第16話 PARAMETER



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神谷昇(21)

クラス『召喚士』

レベル『26』

『魔石召喚lv3』

『召喚獣契約lv3』

『召喚獣送還』

『召喚獣憑依』

『種族進化』

『独立行動』

『魂魄念話』

『召喚獣解析』

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種族:ワイト

名称:スルト

スキル:『変形骨』『完全保管』『黒魔術』

装備:支配の魔杖

装備:極大剣

進化条件:魔力の精密操作を修める。

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種族:妖鬼

名称:リン

スキル:『器用』『見切』『鬼火』

装備:短刀

進化条件:体術を修める。

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種族:屍食鬼

名称:ルウ

スキル:『自壊力』『絶叫』『屍食再生』

装備:カイトシールド

進化条件:神道を修める。

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種族:メデューサ

名称:アイ

スキル:『眼光線』『石化魔眼』『浮遊』

装備:魔力操作式レンズ

進化条件:蛇、猪、天馬を討伐する。

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種族:レッサーヴァンパイア

名称:ヴァン

スキル:『吸血強化』『蝙蝠変身』『血影武装』

装備:蝙蝠用の鍵爪(普段は鎖を付けて引きずっている)

進化条件:剣術を修める。

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種族:闇幼龍

名称:ダリウス

スキル:『ダークネイル』『ダークファング』『ダークブレス』

――




 そんな情報が頭の中に浮かぶ。

 微睡の意識の中。

 けれど、文字列情報だけは記憶に残った。

 多分、新しく得たスキルの影響だろう。


 目が覚める。

 温かい毛布が俺の上に掛けられていた。

 それは見慣れた、俺の部屋の天井だった。


「おはようございます、先輩」


「木葉……?」


 隣に座る少女。

 何処か、不安気な表情を浮かべている。

 それと、ベッドに上体だけ乗せてリンが寝息を立てている。


「看病してくれてたのか?」


「はい……」


 ダンジョンでボスを倒した。

 それ以降の記憶が無い。

 って事は、運んでくれたって事なんだろう。


「さんきゅー木葉。助かった。

 俺重く無かったか?」


「ダリウス君が、やってくれたので……」


「あぁ、ってかアイツはどこ行ったんだ?」


「先輩のレベルが上がった事で、自己送還が可能になったとか。

 ダリウス君を街中でうろつかせる訳には行きませんでしたし」


 自己送還ね。

 そりゃいい。

 自分で送還できるなら、ロストする前に戻せる。

 条件次第で魔石の費用がまた浮く。


「ダンジョンから出てからは、私とリンちゃんで運びました」


 俯いて、そう話す木葉。

 いつもの元気がなりを潜めている。


 責任でも感じてるのだろうか。


「馬鹿だな、後輩」


「……ごめんなさい」


 お前に素直に謝られると調子が狂う。

 そんな事を言って欲しい訳じゃない。


「お前が着いてこようが、こなかろうが、俺はアレに近い内に挑んでる。

 だったら、お前が居る時で良かったよ」


 俺は、木葉の頭に手を乗せる。

 そうすると、やっと木葉は俺を見た。


「え……?」


「助かったよ、日本最高位トップランカー


「気が付いてたんですか……?」


「探索の事にめちゃくちゃ詳しいし。

 戦力とか状況の分析も的確だった。

 スルトたちはお前を警戒していたし。

 木葉、いつもより何か不自然だったから。

 ってか、ダンジョンだってのに落ち着き払っててさ」


 寧ろ、気が付かない訳ないだろ。


「ありがとな、助けてくれて。

 最後の最後に、お前の詠唱こえが聞こえたから、もう一踏ん張りできたんだぜ」


「嘘ついてたんですよ?

 嫌いになってませんか?」


「嘘って……?

 どれの話だよ?」


 記念受験ってのが嘘かどうかなんて知らんし。

 正直どうでもいい。

 ていうか、そんなの気持ちの問題だろ。


 探索者じゃないなんて言われてないし。

 低ランクとも言われてない。

 初心者の定義だって色々だ。


「そもそも、嘘なんて皆あるモンだ」


 それが一つバレて、それで嫌いになるって?


「俺って、そんなに短気だと思われてるのか?」


「……私が、行かせたみたいな物じゃないですか」


「かもな。

 でも、速いか遅いかの違いだ。

 でも、今回行けたお陰でお前が協力してくれた。

 だから、どっちかっていうとプラスだったよ」


 お陰で、ダンジョン完全攻略だ。

 ダリウスの進化条件も満たした。

 俺も大幅レベルアップで、スキルも増えた。


 後、スルト達の進化条件も見れるようになった。

 何か、この前までは経験値不足とかで見れなかったからな。


 それが分かったのは、あの昆虫ドラゴンを倒したからだろう。


「かっこつけさせてくれよ。

 後輩の女の子の前でくらいさ」


 そう言って髪を撫でると、木葉は笑ってくれた。

 よく見ると、目が真っ赤に腫れてる。

 それを隠したくて、俯いていたらしい。


「かっこつけすぎですよ」


 溢れかけていた涙を袖で拭って、木葉は真っ直ぐ俺を見つめる。


「はぁ……

 男性って、そういう男のプライドみたいなチンケで無駄で無意味な物を皆さん持ってますよね」


 そう言って、いつもの悪い笑顔を浮かべる木葉。


「だから、後輩の可愛い女の子に、最近自信が湧いて来ていた探索者としての実力でも負けてるって……

 そんなことになったら先輩の失恋ハートブレイクした心臓がもっと傷ついちゃうんじゃ無いかって……

 そういう気遣いですよ。

 だから、隠しておいてあげようと思っただけです」


「そりゃどうも。

 そっちの方が木葉らしいよ」


 そう言って、木葉の頭の上から手をどかそうとする。

 けれど、木葉は俺の手を抑えて自分の頭にくっつけた。


「でも、バレてしまったのなら仕方ありませんね。

 けど、調子に乗ったらだめですからね。

 私のレベルは63。間男さんとか相手になりませんから。

 先輩なんて、もっと雑魚の雑魚でザコザコです!」


 なんだよそりゃ。


「……だから」


 急に、静かな声になって。

 木葉は俺の手を頬に沿える。


「あんまり、無茶しないで下さいね。

 さっきだって、召喚獣を囮にして2人で逃げれば良かったんです。

 それか、私だったら簡単に勝てたんです」


 確かにな。

 それでも、良かったかもしれない。


 でもなんでかな。


 勝てるっていうか、勝ちたいっていうか。

 逃げる事を忘れるくらい。

 そういう気分になった。


 そして、その願いにスルトもダリウスも……召喚獣たちは応えてくれた。


「私、先輩が死んだら泣きますから」


「俺は臆病なんだよ。

 だから、死なないって」


「約束ですよ?

 自分の命を最優先して下さい」


「あぁ、分かった。

 約束だ」


 そう言えば、最初からそれを確認するって。

 そういう話だったんだよな。


 なのにそこで無茶して、そりゃ泣かれるわ。

 無理とか無茶とか。

 そういう性格じゃ無かった筈なんだけどな。


 俺には独立行動がある。

 だから、家からダンジョンを攻略する事ができる。

 俺は安全な場所から、無理も無茶も無謀をする必要が無い。


 でも。


「本当に本当の、約束ですよ。

 私は怖いんです……

 だって先輩は……」


 俺は……


 少なくとも今日。


 一度……


「私を守る為に、命を投げ出そうとしたから」


 また同じ状況になったらどうするのか。

 明確な答えと呼べる物は思い浮かばなかった。

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