クリスマスは祝日じゃないからクリスマスに遊んでいる奴は基本ニートだと決め付ける自称評論家、失礼な冒険者とオハナシする
何故か人命救助と言う崇高なる目的の為に回復薬を買いに来たのに、人身売買の極悪人と勘違いされると言うとんでも無く失礼な対応を受けた俺であったが、それでも目的は変わらない。
人命第一、怪我人の回復が最優先だ。
「で、回復薬が売ってるのはどこだ?」
「あ、あちらです」
「ヒィッ!」
ただ視線を向けただけで怯える販売カウンターの職員。
本当、碌なやつが居ねえなここ。
いちいち反応していたら切りが無い。
さっさと買おう。
え〜と、財布財布、怪我人の財布はどこだ?
「当たり前のように人の財布を漁るな」
「使うのはコイツだから問題無い。おい、これで買えるだけの回復薬をくれ」
「は、はい」
怪我人の財布ごと料金を渡すと、回復薬二本になった。
財布ごと渡したのに、回復薬って高かったんだな。
怪我人の財布の中が少なかっただけかも知れないが。
何にしろ、自分の金じゃ無いから気にすることでは無い。
「人の財布だからこそ気にしろ……」
おっと、心の声が漏れていたらしい。
さて、治療を始めるぞ。
「失礼な連中に見せつけてやる」
おっと、今度は心の声と肉声を間違えた。
まあ、ここで善良な治療風景を見せつければ奴らも改心して――。
「俺に跪く事になるだろう」
だから何も問題無い。
それを証明するかの様に、早くも本当に怪我人の治療すると理解したからか、俺が集中出来るように失礼な奴らも声を押し殺していると言っても過言では無いレベルで静かになったし、治療が完了したら俺の慈悲深さに心打たれる失礼な態度を反省する事だろう。
まずは絶妙なポーション捌きでギリギリ気絶から覚醒する程度に回復してと。
「ううっ……」
良し、成功した。
後はついでの布教活動しながら完全回復させるだけだ。
「よお、怪我人。生きたいか? 死にたくないか? どうなんだ?」
「し、死にたくない……」
「そうかそうか、そんなお前に朗報だ。ここに回復薬が有る。慈悲深い聖職者様たる俺が用意したクスリだ。これが有れば、お前は死から解放されるだろう。欲しいか?」
「ああ、欲しい……」
「そうだよな。慈悲深い俺は今すぐにでもお前を救いたい。だがな、俺には多くの人々を救うという使命がある。より多くの人々をだ。慈悲深い聖職者様であっても、俺は神そのものではない。救える力は有限だ。この回復薬だってタダじゃ無い」
「そ、そんな……」
「だがそれでも俺はお前を救いたい。だからお前を信じさせてくれ。お前が多くの人々を救うと。俺を信じ、共に多くの人々を救うと」
「あ、ああ救う。貴方様を信じて多くの人々を救う。だから治療を」
「分かった。さあ飲め」
こうして怪我人は無事回復し、同時に服が弾けて露出教徒になった。
ついでに慈悲深か〜い、姿をギルドの連中に見せつける事にも成功した。
だがおかしい。拍手喝采が聞こえない。
不思議に思って直接奴らを見渡すと、何故か青ざめた様子でこちらを見ていた。
それだけで無く、震えているようにすら見える。
「なんで怯えてんだ?」
「……お前が脅したからだろう」
「俺がいつ?」
《ステータスを更新します。
スキル〈脅迫〉のレベルが1から3の上昇しました》
…………。
「一応、詳しく聞こう」
「お前『失礼な連中に見せつける』とか『俺に跪く事になるだろう』とか言っていただろう?」
「ああ、それは確かに思わず心の声が漏れてしまったな。だがそれは慈悲深さを見せつけてやるって意味だぞ?」
