最終話 超絶美幼女ボディRIAMUちゃん Aパート
頭が、ぼんやりとしている。今まで何をしていたのかが思い出せない。確か、幼女にされて、異世界に飛ばされて、彼と出会って、旅をして、そして、そして。
「あああああああああああああ!!」
リンは叫び、跳ねるように上体を起こした。慌てて周囲を確認すると、そこは異世界に落ちる直前にいた、ベッドと姿見と扉しかない白い部屋だった。そこで、姿見を見たリンは、自分が元の男子高校生に戻っていることに気づき、混乱しながら全身を触った。
「夢、なわけねえよ……戻ったのか?死んだから……」
数多の触手を引きちぎり、切り裂き、しかし最後は巨大な口に飲まれ……リンは記憶に残る最後の光景を思い返し、腕に爪を立てた。少なくとも、あれで生きているとはリンには思えなかった。
「おおおお!目を覚ましましたな!」
リンが現状について考察しようとした時、扉が開き、見覚えのある白衣の男が現れた。
「いやはや、あの時と同じように、今度は突然降ってきて驚きましたぞ!直ぐに手当てをして元の身体に戻させていただきましたが、いやーなかなか目を覚まさないので心配していたんですぞ?」
男はまくしたてるように説明した。その顔は、心配したという割には興奮気味だった。
「なあ、リアムはどうしたんだ?」
リンは、まず一番気になっていたことを尋ねた。無事なのか、どうなのか。不安と緊張で鼓動が早くなるのがよくわかった。
「ああ、ボディですな。あれは損傷が激しかったので修理しておりますぞ」
頷きながらの男の答えは、少しずれていた。たまらなくなったリンは、やや強めにもう一度聞いた。
「AIの方だよ!えっと、自動運転用及び幼女AIの!」
「ああ、あっちの方ですか」
男はふむふむとまた頷き、当たり前のように言った。
「あれの記録を確認したのですがな。あまりにもボディ保有者の方に危険な行動が多かったものですからな、処分しておきましたぞ」
何を言われたのか理解できなかった。いや、理解したくなかった。
「おやおや?もしかしてあのAIの性格を気に入られていましたかな?」
男が何か言っているようだが、リンの耳には入っていなかった。処分。処 分。
「でしたらこれをお勧めしますぞ!これはRIAMUちゃんと全く同タイプの会話用AIでしてな、このようにすると……」
黙り込んだリンをどう勘違いしたのか、男はリンの目の前で、楽し気にデバイスを操作した。すると、リンの目の前に、見覚えのあるピンク髪幼女の顔が、立体映像で映し出された。
『初めまして、RIAMUちゃんは会話用及び幼女AI、RIAMUちゃんです』
この一週間何度も聞いた声が、自分だった顔から、目の前で発せられた。その事実がリンの脳に染み渡ると、心の奥底から黒く淀んだ、暗い昏い感情が溢れ、視界が歪み、平衡感覚が失われ、ついには体から黒い靄として溢れ――。
「美幼女パンチ!」
寸前、闇に落ちかけたリンの意識を、元気な声が救った。弾かれるように声の元を向いたリンの前に、ピンク色の髪をショートボブに整え、女児女児した服を着て、赤いランドセルを背負った美幼女が、白い壁を拳で突き破って登場した。
「り、り……」
「美幼女キック!」
現れた美幼女は、唐突に跳び蹴りを放ち白衣の男を蹴り飛ばし。
「美幼女チョップ!」
趣味の悪い立体映像を吐き出すデバイスをチョップで破壊した。
「リアム!」
それはまさに、我らの幼女、美幼女だった。
「RIAMUちゃんは超絶美幼女シリーズRIAMUちゃんに搭載された自動運転用及び幼女AI、あなたと旅したRIAMUちゃんです」
超絶が付くほどの美幼女は、ドヤ顔で名乗った。
「それで、いったいどうなってるんだ?」
リンの声は鼻が詰まっているようだったが、それが先ほどまで感極まり泣いていた所為だということは、リンのプライドに関わるため描写しないでおく。
