第二章【山頂と山麓】6

 ――クリスマス前日の夜。天気予報をチェックした俺は非常に驚いた。


 俺が住む地は埼玉県、明日行く地は東京都、どちらも太平洋側だというのに、そのどちらもに雪だるまのマークがハッキリと付いている。


「また雪か……」


 独り言が零れた。


 冬とは言え、太平洋側地域に雪が降ることは珍しく。二週間半程前に降り落ちた雪に、初めは俺は少し感動したのだが。あの歩きづらさは二度と経験したくないとすら思ったばかりだというのに、同月内にまた雪が降ると告知されようとは思わなかった。まあ、あれは学校指定の革靴なんかを履いていたせいもあるだろう。明日の朝、予報通りに白い天使のような悪魔のようなふわふわとした冷たい奴らが認められたら、しっかりした運動靴でも履いて行けば問題無いだろう。多分。生憎、寒冷地仕様のスパイクシューズや、かんじきなんてものは持っていないしな。それ以前に、天気予報はあくまでも「予報」だ。外れないとは限らない。


 ――その時、携帯電話から明るいメロディーが響き、メールの着信を知らせた。




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 From:片桐綾


 Sub:明日のお天気


 Text:やっほう!今、天気予報を見ていたんだけれど、なんと明日は雪だよ!やったね♪


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 片桐からだった。相変わらずテンションが高いメールだ。


 そういえば、片桐は何度か「また雪が降ったら良いのに」とか言っていたような気がする。その片桐にとって明日の雪は喜びでしか無いだろうな。まだ「予報」の段階だが。


 というような返信をすると、一分もしないうちに返事が届けられた。




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 From:片桐綾


 Sub:予報でも


 Text:信じれば願いは叶うのです。小さい時、晴れてほしくて、てるてるぼうずを作ったりしたでしょ?それと一緒なのです。


 なので、私は大雪を祈って眠ります。ちゃんと相模原君も大雪を祈ってね。では、明日を超楽しみにしています♪


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 悪いが、大雪は祈れない。が、ちらほら程度の雪なら――まあ、悪くない。かもしれないな。

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