「この際言った意味は関係ない。実際にやった事は何だ?」
「慈悲深く怪我人の治療」
「いや、人の財布を奪って回復薬を買っておきながら、恩着せがましく悪魔の取引で入信と引き換えにやっと治療したんだろうが。例え慈悲深く無くとも普通は一発で回復して終わりだ」
くっ、まさか布教活動が仇となるとは。
これでは余計に風評被害でイメージダウンしてしまう。
何とか挽回せねば俺のリア充生命に響いて来る。
そしてこのまま帰れば間違いなく女神様にも文句を言われる。
「こうなったら慈善活動だ。慈善活動で間違ったイメージを払拭するぞ。今度こそ慈悲深い聖職者だと示してやる」
「間違ったイメージなど欠片も存在しないと思うがな。と言うか宣伝の為の慈善活動の時点で慈悲深い聖職者じゃ無いと思うぞ。私利私欲の俗物だろ」
信者が何か言っているが、方針は決まった。
後は活動内容だ。
「慈善活動と言えば何だ? ゴミ拾いでもすれば良いのか?」
「清掃活動でどうにかなる悪評じゃ無いと思うがな。それにゴミどころか人気まで掃けるぞ。隠れる側に迷惑だ。まあ、どれも同じだがな」
くっ、勝手に逃げる失礼な奴らの人気なら必要ないと言いたいところだが、目指すは悪評の払拭。
悪評を信じる連中こそが対象だ。
それなのにまず慈善活動を行う姿も見られないとは、どうしようもない。
「見られなくても宣伝になる慈善活動はどこかに無いのか?」
「本当に悪評をどうにかしたいのなら、まず宣伝活動から離れろ」
「仕方ない。まずはコツコツやってみるか」
女神様には悪評を纏ったまま帰ったら何か言われそうだが、見えないものでも慈善活動をしてきたと言えば多くは言われまい。
だがどうせやるなら素敵な女性との出会いを生む慈善活動にしたい。
「そうだ。孤児院に寄付をしよう。そして俺に憧れる素敵なレディを育てるんだ」
「なんて不純な動機だ。まあ何をどうやってもお前に憧れるレディなんて生まれないだろうがな」
「ふん、チヤホヤされる俺の姿に泣くのはお前だからな」
「そもそもこの街に孤児院など無い」
「なに? じゃあ建ててやるとするか」
「この街には子供自体が居ない。最も危険な最前線の一つだからな。定住している人すらも僅かだ。子供は居ても極少数、孤児は居ない」
まさか、足長作戦すらも行えないとは。
「こうなったら慈善活動か怪しいが、冒険者ギルドに居るし山賊退治の依頼でも受けるか」
「山賊もこんな所には居ない。一般人の居ない最前線だぞ? 一体何処に態々強い奴等から金を奪おうとする山賊が居る?」
「じゃあ犯罪組織を」
「それも同じだ。誰が態々強者を相手に犯罪を犯すんだ?」
……もしやこの街、困っている事が無い?
「もう良い、布教活動にしよう。もはやこちら側に引き込めば、失礼な態度を取ったりしないだろう」
そう言った途端、ギルド内が大きく動いた。
これまで何故かこちらを固唾を呑んで見守っていた連中が、一斉に動き出したのだ。
その行く手は一様にギルドの出入り口。
俺は一瞬で出入り口に移動した。
「やあ、悩める仔執事達よ」
「「「ヒィッ!!」」」
「執事じゃなくて羊な」
「一体何処に行こうとするんだ? 悩みなら欠片の一つまで聞いてやるぞ!」
手始めに布教する相手はこのギルドの失礼な連中だ。
俺の説法を聞けば悔い改め俺を拝む事になるだろう。
「な、悩みなんか無い! 早く依頼に行かなきゃなんねぇんだ!」
「そ、そうだ! だからそこを通してくれ!」
と口々に言う赤ら顔の冒険者達。
がっつり酒臭い。
「嘘はよそう。テメェ等、酒を呑んでいただろう? 酒を呑んでから依頼に行く馬鹿、居る訳無いだろう?
