この日だけ行事でのジェンダーフリーを叫ぶ自称人権活動家、同業者を討ち滅ぼす
俺の行進を邪魔する同業者は、予想以上に派手な連中であった。
加えて迷惑系
更に特徴的なのがその姿。
ハロウィンであるかの様に無駄にリアル過ぎる人外の扮装、映画用の特殊メイクでもしているかの様な見事な仮装を全員がしている。
仮装の技術は認めざるを得ないが、色々な迷惑系を網羅したような連中だ。
爆竹に限らず、どっかで聞いた事のあるような迷惑被害を出し続けている。
馬車の横転や破壊、花火や爆竹も引火しているのにも関わらず気にもしない。
加えて人数も渋谷のハロウィンの如く、地面が見えないほど大勢いて、その全員が何かしらの迷惑行為をしている。
まだ街の外にいて、城壁やら結界やらで街内部への被害は軽微だが、連中は城壁や結界を破壊し内部で盛り上がろうと企んでいるようだ。
このままでは、街が火の海になりかねない。
なんて迷惑なパリピ達だ。
このままでは、確実にこいつ等の方が目立ってしまう!
俺の花道を邪魔する奴は許さん!
だが幸運でもある。
こんなにも迷惑な連中だ。
排除すれば邪魔者が消えると同時に俺の株も上がる。
一石二鳥だ。
「おい、お前等!」
シュタッと神輿から城壁の上へ移動し、連中に呼びかける。
まずは対話だ。
邪魔な同業者など、即刻排除しても良いが俺はジェントルな男、無駄な血は求めていない。
迷惑パリピ達は俺に気が付き、花火や爆竹をこちらに向ける。
間髪入れず炎やら雷やら光線やらが飛来。
集中したそれらは結界をブチ破り俺のもとへ。新品の服が汚れそうな軌道のものは全て手で叩き落とす。
ただの見掛け倒しだと思ったが、そこそこの破壊力があった。
俺に当たらず城壁に当たった爆竹は爆弾の如き威力を発揮し、雷は城壁を打ち砕いている。
あっと言う間にちょっとしたビルほどの高さと厚さがあった城壁が崩れて逝く。
予想以上に迷惑な奴らだ。
そして対話より血がお望みらしい。
遠慮なく叩き潰してやろう。
「総員突撃!!」
崩れ去る城壁から元の神輿に飛び移ると、信者達に命じる。
「「「オオォっっ!!」」」
珍しく素直に進んで支持を受ける信者達。
その士気は異様に高く、武器まで構えて本気で征く。
もしかして悪名高い迷惑集団で普段から悩まされていたりしたのか?
まあ何であれヤル気があるようで何よりだ。
この勢いで完膚無きまで迷惑集団を叩きのめしてやろう。
信者達は当然の事ながら全裸だが、構うことなく武器を抜いて駆け出す。
魔術師達は呪文を唱え、進路の敵を火球や風の刃で薙ぎ払い、残る敵は先頭を進む戦士達が剣や槍で切り開く。
迷惑集団を成敗するだけかと思いきや、完全に殺る気だ。
と言うか、よくよく見たら相手は仮装集団じゃない。全部本物だ。
パリピ集団はパリピ害獣であったらしい。
群れて迷惑行為をしてくるとは、この世界の害獣は相当厄介らしい。
まあ、害獣と言う事なら手加減抜きで良いだろう。
害獣であろうと俺のパレードを邪魔した事実は変わらない。寧ろ害獣如きが俺よりも目立つとは、許される事ではない。
加えてこっちが仕方なく全裸の野郎共と行進していたのに、害獣共は種族性別を超えて大盛り上がり。
害獣の癖にこの俺よりも充実しているとは断じて許せん。
「“リア充爆発しろ”!」
緑の雷でパリピ害獣共を撃ち抜く。
青やら紫色の濁った炎が咲き誇り、パリピ共を爆砕して逝く。
汚い花火だが、俺にとっては実に美しい光景だ。
爆発に信者達が巻き込まれそうにもなるが、死んでなければ問題あるまい。
その信者達も予想以上に働いてくれている。
例えば信者一号ベルクは、洗練されたデザインの銀の剣に光を灯し、バサバサと一太刀で害獣を斬り捨てる。
いつも文句ばかり言う奴とは思えない働きだ。
伊達に勇者軍所属では無いらしい。
勇者っぽく見えなくもない。まあ、服を着ていればの話だが。
人から逃げたり部下に押し付けたりと情けなかったギルド長のおっさんも、見違えた働きをしている。
