JF党と歴史
☆難癖との戦い
この町は、必ず破綻する。あの手この手をもって、その戯言が投げ付けられた。
その中の一つに、誰も汚い所をやろうとしない、と言うのがあった。
業者任せにしようにも業者は来ず、当番制にしてもおしゃれ気取りの連中が汚い所に向かわず怠惰を働きまた勝手に目下と見なした存在にその職務を押し付ける。
その言葉を揚げ足取りにするために、創始者たちは動いた。
インフラ整備のみならず、その後の町の保全も自分たちの手でやると。そのために多くの住民たちが創始者たちの命令を受け、第一次・二次産業へと就いた。その彼女たちに創始者たちは多額の報酬を与え、建設を進めまた定着させた。
☆第三次大戦
だがそれはとりもなおさず他産業への手当てがおろそかになると言う意味であり、住民たちの中には反発する勢力もいた。この勢力と創始者たちによる争いを、第三次大戦と呼ぶ。
その勢力の中心たる彼女たちこと「JF党」いわく、このような事をするために町を作ったのではない。安心して暮らすために作ったはずなのになぜ土木作業や農漁業をせねばならないのか。いや、目論見通り第三次産業に就けたとしても、なぜこんな安い給料で働かねばならないのか。その不満を盾に、JF党はかなりの支持を得ていた。
☆民主主義、間接民主制
そしてJF党は政権を手にし自分たちのやり方を通すために選挙を行い、町内の住民たちに投票を呼び掛けた。創始者たちもまたいわゆるどぶ板選挙を行い、支持者一人一人に頭を下げて回った。
その結果、選挙は一〇四対九十六と言う僅差で創始者たちの政党が勝利。例え一人でも多い方が勝ちである以上、政策は引き続き実行されるはずだった。元より民主主義と言う名の政治システムによって住民たちが集まってきた以上、票及び議席の多寡は絶対的な権力であり、それに抗うには政策をもって対抗するより他ない。
ましてやその選挙は他の町の干渉を全く受けない、文字通り自分たちの手により行われた投票であり、立候補であり、選出だった。
☆往生際の悪さ
しかしこの選挙後、JF党所属議員たちの多くが問題行動を起こした。去る者は追わず来る者は拒まずであるから町を去った事はさほど問題視されなかったが、その去った先でこの町についてデマを撒き散らすようになったとなると話は別だった。
曰く、創始者たちが巨塔にて仲間たちをこき使っている。汗まみれの存在を上から眺めながら、調子のいい事ばかり言っている。さらには自身たちは邸宅に住み、その邸宅へのインフラ整備を真っ先に行わせている。いわゆるノーメンクラトゥーラのような生活をしている、と。
この卑劣な虚報は当然町内にも跳ね返り、真っ当なJF党員を傷つけた。
さらに言えばこの頃からテロリズムが発生。各地の施設や創始者たちが襲われる事件が多発し、元々少なかった人口が減少。また、町の治安が一気に悪化した。
☆死刑
このあまりにも「野蛮」で「乱暴」な手口に市民たちの怒りは燃え上がり、犯人を徹底的に追及せんとした。当然捜査が行われ、次々とテロリストたちは逮捕された。その多くが創始者たちからやや遅れてやって来た初期移民であり、JF党の支持者たちだった。
この町自体がただの自慰行為でありまったく真の目的から乖離しているから真の目的に戻そうとしただけ—————。
あるいは、自分たちが立派に導こうとしているのに拒絶された以上彼女らはもう幸福になれないから—————。
犯人たちはこの二つの言葉を口にするばかりだった。要するに、謝罪も反省もない。
被害者遺族たちを前にしてこうまで言い切る彼女たちを前に、司法の裁きは容赦がなかった。
要するに、死刑。死者が一人でもいれば全員死刑とし、そうでない場合でも懲役二ケタ年に処した。控訴は時間の浪費の烙印を押されて却下され続け、一年もしない内に次々と死刑が執行された。
☆JF党の消滅
「野蛮に野蛮で対抗した」
この死刑執行に対し、こう批判したのはJF党の党首だった。
元々彼女自身死刑反対論者で、党員にも町内での死刑廃止を決めるように呼び掛けていた。そしてそれとは別に、彼女自身がテロリストたちと思想を一にしていた。
そのため彼女が公共政党としてテロリストたちを非難する言葉はどこか弱々しく表面的で、誠意がないと追及を受け続けた。
そして問題となったのが、JF党の支持基盤だった。
JF党の支持基盤は第三次産業従事者と言う名の貧民層が多く、資金力が劣っていた。そして対立勢力及び被害者たちが富裕層であるのはまだともかく、家事専門者や不定時間労働者であった事が一番まずかった。自立とは自分自身が自分自身の意志と責任で行動を決める事であり、家事専門者や不定時間労働者のような生き方を選ぶも選ばぬも本人の勝手だった。
だがJF党の支持者にはその手の女性を軽蔑する向きが強く、それが上層になればなるほど極端だった。その支持者たちがテロを起こし上層部の非難が遅い上に弱かったことから、JF党上層部が選挙に負けてテロを起こしたのだと言う話が広まったのだ。
そしてその後警察の捜査により党首とは別の幹部が選挙戦の敗北を認められずに子飼いの連中を指揮して複数箇所でテロを行った事がわかってしまい、JF党は支持をまったく失った。
党首は責任を取り辞任し町を去り、JF党の上層部は殺人教唆により死刑執行された幹部を守ろうとしてさらにテロを起こしたり捨て台詞を吐きながら町を去ったりした。
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