それにそれが本当だった、その根性、俺の説法で叩き直してやらないとな」
「うっ、煩い! そこを退けぇ!」
「行くぞテメェ等! ヤられる前にヤっちまえ!」
何故か恐慌状態に陥った冒険者達が拳を振り上げて来た。
これ幸いにと俺はその全てを受ける。
「か、硬え! 全然効いてねぇぞ!」
「コイツ、笑ってやがる!」
「フハハハハ、正当防衛成立だ。だが安心しろ、慈悲深い俺は暴力に訴えたりしない。ただ、脱がすだけだ!」
まずは一人。
ちょうど向って来る拳を掴んで引き寄せると、襟を掴んでその衣服をビリビリに引き裂く。
異世界に来て力が上がったからか、一発で簡単にビリビリに破けた。
仕上げにベルトとズボンを掴むと、遠心力で中身だけ放り出す。
これで見事な剥き冒険者の完成だ。
「さて、次は誰だ?」
「どう見ても暴力だよなそれ? 結構吹き飛んで逝ったぞ?」
「暴力じゃない。たまたま飛んだだけだ。それに怪我したらまた絶妙なポーション捌きで回復しつつ入信させりゃ良いんだよ。慈悲深いだろ?」
怪我しても回復させると慈悲深さをアピールするが、何故かジリジリと俺から距離を取り出す冒険者達。
その目は険しい。
新人冒険者と思わしき奴らは武器まで抜いている。
「行くぞぉ! 我らが未来の為に!」
「「「未来の為に!」」」
熟練らしいおっさん達は武器こそ抜いていないが、武器を使わなくともよってかかって一人に挑むとは、冒険者達の倫理感を問いたい。
と言うか逆説的に未来を破滅させる存在だと失礼極まりない事を叫んでいる。
聖職者として徹底的に更生させてやろう。
まず手始めに冒険者達の先頭に陣取るギルド長。
本来この場を治めなければならないのに主犯であるとんでもない奴から更生だ。
ギルド長のおっさんは腐ってもギルド長、最初の奴らとは比べ物にもならない鋭い蹴りを放つ。
しかし聖職者たる俺からしたらまだまだの蹴り。
軽く片手で受け止める。
まずは見せしめに、じゃなくて聖職者として教え導く様にゆっくりと剥いでやろう。
しかし俺からしたらまだまだだが、相当威力が強いらしく受け止めた衝撃波で扉や壁の一部が吹き飛んでしまった。
折角唯一の出入り口を塞いでいたのにこれでは意味が無くなってしまう。
逃さないように早くケリをつけなければ。
予定を変更して容赦なく征く。
脚を掴んで引き寄せると、スボンと服の間を掴み蹴り飛ばす。
するとこれまた見事にスポンと剥きおっさんの調理が完了した。
「元S級冒険者のギルドマスターがいとも簡単に!」
「お前ら本気で行くぞ!」
「全てを賭けて挑め!」
何やら武器は勿論火の玉やら風の刃まで繰り出して逃げようとするが、それも無駄な抵抗でしか無い。
寧ろ俺にとって好都合。
「“剛閃”!」
迫りくる剣を避けて剣を一蹴り。
剣は狙い違わず頑丈そうなベルトを引裂き服を緩める。
「“炎鎚”!」「“嵐刃”!」
飛来する炎や風の刃には鎧甲冑の人間シールド。
鎧を良い感じに損傷させる。
一発ではひん剥けそうに無い頑丈そうな衣装も、奴らの攻撃を利用すれば途端にバスローブ並みの防御力へと落ちる。
後は普通に剥ぎ取れば需要の無い剥き男達の完成だ。
右へ左へとひん剥いては棄ててゆく。
女性陣は他の出入り口も存在したのか残念ながら見当たらなくなっていたが、視界に入る野郎共は全員ひん剥かれダウンしている。
これで下地は整った。
後は肝心の、露出教に入信させるだけだ。
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