「あちらをご覧ください」
言われた通り、幼女の手が指す先に目をやったリンは、彼女が登場する際に打ち砕いた壁を見た。正確には、壁の奥を見た。そこにはあるはずの通路や部屋ではなく、黒紫色をした謎の空間が広がっていた。
「RIAMUちゃん目覚めたらあそこでぷかぷかしていたんです。リンさんは何故かいませんし、どうしたものでしょうと浮かんでいたら、リンさんの気配がしたので泳いで向かってみたところ、見えない壁に当たったのでパンチを放った、というところです」
「……なるほど」
なるほどと言いながら、別に何か理解したわけではない。それを今から考えるところなのだ。リンはRIAMUちゃんの証言も合わせ、顎に手を置き首を傾げて予想しようとしたところ、黒い霧になって消えていく白衣の男とデバイスが偶然目に入った。
「……少なくとも帰ってきたわけではないらしいな」
自分で建てた仮説に、リンは安堵と失望が入り混じった感情を抱いた。
百聞は一見にしかず、という言葉がある。また、馬鹿の考え休むに似たり、というものもある。とにかく、悩んでも何も分からなかった二人は、行動を起こすことにした。二人の目の前には、部屋に唯一の扉がある。
「これで開けてみて何もなかったら、いよいよ全部壊すしかなくなるな」
「腕がなりますね」
何故かそうなって欲しそうな、楽し気な幼女を努めて無視し、リンは一つ大きく呼吸してから、扉を開いた。
「そうです、私こそが邪神だったのです。驚きましたか?」
次の瞬間、目の前には人を見下したような邪悪な笑みを浮かべるクリフトがいた。周囲は、砂の大地が広がる、封印の島だ。そしてリンは思い出した。そう、魔王と和解し邪神復活を阻止した二人の前に、ついに本性を見せたクリフトが現れ、魔王を洗脳し――。
「微幼女デコピン!」
「いでっ!?」
リンの頭部に軽い衝撃が走り、植え付けられかけていた偽りの記憶が消え去った。
「そして、超絶美幼女ビーム!」
「ぐわあああああ!?」
リンに軽いデコピンを放った幼女は、すかさず必殺技で偽クリフトを吹き飛ばした。後に残ったのは、幼女と男子高校生の二人と、黒曜石の柱があった位置に開いた穴だけだった。
「た、助かった」
リンは地味に痛む額を撫でながら、礼を言った。RIAMUちゃんは笑顔で首を横に振り、答えの代わりとし、口からは別の疑問を放った。
「それにしても、主任の次は偽クリフトさん……どういうことなんでしょう?」
首を傾げる幼女に対し、リンは何かが分かってきていた。
「……多分、次にいけば確定できると思う」
「流石ですリンさん。次は、あれですよね?」
幼女の瞳は、ぽっかりと開いた穴に向かっていた。
黒い霧に変わって消えていく両親を一瞥もせず、リンは答えを出した。
「わかった。ここは多分邪神の腹の中で、俺を嫌な気分にさせてその負の感情のエネルギーを吸収する、とかそんなやつだ。的確に俺が嫌なシチュエーションを選んでる」
リンはリビングのソファーに座った。その横に座り、RIAMUちゃんが頷く。
「なるほど、そういうのありますよね。でも、どうすればいいんでしょう?やっぱり全て壊せば出られるでしょうか?」
脳筋幼女が首を傾げ、リンの顔を下から覗き込んだ。
「いや、アレだろ。負の感情を敵が求めてるんだから」
「だから?」
幼女のオウム返しに、リンは立ち上がり、部屋の隅に行き何かを手に取り、突き付けた。
「楽しめばダメージを与えられるんじゃないか?」
幼女の視界一杯に、ゲーム機が広がっていた。
「ああー!!大人げない!!」
叫び、立ち上がる幼女。目の前には大きく『負け』の文字が立体映像で浮かんでいる。それを横目に、肩をすくめたリンは挑発するように聞いた。
「じゃあ、手加減してやろうか?」
