。一撃、二撃、殆どの試合が、それで終わった。打ち合いになった試合など、決勝だけだった。

 四年生の冬。全ての試合が一撃で終わった。

 ここからだった。彼女が相手に先手を取らせ、実力を出し切らせ、見せ場を作ってから、一撃で倒すようになったのは。

 試合を放棄されることもあった。戦う前から、相手が諦めた目をしているのを何度も見た。始まった時は気合に満ち溢れていた相手が、終わるころには絶望し、おフェンシングを辞めてしまったことすら、あった。

 最後に苦戦したのは、全力を出したのは、負けると思ったのは、いつか。

 楽しいと思ったのは、いつか。



 今回こそ、この相手こそ、と、思いもしたが、ダメだった。

 予選で、あそこまで追い込まれてなお、あの瞳をしていた少女ならば、と。

 踏み込み、ちょうど百点満点の突きを構える。

 そして――。

 自分の眼前に、剣の切っ先が迫るのを見た。

「――」

 思考が加速する。

 相手は諦めていたはず。関係者席の少女も、負けを認めていた。そもそも、剣は手放したはずでは? 視線だけ下に動かす。相手の右足が上がっていた。

 彼女は理解した。剣を手放したと見せかけ、蹴り上げて掴んで、突きを放ったのだ。

 つまり、全て、罠。

 視線を上げた。

 切っ先と、燃え盛る少女の瞳が、見えた。

「ですわぁああああ!!!」

 赤い薔薇が、舞い散る。



 夜、誰もが寝静まったころ。中庭に、ユチナの姿があった。

「どうしてこんな時間に、こっそり出てきたんですわ?」

『眼鏡に知られねえためだよ。敵を騙すにはまず味方から、ってな』

「なるほどですわ」

 ユチナは、完全に理解していない顔で頷いた。

『……まあ、いいや。昼に教えた作戦、ありゃ半分嘘だ』

「…………嘘ですわ!?」

『半分な。多分、いや、確実にあれだけじゃあ倒せねえ』

 固まったユチナに、ピースサインのスタンプが投影される。

『そこで、二つ目の隙だ』

「二つ目の、隙ですわ……?」

 ユチナには、てんで見当もつかなかった。

『先手を譲って受けきり、相手が諦めてから、必ず一撃で決めていた。そうだな?』

 頷く。

『弱いと思わなかったか?』

 考える間もなく、首を横に振った。

『いいや、弱い。弱すぎる。あいつならもっと強く、速く、美しく突けるはずだ』

 少し悩み、ゆっくりと首を縦に振った。

『あいつはな、百点満点ピッタリの突きを放ってんだよ。全試合そうだ、間違いねえ』

 それが何か、と首を傾げかけ、ユチナは気づいた。

「……必ず同じ百点満点の突きなら、反応できなくてもタイミングさえ掴めばカウンターを決められる、ですわ」

『その通り』

 頷く令嬢のエモートスタンプが浮かぶ。

『だが、こいつを外したらマジでもう終わりだ。だから、眼鏡も利用して、とことんまで油断させて、極限まで成功率を高めさせてもらう』

 ユチナの理解を待ってから、バーガーは尋ねた。

『卑怯だと思うか?』

「……一つ、何事にも正々堂々挑むべし」

 ユチナは俯き、スカートのポケットを握ろうとし。

「一つ、何事にも全力で挑むべし」

 耐え、前を向いた。

「これは、勝つための、全力ですわ」

 夜の中庭に、悪だくみする猫ちゃんのスタンプが投影された。

『こっからは秘密の、演技と足技の特訓だ』



 ヤギューインの透明な顔面保護シールドに、ユチナの突きが弾けた。

 確かな手ごたえと共に、大輪の薔薇が舞い散る。

 ユチナの剣は、努力は、バーガーの策は、ヤギューインに届き得た。

『なんということだぁあああああああ!!! 庶民級が、一年生が、あの、ヤギューイン選手に一撃を入れたァあああ!!!』

 実況が声を荒げ、観客席から悲鳴とも喜びともつかぬ叫びが溢れた。

 まさかまさかの展開に、会場のボルテージがマックスになる。

 解説のお嬢様すら、興奮を隠せない。

 そんな中、ユチナとバーガーの心だけは、冷え切っていた。

『これは、これはすごい快挙ですよ! ヤギューイン選手が攻撃を受け。ましてやバーを赤に変えるなんて。何試合ぶり、いえ、何年ぶりでしょうか』

 そう、ヤギューインのバーは、赤になった。

 消えては、いない。

