第37話 龍脈侵入
身体が重い。
息苦しい。
つうか、何か……狭くね?
俺は薄っすらと目を開いた。
「うっわぁぁあああああああああああああああああ!」
怪物がそこに居た。
頭の中から臓物が視える化物。
体が腐っている様で、肌は紫色。
そしてもう一体。
白骨の異形。
スケルトンとも言われる伝説上の怪物。
それが、俺の胸板の上に居た。
なんで俺の部屋にこんな化物が……!
「って、ルゥとスルトじゃねぇか」
「お目覚めになられましたか、王よ」
「おはようございます、主」
2人が俺に笑顔を向ける。
ちょっとホラー。
「主君、某も居るぞ」
右を向くと、金髪イケメンが俺の隣で寝ていた。
「あたしも居ますよ、ご主人様」
左を見ると白髪の美少女。
こっちを先に見せてくれ。
頼むから。
「主様の寝顔、素敵でした……フフ……」
枕元からアイの声が聞こえた。
「いや、私は一応止めたのですが」
床で正座する夜宮さん。
「僕もベットに入りたかったです」
こっちはサイズの関係で夜宮さんの隣で丸まっている。
ダリウス。
「勢揃いでどうしたんだよ。
ていうか、どうやって出て来たんだ?」
「魔石召喚のスキルレベルが上がりました。
それに伴って独立行動との兼ね合いも強化されたのかと。
主の周囲に限り、自分の意志で出てくる事が可能になったようです」
スルトがそう説明してくれる。
それ、俺のベットに侵入する理由になってる?
「良いお目覚めを演出しようかと」
あぁ、モンスターハーレム最高だなぁ……
「まぁ、目は覚めた。
かなり……結構……大分……うん」
「それで主、問題無いのですか?」
「ん? 何が?」
「本日は、大学への登校が再開される日かと」
あ。
やばい。
完全に忘れてた。
「服!」
「用意してますよー」
「道具!」
「こちらに用意してあります」
「課題やってねぇ!」
「やっておきました」
召喚獣ハーレム最高だぜっ!
授業には
授業も聞かずに、俺は最近の濃すぎる出来事を思い出していた。
まずフラれた事。浮気された事。目の前でキスされた事。
うぉ、涙出て来た。
そして、探索者を始めた。
浮気相手が探索者だった。
それも理由の内ではある。
でも、何となく強い男になりたかったとでも言おうか。
俺を選んどけばよかったな。
みたいな事が言いたくなった。
しかし、その目標はまだ達成されていない。
何と、その彼女は今は日本の探索者の中でも頂点の位置にいる。
賢いのとか才能があるのとか、まぁそれは知ってた。
けどまさか、一月やそこらで日本中からキャーキャー言われるアイドルにまで成長するとは。
予想外も良い所だ。
その原因となった暗月の塔の暴走事件。
その活躍で、彼等は英雄視される様になった。
事件を解決した功労者として。
だが……
俺と聖典だけが知っている事実がある。
世間は、夜宮久志を首謀者と思っている。
しかし、彼は巻き込まれただけの一般人だ。
首謀者は別に居て、その人物は未だに野放しになっている。
何よりも、聖典が夜宮さんを殺した事を切っ掛けにダンジョンは本格的な暴走を始めた。
それ以降の、聖典の活躍は本物ではある。
しかし、その事件が起こる引き金を引いたのも同じ聖典であるというのは皮肉だ。
何よりも、それを知って居れば世間は聖典を英雄とは呼ばない。
だからこそ、その真実は隠されている。
全てが、聖典を英雄にする為に動いている。
俺はそれを知った。
個人的な理由で始めた探索者。
何か大事に巻き込まれている感じもしなくはない。
木葉に聖典の成り立ちを聞いた。
その後ろに居る組織がどれだけ大きいかも。
それでもやっぱり俺は思った。
――もっと強くなりたい。
と。
そんな俺の目標は、聖典というチームを越える事みたいになっていた。
ライバルっぽいのが他に居ないし。
何より、それに勝てば雷道や雅にできない事もできるって事だ。
俺の強さの最低ラインは常にそこだから。
でも、暗月の塔では負けた。
不死街での戦いは結局勝つまでは行けなかった。
まぁ、スルト曰く勝つのが目的じゃ無かったし。
聖典は雅も居なくてこっちもスルトは不参加。
お互い、全力とは言い難い一戦だった。
しかし、探索者になる前の自分と比べれば。
成長している事は間違いない。
まぁ、俺は何にもしてないけど。
召喚獣が優秀で嬉しい限りだ。
ダリウスの操縦とか、結構上手くなった。
後は、夜宮さんの使う素材のパシリ。
あの人、外出られないから仕方ないけど。
なんつーか俺だけだろうけど、思ったより探索者って暇だったな。
そんな最近の記憶。
授業中、ふと暇に思ってそれが蘇る。
見れば、教室には木葉も雅も雷道も居る。
校舎が壊れて、授業の内容も若干変わったらしい。
元々、木葉以外は被ってる授業無かった筈なんだけど。
その見た目で真面目に授業受けてんじゃねぇよ。
サボれよ筋肉ダルマ。
でも、そんな男より俺はまだ下だ。
少なくとも雅にとっては。
「はぁ……」
何となく溜息が出る。
そのまま、ふと窓の外に視界を向けた。
校門が見える。
ちょうど、誰か中へ歩いて来ていた。
変なマスクを着けた黒づくめの……
「なんであいつが……?」
それは間違いなくあの事件の……
錬金術師と名乗ったペスト医姿の首謀者だった。
……そうして、俺の人生で最悪の一日は始まった。
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