「RIAMUちゃんは幼女の生態を高度に再現しています!下手な手加減は割と気づいて拗ねます!敗者の権利でゲームチェンジです!次はトランプで神経衰弱にしましょう!」
「おま、負けると毎回AIガン有利なゲームばっか選びやがって!AIに記憶力で勝てるわけねえだろ!」
「リンさんだって初見殺しのゲームばっかり選ぶじゃないですか!というかなんで楽しむために始めたのに対戦ゲームになってるんですか!本末転倒ですよ!」
「お前が言い出したんだろうが!タケボディの力見せてやるとか言って!」
「ああ~?うっかりして思い出せませんね~」
「おまッ!……ふぅ」
リンは床に直置きしていたペットボトルのジュースを一気飲みし、大きく息を吐いた。
「……次は街づくりのゲームにするか」
「いいですね」
冷静に戻ったリンがデバイスを操作し始めると、RIAMUちゃんもそのすぐ隣に腰を下ろし、肩と肩がぶつかった。その時だった。
「やあ、やっと見つけられたよ」
リビングの壁が砕け、クリフトと全く同じ顔をした男が顔をだしたのだ。クリフト、ではない。それは二人にはすぐわかった。その男は笑顔だったが、その笑顔から知性が感じられたからだ。
「やれ!リアム!」
「アイアイさー!」
一切の躊躇なくリンが指示し、一瞬の迷いもなくRIAMUちゃんが飛び出した。
「またクリフトさんの偽物ですか!バラエティがないですね!」
「ちょ、違うよ!僕は……そう、神だよ!」
「神を自分から名乗るやつに碌な奴はいないんだよ!」
男の話を聞くことなく、近接戦を仕掛ける幼女と、その辺りにあるものを見境なく投げつけ続けるリン。その猛攻を躱しながら、男はため息を吐いた。
「はぁ……悪く思わないでよね」
ぐちゃぐちゃになったリビングの床に、二人は光の輪のようなもので胴体を拘束され正座させられていた。目の前には、軽く息を切らしたクリフト似の男。
「僕が神って呼ばれてる存在だってことは、理解してくれたかな?」
「……はい、すいません」
「はい、申し訳ありません」
「わかってくれたならいいよ。それと、君たちが何を気にしているのかは分かっているよ。この顔のことだろう?」
男は、自分の顔を指さした。シンクロしたように同時に頷く二人。
「僕がクリフト君に似てるんじゃなくて、クリフト君が僕に似てるのさ」
「クリフトさんを知っているんですか?」
男は頷いた。
「今、クリフト君がどこにいるかもね」
そう言うと、男は語り出した。
あれは、今から六百年くらい前のことだった――。
「なんでそんなに戻るんだよ!早くクリフトのことを教えろよ!」
「ちょ、君ねえ!?今、創作だったら僕の声がナレーションか地の文になってるところだったよ!」
「何わけわかんないこと言ってんだよ!」
「クリフト君のことが早く知りたいのは分かるけど、六百年前のことが必要なんだよ!黙って聞いていてくれよ!」
リンが不承不詳とむすっとした顔をしながらも黙ったので、男は一つ咳払いをしてから、また語り始めた。
……ごほん。あれは今から六百年前のことだった。僕がいつものようにこの世界を見守っていると、君たちが邪神と呼んでいるものが別世界から侵入してきた。あいつは、いうならば、知的生命体の負の感情を食べる宇宙怪獣さ。まあ僕も、正の感情を頂いてるから、似たようなものなんだけどね。話を戻して、僕の普段いる場所、紳界と言おうか、そこでまず僕と邪神は戦った。あいても中々やるやつだったけど、僕の方が強かったから、瀕死にまでは追い込んだんだ。すると、あいつはなんと、紳界から人間の世界に受肉したんだ。そんなことをすると不滅の存在では無くなってしまうから、普通はやらないんだけど、とにかく受肉した邪神は地上で暴れまわったわけだ。
