第5話 幸せになる!?
超序盤に登場する悪役吸血貴族の俺が原作ヒロインと結ばれるなど絶対あってはならないことだ。
登場人物はすべからく物語に奉仕すべきなのである。
そうすることによって初めて物語は美しく輝き始めるのだ。
サーベ・ムチョルク
「すいません! 僕にはあなたを抱き締める資格などないのです! なぜならどれだけ血を吸うことを我慢したところで僕が吸血貴族であることに変わりはないのですから!」
そう言って、俺はミッシャー・オルゼン侯爵令嬢の体を自分から強引に引き離した。
すると、ミッシャー・オルゼン侯爵令嬢はほとんど泣き声でこんなふうに訴えてきたのだ。
「なぜそんなことをおっしゃるのです? わたくしはあなた様のことを・・・・・・愛しているのですよ! そのことをあなた様はすでに知っていらっしゃるのになぜそんなことを言うのですか? その言葉はわたくしにとっては死ねと言われているのと同じです! あなた様に愛されないならばわたくしにはもう生きていく意味はありません! いっそあなた様の腕の中で静かに死んでしまいたい!」
原作では俺は彼女に生まれてはじめての恋をして告白し、冷たく拒否され、無理やりに血を吸って自分のものにすることになっているのだ。だからこの状況はどう考えてもおかしいのである。
おそらくは俺が女の血を吸わないと決めたことが影響しているのだろうが、それだけのことであれだけ嫌われていたヒロインにこれほどまでに愛されることになるのだろうか?
もしかしたらこれもあの聖女様の力なのかもしれない。
俺がそう思っていると、ナータ・キーユが俺のすぐ近くまでやってきてこう言った(どうやらこの聖女様が見えるのはここにいる者の中では俺だけであるらしい)。
「そうやって人間の女に熱を上げているあなたを見ているとあたくしとっても興奮します! だっていずれその女を捨ててあたくしと一緒になることは決まっているのですから! そうやってあたくしのことを焦らして焦らしてあなたも興奮しているのですね! わかりますよ、その気持ち! あたくしも変態ですから! キャーッ! また聖女なのに変態告白しちゃった! 恥ずかしいけど、気持ちいーっ!」
どうやらすべては俺の完全な勘違いだったようだ。
聖女様の力でないとすれば、この今の状況を作り出したのは俺自身だということか。
そう考えた次の瞬間だった。
――幸せになりたい。
突如として俺は強くそう思ってしまったのである。
その結果、この物語が崩壊することになったとしても!
気がつくと、俺はこの物語の主役であるはずの男の前で、この物語のヒロインであるミッシャー・オルゼン侯爵令嬢の美しい
「あなたに告白するのはこれが何度目だろうか? ・・・・・・ミーシャ・オルゼンさん、僕と一緒に幸せになってくれますか? 僕はこの物語の主人公ではないけれど、それでも・・・・・・」
※※※
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悪役吸血貴族に転生した俺の唯一の能力は血を吸った女を自分のものにすること。でもなんか嫌でずっと血を吸うのを我慢してたらすごい痩せ細って毎夜巨乳美女達が心配して吸って吸って言ってくるんだがまだ吸わない。 新田竜 @ragiz
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