第60話.エピローグ
カンッ、カン、カン、カンッという木剣同士がぶつかる乾いた音が響く。
フォートミズの侯爵家にある闘技場の一角。今、そこではアルフレッドとリリアーナが木剣を打ち合っていた。
いわゆる立ち合い稽古というやつだ。
リリアーナの胸には、紅い宝石がついたネックレスが、
先ほどから、激しい打ち合いが交わされているが、ほぼ一方的にアルフレッドが押されていた。
『
かすかな声で力ある言葉が発せられ、リリアーナの周りに無数の紅い球が出現する。その数は二十を軽く超えていた。
一拍ののち、その紅い球が一斉にアルフレッドに集中した。
「ちょっ!」
アルフレッドは短く悲鳴じみた声をあげると、全力で回避行動をとった。たった今、アルフレッドが立っていた場所に無数の紅い球が着弾する。
激しい音を立てて爆発しながらも、小さな紅い球は、
おそらく威力は落としてあるのだろう。盛大に爆炎と爆音を響かせているわりには、闘技場の地面は傷つかない。
それでも、アルフレッドは必死で回避を続ける。
その動きは、かなりの速さだった。だが、そのスピードを上回る速さで、アルフレッドの背後にリリアーナが回り込む。
それには気づいていないのだろう。
アルフレッドは、紅い球を避けながら、リリアーナの方へと誘い込まれるように動いていく。
そして、最後の一つを
「まいった」
アルフレッドは、手に持った木剣をおろすと、首を振りながら言う。
「また、私たちの勝ちね」
リリアーナが笑う。
「くうっ。ぜんっぜん勝てないな」
そう言うアルフレッドも笑っている。
「実際は、二対一みたいなものだからね」
「まあそうなんだけど。でも二対一の方が、まだ、やりやすいのかもしれない。さっきの魔法って全部カティが担当してるんだよな?」
『うん。
リリアーナの雰囲気が少しだけ変わる。
答えたのはカテリーナだった。
「そうだよなぁ。タイミングもコントロールも完璧だったし。もう、カティの魔法に、リリィの剣技が合わさるのは、ほとんど反則だよ」
カテリーナの
どういう仕組みで、二人の意識が一つの身体を共有できるのか、
それどころか戦闘時に、剣と魔法をそれぞれ分担するなんていう
さらに、カテリーナはイーリスの魔法知識の一部も得ていたらしい。イーリスに身体を乗っ取られていた時に、彼女の知識が入って来たとのことだ。
それも、
だが、それによりリリアーナの戦闘力は
先ほどの立ち合いを見れば分かるように、アルフレッドのそれを軽く
「しかし、リリィとカティに、ここまで差をつけられるとはなぁ。ちょっとだけ悔しいな」
『そう? でも、アル君だって一週間前からは見違えたよ。すぐに追いつかれちゃうんじゃないかな?』
「そうだといいんだけどな。でも、魔族とやりあうには、まだ全然足りないかな」
そう言って、アルフレッドは一瞬遠くを見つめるような眼差しをする。
「うーん。でも、このまま頑張れば、私たちだって魔族に対抗できるくらいには強くなれるんじゃないかな?」
リリアーナが
「そうだな。そうしたら、三人でもう一度、カティの身体を取り戻しに行こうか?」
『うん』
カテリーナは、嬉しそうに、しばらく黙ってアルフレッドを見つめていた。
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ここまで読んで頂きありがとうございます。
第一部完結です。
長いことお付き合い頂き本当にありがとうございました。
しばらくお休みした後に第二部の執筆にとりかかる予定です。
2023年5月か6月頃再開予定です。
だいぶ悩んだのですが、第一部は一旦完結にして、第二部以降はコレクションで追加するつもりです。
第一部の伏線や設定が全部回収出来なかったのが心残りではありますが、それは二部以降に回収します。
身体は奪われたままですが、やっとカテリーナを取り返しました。
第二部は、カティも活躍する予定です!
アル、リリィ、カティ頑張れ!
実はカテリーナが一番好き。
早く第二部が読みたい。
と思ってくださいましたら、
★評価をお願いします。
また、第二部を再開するときは、こちらに一話追加して案内をするつもりですので、引き続きフォローを残しておいて頂けると嬉しいです。
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