僕は困った。僕は僕と同じような存在と結んだ古の盟約で、地上に直接手だしすることは禁じられてるんだ。どうしたものかと頭を悩ませていたら、邪神が無理やりこの世界に侵入してきた余波で、君達の世界とこの世界をつなぐ穴が開いてしまって、一人の男が落っこちてきてしまったんだ。そう、勇者と呼ばれた男さ。彼を見て、僕は思いついた。こいつに解決してもらおう、ってね。という訳で、僕の元に呼び寄せて事情を説明したら、快く受けてくれたから、ありったけの力を彼と彼の装備に込めて、彼を地上へ送った。
その旅の詳細は、勇者伝説でも読んでくれればいいんだけど、彼でも邪神を滅ぼすことは出来なかった。地上で暴れまわって負の感情をため込んで、僕が想定していたより強くなっていたのさ。仕方がないから、僕は盟約を破って邪神を封印したんだ。その時、千年くらいかけて、邪神の腹の内側からネチネチ力を削り滅ぼす役目をうけたのが、僕さ。
僕を切り離した僕は、邪神の眷属に変わってしまった人と獣を一か所に纏めて、そこの大地ごと別の次元に隔離し、絶対に人間には砕けない強力な封印を施したたんだ。今は魔界って言われてるね。そこまでやって、盟約を破った代償として、一時的に存在を抹消された。だけど、実はそれだけじゃなかった。千年後、眷属と化してしまった人や獣から完全に邪神の影響が取り除かれたとき、魔界が戻ってくるように設定したんだけど、その時役目を終えた封印の力が、人の姿に形を変えて、魔族と人族が争いにならないよう調停する存在になるようにしていたんだ。だけど、封印は想定外の時間に食い破られた。あのカラス、封印を逃れた邪神の魂の欠片が、眷属達に染み渡っていた瘴気を再吸収して力をつけたあいつが、魔族達を唆して、更に自分の力を使って封印を破壊したんだ。その所為で、調停者は歪な状態で地上に降り立つことになってしまった。知識もなく、使命も忘れ、力の使い方も覚えていない、そんな状態でね。
もうわかっただろうけど、それがクリフト君だったんだ。勇者の首飾りが反応したのは、彼が勇者だからじゃなくて、彼が神の一部だったからさ。
「クリフト君は僕でもある。邪神に飲み込まれた時、僕の元に帰ってきた。ただ、損傷が激しくてね。君達の知っている、偶然生まれたバグのようなクリフトという人格は、もう……」
男はそこで言葉を切った。リンは俯き奥歯を噛み締め、しかし涙は流さなかった。既に覚悟はしていたのだ。丸のみにされた二人とは違い、クリフトは胸を貫かれていた。だからこそあの時、触手の海へ我が身を省みず突っ込んだのだから。RIAMUちゃんは、機械的な無表情だった。しかしそれが、どんな表情よりAIの内心を表しているのかもしれない。
「この話には続きがあるんだ」
二人の感情を慮り、しばらく待ってから男は口を開いた。
「僕の残したものはそれだけじゃなかった。一度穴が開いてしまい、脆くなったこの世界と勇者の世界の壁を利用して、ある細工を施していたのさ。もしも魔界の封印が無理やり砕かれたなら、その時生まれる歪を利用して勇者の世界から、強く、優しい心を持った、最も適した人間が落ちて来て、王都に向かうようにしたんだ」
男は、じっと二人の瞳を見つめていた。
「それが、君達さ」
「君達には二つの選択肢がある」
二人が自分の言葉を完全に飲み込み、落ち着いたのを確認してから言った。
「一つ目は、僕から力をもらって邪神と戦うっていうもの。こんな僕でも、六百年くらい邪神からちまちま削った力があるからね、かなり君を強化できる。メリットは、この世界を救ってクリフト君の仇を討てるし、僕が完全復活するから元の世界にも帰れる。デメリットは、邪神は瘴気も垂れ流してないし理性も失ってるし魔族を洗脳もできないくらい弱体化してるけど、五割くらいの確率で負けて死んじゃうってことだね」
二人は、何も言わずに続きを待った。男は頷き、続けた。
