閑話後の伝説 聖夜の訃報



クリスマスの朝、そのニュースが日本中を駆け巡った。


いや、世界中を。





―――救世主、死す!!―――


―――クリスマスに若き救世主は去った!!―――


―――謎の若き天才学者、息を引き取る―――


―――神の遣い、天に還る―――


―――謎の天才、車に轢かれ死亡、しかし死因は不明―――


―――主は、奇跡を奪った天才を許せなかった―――




これらの見出しが、世界の新聞の一面を占領した。


新聞に限らずテレビ、ラジオ、ネット、全てのメディアが一斉に、競うようにその訃報を伝えた。

テレビは選挙でも無いのに一斉に日を跨ぐまで同じ話題。

そして人々の話す話題すらも、その訃報が占拠した。


急遽自主的に閉じる店、会社、工場などが相次いだ。

そうで無くとも出社しない、いや出来ない者も多かった。

公共交通機関に務める者もそれは同じ。

連鎖的に社会は停止した。


休日にすると宣言した国家まであった。

反対に神社や寺、教会などの宗教施設は香を焚き祈りを熱心に捧げた。


それ程の衝撃であった。

それ程の悲しみであっった。


正体を隠していた彼の事を詳しく知る人間は一握り。

悲しむ人間の数に比べたら居ないに等しい。


しかし誰もがその功績を知っていた。

誰もが感謝していた。

誰もがその恩恵に預かっていた。


誰もが、救われていた。


その日、人類は、偉大なる恩人を喪った。





クリスマスのその日、クリスマスをまともに祝えた者は皆無だったと言う。


後世、この日の事を“涙のブルークリスマス”と呼ぶ。


そして、クリスマスの意味合いはこの日を境に変わった。



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