その戦闘スタイルは魔法を使わない魔法使いとでも言ったもの。
ベルクの様に武器は勿論、全身に魔力を通して身体強化。主要な武器はスパイクの付いた大盾二つで、それに魔法を付与して敵を殴っている。
殴られた害獣はズタズタに裂かれ潰れと大惨事。一発殴る毎に地形を変え、敵を吹き飛ばす。
巨大なパワーで押せそうに無い相手には、殴った瞬間に盾と敵の間に高出力の魔法を発動。
超至近距離で物理攻撃も伴った兵器の様な一撃を加える。
他の信者達も剣に魔法で八面六臂の大活躍。
駄目駄目な信者達だと思っていたが、中々やるじゃないか。
これは良い信者に化けそうだ。
俺も導く者として負けてられない。
担ぎ手の居ない神輿から飛び降り、俺も戦場へ出陣する。
遠距離攻撃が出来るからと言って、俺の居るべき場所は先頭だ。
あっと言う間に信者達の先頭に躍り出ると、加護に従い力を与える。
「神技“裸体強化”!」
露出教の力が信者達に浸透し、動きが格段に変わる。
「恐れる事無かれ恥じる事無かれ! 汝らの裏表無き良心に従え! 正義は我らに有り!」
一気に更に前へと躍り出ると、回転しながらリア爆を連打。
害獣を炎の花へと変える。
花火や花吹雪も忘れない。
華麗に派手に格好良くパリピ害獣を殲滅して逝く。
早くも街の近くに居た敵は沈んだ。
しかし先に征けばまだまだ大群がいた。
その中心には巨大な黒いゴツゴツのサイの様な鹿のようなドラゴンの様な魔獣。
そしてその上には三メートルを超える黒騎士が居る。王冠の様な物を被り、漆黒のハンマーを手に、マントを靡かせた黒騎士だ。
黒騎士を中心とした一団には人型が多く、街の近くまで来ていた連中に比べて軍隊のように秩序を持って侵攻しているように見える。
『やるな、人間』
静かに、それでいて底から響いて来るような声で話し掛けてくる黒騎士。
『称賛しよう。人の身で良くぞここまで来た。我は【魔王軍四天王】が一柱、【黒の騎士王】サリヴァン・ロード・ゲシュドール。その偉業を讃え、拝謁を許そう』
どうやら相手はただのパリピ害獣では無く、四天王とか騎士王とか名乗るイタイ集団らしい。
確かに見かけはそれっぽいが、今までの手下からして魔王軍四天王や騎士王は言い過ぎだ。
戦闘なんか素人の俺に倒される魔王軍など居るまい。
十中八九、目立ちたいパリピのアピールだろう。
この前のトカゲと言い、詐称が多い異世界だ。
そこまで序盤でポンポンボス級の敵が現れる異世界など、そんな危険な世界があってはたまらない。
と言うかトカゲが正しいとしたら、それこそ昨日の今日で魔王軍四天王が出て来る筈が無い。
しかし、もしかしたらこの世界には過大宣言をする文化がある可能性も無きにしもあらずだ。
過大な作り話はしないにしても、受け答えくらいはしておこう。
「俺はこの世を導く救世主、【露出教名誉司教】にして【全裸の勇者】
そう付き合って言うと憤怒の表情を見せる自称魔王軍。
人の事を散々上から見ておいて、自分が言われるとすぐこの反応とは程度が知れる。
やはりただのイタイ集団だ。
『下等種如きが図に乗るなよ……。そこまで死を望むのなら、我が直々に与えてやろう』
黒騎士も例外ではなく、相変わらず静かだが確実に憤怒している。
やはり大物振りたいだけのなんちゃって集団らしい。
黒騎士は漆黒のハンマーを構えて乗騎から飛び降りると、俺に向かってハンマーを振り下ろした。
空間が歪むほど力と魔力が込められた一撃は、空間を砕き衝撃波で大地を刳りながら真っ直ぐ迫る。
それを俺は大物アピールの為に正面から受ける。
片手に相手と同程度の力と魔力を込めると簡単に止まった。
別に強化しなくても問題無いレベルだ。
しかしその衝撃自体は凄まじかったらしく、俺を中心にクレータが生まれ、衝撃波で何体ものパリピ害獣が吹き飛ぶ。
これは、ただ正面から受け止めるのではなく力を逃した方が良かったかも知れない。
まあ、信者達はまだ後方なので問題ないと言えば問題ないのだが。
寧ろ勝手に敵が吹き飛んで喜ぶべきか?
