ただ、それだけであった
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王妃の妹とその娘が半死半生で地下牢に投げ込まれた。
死なない程度の傷を負い、処刑のその日まで生かすだけの治療。
拘束された状態で自死する勇気などもたない2人は、痛みをもってその罪を償わせる。
拷問のために潰された手指。
全身に与えられた鞭によるミミズ腫れ。
気絶すれば掛けられる塩水。
憔悴しきった彼女たちからは……悲鳴すらあがらなくなった。
⁂
使用人たちは全員が
公爵家の令嬢であり
その罪は使用人の家族や身元保証人にまでおよぶ。
誰ひとりとして弁明出来る者はいない。
大なり小なりの罪を犯しているからだ。
証拠は、深い眠りについた令嬢の残した日記帳。
牢に繋がれた囚人たちの前で朗々と読まれる
使用人たちは自身の犯した罪と向き合い、後悔…………することはなかった。
自身の犯した罪の重さを誰ひとりとして理解していないからだ。
執事が、メイドが。
口を揃えて訴える。
執事長が、メイド長が。
そうするように指示した。
自分たちは仕事としてその指示に従ってきただけだ、と。
そのような理由で逃れられる罪など、この世には存在しない。
公爵令嬢を虐待し自死にまで追い込んだ罪で、執事たちは鉱山の重労働
一番軽い使用人たちでも、農奴として残りの一生を償いに費やす。
一番軽い理由。
それは、採用されてまだ半年だったからだ。
しかし、令嬢が虐待されていたことを知ってもなお、口を
⁂
縁座や連座になった者たちもまた、使用人たちと同じ道を辿る。
使用人たちは極寒地や極暑地に送られたが、同罪となった彼らは寒冷地や熱帯地へ送られた。
身元保証人たちは深く後悔する。
自分たちは何を見て何を保証したのかを……
自問する。
家格だけをみて、当人を知っていたのかを……
導かれた結果はただひとつ。
まだ12歳の公爵令嬢が、自ら毒をあおった。
………………そこまで追い詰められていた。
無責任な大人たちと、無関心な大人たちによって。
⁂
年端もいかぬ幼な子は厳しく芸を仕込まれ、
愚かな大人たちの被害者であるものの、幼なさを理由に罪から逃れることは出来ない。
自ら毒をあおった令嬢は、幼な子たちと同じ年齢ですでに虐待されてきたのだから。
そんな酷い環境下でも令嬢が生かされてきたのは、ひとえに当主である公爵の意志が確認出なかったから。
…………ただ、それだけであった。
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