『……化け物が』

 ヤギューインの頭上に浮かぶ、ほんの一ミリ残った赤い線。

 ユチナの一撃は、ヤギューインの顔面を捉え、しかし、ごくわずかに逸れていた。

 何故か。

 あの瞬間、あの一撃にすら反応し、ヤギューインが顔を反らしたからだ。

「――ッ! ですわぁ!」

 追撃を狙うユチナ。

 しかし、ヤギューインは目にも止まらぬ速さで後退し、距離を取った。

 ユチナは追おうとし、辞めた。

『そうだ、それでいい。焦るな。掠らせるだけでいいんだ』

 油断なく構え、下がった相手を睨む。

 その背筋に、うすら寒いものが走った。

 本能が最大級の警鐘を鳴らす。

 何故なら、追い詰められたはずの最強の女は、かすり傷でも負けるはずの女は――。

 ――笑っていたからだ。

「たのしい」

 ヤギューインは笑顔で、一瞬で距離を詰めてきた。

「――で!?」

 刀身が、僅かにでも身体に触れれば負けるような、そんな極限の状況で、躊躇いなく踏み込み、仕掛けてくる。自分が攻める側だと、無意識のうちに考えてしまっていたユチナは、反応が遅れる。

「すわッ!」

 剣を横に振りながらバックステップした。次の瞬間、その剣をくぐるように、詰めてきていたヤギューインの顔が、下にあった。

「――ッ!?」

 蹴りを出す。ヤギューインが離れる。

「っ!?」

 助かった、と思う暇もなく、蹴った足から白百合が舞い散った。

『意味が分かんねえぞ!?』

 左上の数値を確認したくなる気持ちを抑え込み、前を向く。予想通り、離れた相手は既に踏み込んできていた。

 刹那、無数の選択肢が脳裏をよぎる。

 選んだのは、前進!

 相手は飛び出した後、急には止まれないはず。なら、剣を当てるだけでいいなら前進するべき。そのような理屈が行動した後に浮かんだ。

 実際、ヤギューインは止まらず、ユチナの間合いにとびこんだ。

 小刻みに、当てる事だけを考えた剣捌きを繰り出す。

 ヤギューインは――。

「良い判断だ」

 ――全てを紙一重で躱し、刺突と体当たりを打ち込んだ。

 それを理解する前に、ユチナはフィールドを囲う透明な壁に叩きつけられ、一拍遅れて薔薇の花びらを散らした。


 五。

 ホロスクリーンに、大きく数字が表示される。

 ユチナは動かない。

『……』

 バーガーは、悩んだ。自分がユチナを動かせば、KO負けは避けられる。

 四。

 観客席から、とめどなく応援が降り注ぐ。

 だが、それをして、ユチナは、何を思う?

 三。

『起きろ、起きろユチナぁあああああ!!!』

 バーガーは、信じた。ユチナは――。



「……お姉さま?」

 姉の顔が、離れる。

「ユチナちゃん、私――」



『――! ――、――!?』

 何かが、聞こえたような気がした。

 しかし、もう何も聞こえない。

 ユチナの目には、ヤギューインしか映っていなかった。

 剣を構える。重心が、しなりが、全てわかった。

 筋肉の動き、追従する関節。何もかもがはっきりと理解できる。

 相手の目線、汗、呼吸。その意味が、見える。

 足が地を蹴る。滑らかに体重が移動する。想像した通りに腕が動き、突きになる。

 それは、一切の無駄がない、彼女が出せる究極の突きで――。


 その全てが、ヤギューインには見えていた。

 伸びる腕、近づく剣先。

 鈍化した時間の中で、全て認識し、対応が決まる。

 まず自らの剣で、相手の剣を上から叩く。

 その反発力を使えば、相手よりコンマ一秒早くトドメの突きを顔面に入れられるはずだ。

 勝利への道筋をその目に焼き付けたヤギューインは、行動を開始する。

 想定通りに迫ってきた剣を、想定通りに上から弾き――。

「――なるほど」

 想定外に、ユチナの剣が折れた。

「良い剣だ」

 得られたはずの反発力は得られず。

 ヤギューインは、折れた剣を受け入れた。


『勝ったのはぁああああ!!! ユチナ選手だああぁぁぁあああああ!!!!』

 しばらくして、耳に戻ってきた音に、ユチナはぽかんと口を開けた。


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