『なに!?』
黒騎士は自信があったらしいが、やはり大した事ない。
『もはや手加減はしない。“無限鉄槌”!!』
縦横無尽に音速を超えて繰り出される鎚。
実力差を教え込む為に、また片腕で全てを受ける。
受ける度に地は砕け、害獣は吹き飛び、時に消滅すらして逝くが、まだまだだ。
「威勢の割にはそんなものか?」
『人間風情がぁ!!』
攻撃は激しさを増してゆくが、俺へのダメージの蓄積は欠片も無い。
『奥義“冥人貫一”!!』
莫大な魔力を練り上げると、黒騎士は天に鎚を掲げる。
それだけで雲は裂け、天は割れたかのように乱れ瘴気に呑まれた。
天は瘴気に支配され天は荒れ狂い、その余波は雷や嵐として地上へ影響を及ぼす。
漆黒に激しく輝くと言う理解し難い現象を引き起こす鎚は大気を破壊しながら振り下ろされ、受け止める俺の腕との間で凄まじい衝撃が生まれる。
直接当たった訳でもないのにただでさえクレータと化していた大地は更に押し潰され融解、消し飛ばされその空間すらも破壊されて逝く。
天も地も暗い光の溢れるヒビが無数に入り、剥がれ霊気が漏れる。
空間の破れた先は、おそらくは別世界。
この不吉な感じは多分、冥界とか地獄とかそんなやつだ。
黒騎士の力は世界を壊している。
理をもブチ破り、本来繋がってはいけないものを繋いでしまっている。
防いでいる筈なのに被害が留まるところを知らない。
既に黒騎士の周囲にいた人型は焼かれ砕かれ消滅し、街にすら被害が及びそう、いや及んでいる。
いつの間にか信者や街から新たに出て来た連中が結界を張ったり盾を構えたりとして、何とか街の被害が少なくなるよう防いでいる。
何度も破られ吹き飛ばされながらも繰り返し発動する事で何とか持ち堪えていた。
それでも出来るのは防ぐ事だけで、天変地異とすら言える被害が次々に拡がってゆく。
おかけでハロウィン集団も次々と脱落し、殆ど居なくなってゆくが、このままでは被害の方が大きくなってしまいそうだ。
さて、俺も攻めに転じよう。
『なっ!?』
塞がっているのは片手だけなので取り敢えず蹴り飛ばす。
黒騎士はくの字になって吹き飛び、クレータの縁に衝突して新たな窪みを作る。
『な、何とも、無い、だと?』
今回のはそこそこ強かったが、正直なところ女神様の一撃の方がだいぶ強い。
殺意では無く愛情が宿る女神様の一撃の方が強いのだから、やはりこいつ等はどこまでも迷惑な目立ちたがり屋だ。
流石に迷惑が過ぎるのでそろそろ引導を渡すとしよう。
俺が全裸の野郎達と共にパレードをしているのに、女性型も含めたバラエティ豊かなハロウィン集団を率いて邪魔をした奴の末路は一つ。
「“リア充爆発しろ”」
『オノレぇーー!!』
あっと言う間に黒騎士は爆炎に呑まれ、この世から姿を消すのだった。
ふう、邪魔者も消えた事だし、これで本題の凱旋に戻れる。
迷惑集団を処分した称賛も合わせて女神様の耳に届く筈だ。
女神様の俺に惚れる姿が目に浮かぶ。
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