長い旅路の果てに――一期一会のT字路s『スローバラード』

 好きな音楽を求めるのは、旅をするのに近い。その時々に好んで聴いていた曲をあらためて聞けば、自らの想い出に伴って、ノスタルジーにひたることになる。何より、たまたまの出会いに多くを頼ることは、やはり旅に近い。


 ただ、興味深いことに、同じことは作り手側にも当てはまる。


 T字路sによる『スローバラード』を聞いたとき、まるで、このバンドのために書かれた曲かと想えるほど、はまっていた。もちろん、そんなことのあろうはずもない。この曲はいわずと知れたRCの名曲中の名曲である。


 ただ、そのように感じられたことに理由がない訳では無い。RCのボーカルにして作詞・作曲者たる忌野清志郎はサザン・ソウルが大好きであり、特にオーティス・レディングに憧れていた。


 その彼が造った曲である。そこに、サザン・ソウルも真っ青のT字路sのボーカルで歌われるならばという訳である。彼女の声は羨ましいほどに野太くパワフルである。ただ、多くの曲はそんな彼女の声に耐えることができない。


 まさに、サザン・ソウル大好きな人間の作った曲ゆえに、その声に負けない曲となったのである。


 という訳で、T字路sの『スローバラード』の紹介でした。


 楽曲はYouTubeで聞けます。


Fuji Rock Festivalチャンネルの

『T字路s - スローバラード (FUJI ROCK 22)』


 あなたもあなた自身の旅路の果てにより良い音楽――あるいは小説――に巡り合えることを願っております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る