「二つ目は、このまま元の世界へ帰るって選択肢。君達に渡す分の力を使えば、それくらいできる。メリットは、まあいいよね?デメリットは、それに力を使うから、九割がたこの世界は邪神の手に落ちて、負の感情を生み出す牧場になるってこと。これから生まれる命も、もう生まれてる命も、全ては痛めつけられ、弄ばれるためだけに消費されることになる」
口調とは裏腹に、男の表情は真剣そのものだ。
「別に君の世界じゃあないからね、君達に責任はない。そもそも意思の確認もされずに巻き込まれただけなんだ。僕としては今までの働きで十分満足だし、これ以上付き合いきれないって言われても当然だと思ってる。僕は君達がこの世界にくる羽目になってしまった元凶だ、本当は選択肢を提示なんてせずに、送り返すのが筋っていうのは、分かってる。でも、僕は神とか呼ばれてるけど、そこまで思い上がってるつもりはない。地上の子たちに感情移入しまくっちゃってるんだ。だから君達に一つ目の選択肢を提示した」
男は、頭を下げた。
「どうか、僕たちを助けて下さい」
「頭を上げて下さい」
RIAMUちゃんは立ち上がり、男の肩にそっと手を置いた。いつの間にか、光の輪による拘束は外れていた。
「RIAMUちゃんは、この世界に来てから生まれたようなものです。元の世界のデータは大量にインプットされていますが、実際に起動したのはこの世界が最初で、走ったのも、跳んだのも、笑ったのも、歌ったのも、人と喋ったのも、旅をしたのも、全部この世界で初めてやったんです。ですから、なんというか……とにかくRIAMUちゃんはやりますよ!」
RIAMUちゃんは、超絶美幼女は笑って胸を叩いた。
「ですが、リンさんだけは――」
「それ以上言うなよ」
リンはRIAMUちゃんの小さな肩に手をかけ、それから立ち上がった。
「俺だけ帰るったってそれにも力は使うだろ?その分成功率は下がるよな。あと俺だけ帰るときは頭外すんだろ?世界を救う英雄が首無し幼女じゃホラーだろ。それにリアム一人で送り出したら、邪神を滅ぼそうとして、間違って世界を滅ぼすかもしれないからな」
リンはへらへらと笑っていたが、幼女の肩に置かれたその手は震えていた。
「でもリンさん本当は――」
「死ぬのは、すげえ怖えよ。でも絶対さ、後悔する。リアム一人残して帰ったら、一生後悔して過ごすことになる。それはわかる」
リンは幼女の肩から手を離し、震える拳を強く握りしめ、先ほどのRIAMUちゃんを真似するように強く胸を叩いた。
「俺も行くよ」
「リンさん……」
「ま、といっても俺が行ったところで戦うのはリアムだからな!」
「はい!RIAMUちゃんにお任せです!」
笑い合う二人を見て、男は偽悪的に悪い笑みを浮かべた。
「よかったよかった!これで君達を洗脳するのに力を使わないで済んだよ!」
「おい!いい話だったのになんで水差すんだよ!」
「ははは!じゃあはいこれ」
リンの突っ込みを無視し、男は二人の肩に手を置いた。その瞬間、すさまじい力が輝きとなって流れ込んできた。
「あとこれは、お守りかな?」
溢れ出す力に困惑している幼女の胸に、小さな光が飛んで染み入った。
「それじゃあ、頼んだよ。いってらっしゃーい」
そして、二人に何も言われないうちに、男は指を弾き、次の瞬間には二人の姿はどこにもなかった。
「さて、あとは搾りかすにも働いてもらって、それくらいかな?」
一人しかいなくなったリンの家のリビングで、男が手を水平に振ると、勇者の装備が目の前に現れ、どこかへ飛んでいった。それを見送り、男は傷だらけになってしまったソファーで横になった。
「うん、大分つかれたね。少し、休まないと……」
男は目を瞑った。
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