第七章【流露と常盤】7
――以降、その写真は写真立ての中にずっと静かに収められていた。日が経ち、月が終わり、年が過ぎ、季節が巡っても。写真の中の俺と片桐はいつまでも同じまま、高校の制服を着て二人並んで笑っていた。
俺が片桐に関して繰り返し思い出すのは、その写真を撮った時のことが圧倒的に多い。机の上にあり、良く目に入るからなのかもしれない。
あの頃、俺は――俺達は変わらないものをきっと求めていた。高校という、長い人生の時間の中では一瞬とも呼べる通過点に過ぎない儚い場所で、互いが互いを必死で繋ぎ留め続けていた。それは、変わらないものなど無く、また、俺達高校生が如何に小さく弱い存在かを、本当は何処かで分かっていたからかもしれない。それでも同じ時間を過ごすことが愚かだとは思わなかったし、手を繋ぐことが意味の無いこととは思わなかった。それは今も変わらない。ただ、俺がそうであっても相手もそうだとは限らない。そして、それが悪いこととは言えないだろう。高校という通過点を俺が通過し、それを後ろから眺めていたであろう片桐と少しずつ連絡を取り合う回数が減って行ったことも、きっと誰も悪くない。
――まるで一時的に加速したのかと思わせるほどに早く時は走り、二月は既に終わりを間近に迎えていた。残る行事が減り、授業内容が薄くなり、最後の卒業式予行を終え。ただ一心に全てが終わりへと向けて収束して行く。
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