第27話 GvG最強集団誕生
そうして、僕は少しストレスを抱えつつも屋敷に戻った。
自室で着替えを済ませると、少し屋敷の中を歩きながら、これから戻ってくるNPCたちのことを考える。廊下ですれ違った使用人のタリサとカロラインの会話から都合よく、地下に末吉がいることを知り、僕は末吉に相談して見ようと考えて、あの遠い地下へ会いに行くことにした。
「お疲れ様です。末吉さん!」
突然の訪問により末吉は驚いていた。
「あれ? 高槻くん。珍しいわね。どうしたの?」
「少々、末吉さんに、ご相談がありまして、ご都合はどうでしょうか?」
「……込み入った話でなければ、聞くわよ」
「そうですよね……。では、末吉さんにお聞きします。あの、以前に『グリモア』から作ったNPCについてですけど……。末吉さんが担当している側のゲーム環境では、強いNPCはどのように扱っているか教えて下さい!!」
末吉は
「ん――……ん。そうねぇ。そもそも、私が担当している方では、強いNPCたちがいないのよね。あれ? もしかして……例のパーティーメンバーの
「はい、そうです。今日、衛兵隊からの断りの話がありまして、僕も対応に困っています」
「それね……。高槻くんが本当に困っているようだから、助けて上げたいところだけど。あの子たちをモンスター扱いにするのも、もったいないよね」
「僕もそう思います。末吉さんなら、どうしたらよいと思いますか?」
「はい! 閃きました!!」
「……えっ!?」
結局そういうことなら、イベント担当に聞くのが一番と末吉から笑顔で言われた。
そして、僕は末吉に無表情で礼を言って、遠い地底(地下)から屋敷に戻り、窓の掃除をしていたカロラインを捕まえて、犬養を呼んでもらうようにお願いした。
――2時間後、犬養が現れる。
「やあ、高槻くん。元気だった?」
いつものように陽気に見える犬養だが、彼の目の下のクマが酷いことになっている。最近は追加イベントのシナリオの追われているとかで、アップデートの準備でマコ先生から突き上げを食らっているせいか、まさに寝る暇もないとはいう状態を
「それで何かなぁ? 高槻くん。もしかして、クレームとか出ちゃったのかなぁ?」
「いえ。犬養さんが懸念しているようなことはありません! ですが、少しだけ相談がありまして……」
僕は犬養に領主であるライコネンの要望について説明した。
話を聞いた犬養も少し悩んだが、すぐにアイディアを出してくれた。
「それなら、高槻くん。いっそのこと、GvGイベントの中に組み込んじゃおうか?」
「えッ!? 犬養さん。以前に決まった内容からレベルの高いNPCの参加は、バランス調整の問題のため駄目にしたはずよ!」
「高槻くん。それってさぁ。プレイヤーの
「犬養さん。プレイヤー同士の戦いにNPCたちを混ぜるんですか?」
「僕は、それもまた一興だと思うけどねぇ。他のゲームでもあるでしょ! GvGがしたいけど、溢れた場合とか?」
「まあ……。確かに、それは……」
「高槻くん。そうと決まれば、早めに準備が必要だよね」
「でも、犬養さん。テストとかどうするんですか? 以前だって、あれこれと検証した結果、GvGにはランクマッチを導入したじゃないですか?」
「高槻くん。GvGだよ。スペシャルイベントとして試しにテストなしで、放り込んでみるのも楽しいと思わないかい?」
この人の悪のささやきが始まった。オンラインゲームあるあると言われるトワイライトの闇に
「いえ、犬養さん。やっぱりテストしましょう!」
「でもさぁ――そうなると、マコちゃんにバレると思うよ。君も巻き込まれたくないんでしょ!」
「うぅ……。そうです」
「なら、さぁ――…………」
やや無念な気持ちを抱えつつも、僕は渋々、犬養の提案に乗ることにした。
あくまでも試験という名目で、例のNPCたちをGvGに参戦させる方向で進める。
だが、管制室にいるエキストラチームのリーダーであるアンダーソンが全面的に支援してくれると申し出てくれたおかげで、NPC参戦の話は正式に決まる。
アンダーソンの話によれば、何でも最近のエキストラチームでは、GvGのサクラを行なっていたそうで、担当していたメンバーたちも、かなり疲弊しており、アンダーソンも、どうにか仲間たちに休暇を取らせてあげたいと考えていたところで、この話が来たという。
それに前回のリリース前テストのこともあり、アンダーソンたちの方でも、NPCの活用については、色々と対策を検討していた。
よって、NPCだけの集団であれば、リーダーになれるネームドキャラクターのNPCをひとり教育して自立させることにより、GvGに特化した内容だけならリリィたちでも問題なく運用できるそうだ。
また、アンダーソンが言うには、すでにネームドキャラクターのNPCの中に教育済みの個体がいるらしく、実際にPvPでの実験が行われており、リリィたちの監視下で運用出来ているという。
僕は、その話を聞いてゲームマスターとして、全体的に見れているわけでもなかったことを悔やむ。アンダーソンたちが行なっているようなところも、ちゃんと気を付けて見て行かなくてはならないということを知り、結果的に今回の件は上手くいったが、アンダーソンには感謝の言葉しか出なかった。
――そして、GvGイベントでは……。突如、現れた謎の最強集団。
妥協を許さない圧倒的な戦力を見せつけ脚光を浴びる。
参加していたプレイヤーたちの間でも話題となり、あまりの好評だったので、次のイベントで役割が決まるまでの間は、例のNPCたちには、そのままGvGで活躍してもらうことが決まった。
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