第一章⑫『風に晴れし空』

「う、んん…………」

 

 どうやら僕は、またしても気を失っていたらしい。目の前で眩い光を浴びたからか、目の奥の方がジンジンと痛むような感覚が残っている。その痛みのせいで、僕は、なかなか目を開けることが出来ずにいた。

 でも、この鈍い痛みがあるということは、きっとさっき起きた出来事が夢じゃなかったって事だ。僕は風晴かぜはれさんの深層世界で、彼女の心に潜む闇と対峙し、そして、打ち勝ったのだ。光に包まれる直前に見た風晴かぜはれさんの精神騎スピリットの安らかな笑顔と、『ありがとう』という風晴かぜはれさん自身の声。それらは、気を失っている最中にも、僕の頭に鮮明に焼き付いて離れることはなかった。それから、ずっと僕の隣に立っていてくれたハナコの、温かい手の感触も……

 

 

「…………ん?」

 

 あれ……? なんか、手の感触がどこかリアルというか……まだハナコが僕の手を握っているような?

 いや、そもそもハナコが僕の横に居たのは、あそこが深層世界の中だったからだ。もし今僕が現実世界に引き戻されているのだとしたら、ハナコはもう側には居ないはずだし、それに、この感触は掌とは違うような気がする。何というかこう、もっと柔らかくて、ハリがあって、それでいてスベスベしている……。後、どこかフローラルな感じのいい香りも漂っていて、文字通りの夢見心地というか……もっとこうしていたいというか……。

 

 

「……ハッ!!?」

 

 その時、僕の脳内に電流が走った。研ぎ澄まされた五感から伝わる情報が瞬時に頭の中で再構築され、ある結論を導き出す。

 

 

 ……この状況、ひょっとしてラッキースケベ的な何かなのではないか、と。

 

 ガバッ! と勢いよく起き上がる。目の前には地面に倒れて気を失っている風晴かぜはれさんの姿。今、地面に片手両膝をついて起き上がっている僕の状況から察するに、僕はさっきまで、風晴かぜはれさんに覆い被さるような形で倒れていたのだろう。風晴かぜはれさんの制服の胸元辺りが、歪な形によれていることからも、それが窺える。

 そして何よりも……地面についている方とは別の手の行方がマズかった。あのフニフニとした柔らかい感触はなんと、風晴かぜはれさんのスカートから覗く太ももの感触だったのだ。現に今、僕の右手は風晴かぜはれさんの太ももに添えられている。倒れた影響か、膝上くらいまである筈のスカートはかなり捲れあがっていた。あと数センチでも指先が上に行っていたら、そこにチラリと覗く淡い水色の布地に手が触れてしまっていたかもしれない。……いや、さっきモゾモゾと手を動かした影響で、指の先っちょとか当たっちゃってるような気がしないでもない

 まとめると、僕は風晴かぜはれさんの太ももを撫で回しながら、胸に顔を埋めて倒れていた、という事だ。

 

 

「───うわあああぁぁぁっ!!?」

 

 ズザザザァッ! と、慌てて風晴かぜはれさんから離れて後ずさる。幸いなことに、周りには誰の人影もなく、風晴かぜはれさんもまだ目を覚ます様子はない。でも、いくら無意識だったとはいえ、風晴かぜはれさんの身体にこんな事しちゃうなんて……! 誰かに見られてたとしたら、一発アウトの状況だ。

 

 

『ほう……目を覚ましてから一瞬で状況を理解するとは。 流石だね、助平スケベくん』

 

「……うげっ!?」

 

 ……まずい、一人目撃者が居たみたいだ。

 含み笑いの込もった嫌味ったらしい声が、脳内に響く。ハナコの姿は、もう隣にはない。深層世界に入る前と同じように、遠くから僕に声を送っているようだ。彼女は、軽蔑けいべつあざけりをはらんだ笑い声を、頑張って堪えるようにしながら僕に話しかけている。

 

『ハナコっ! なんでもっと早くに起こしてくれなかったんだよ!?』

 

『うん? 意識の戻ってない状態の君にいくら声をかけても無駄だろう? それに、君たちは最初からその体勢で倒れていたんだから、いくら早く起こしたところで結果は同じさ』

 

『だからって……! ……え?』

 

 すぐさま抗議しようとする僕だったが、ハナコのある言葉が引っ掛かって、その勢いを失ってしまう。

 最初から……? それってもしかして、僕は光に包まれて意識を失ったその瞬間から、ずっと風晴かぜはれさんの上に覆い被さってたって事!?

 

『あぁ、最初からずっとだよ。 現実の時間にして、かれこれ三十分くらいじゃないか?』

 

『まじかぁぁぁぁぁ…………』

 

 ハナコの口から容赦なく告げられる真実に、僕は愕然とするしかなかった。いくら不可抗力とはいえ、これは……。 ハナコ以外の目撃者が居なかったから、辛うじて"ちょっとしたラッキースケベ"みたいな感じで済んだけど、もしも倒れて気絶している最中に誰かに見つかってたりしたら、そりゃもう退学沙汰だ。転校二日目で退学とか、本当にシャレにならない。


『大丈夫。 君らが倒れてる間は、誰もここに来ていない』


『そうなの……? なら良いけど……いや良くないけど!』

 

『まぁ別に良いんじゃないか? 結果的に、自分だけがおいしい思いを出来たんだから。 ……初めて触れる女の子の感触はどうだった?』

 

『この……他人事だと思って馬鹿にしてっ……! てか、"初めて"って決めつけるなこの野郎っ!!』

 

 ウガーッ! といった感じで抗議するが、そもそもさっきからずっと脳内で会話が繰り広げられているため、ほとんど声を発していない僕である。

 と、そんな具合に頭の中でギャーギャー騒いでいた時だった。

 

「う、ううん…………」

 

「っ! 風晴かぜはれさん!?」

 

 風晴かぜはれさんの口から、微かに声が漏れた。その声でやっと、僕は風晴かぜはれさんがずっと倒れっぱなしであった事を思い出した。

 

風晴かぜはれさん! ……風晴かぜはれさん!」

 

 肩をトントンと叩きながら呼びかけるが、返事はない。念のため、呼吸があるかどうかを確認してみたが、そこは大丈夫だった。

 

「……保健室に運んだ方が良い、よな」

 

 なかなか目を覚ます気配がない彼女の顔を覗き込みながら、そう呟く。万が一ってこともあるし、そもそも、こんな所にずっと彼女を放置しておく訳にもいかない。ふと思い出して、ズボンのポケットからスマホを取り出す。現在時刻は九時ちょうど。一時間目の授業は、もう半分を過ぎていることだろう。

 意を決した僕は、風晴かぜはれさんの身体をそっと抱きかかえ、そのまま保健室へと走っていった。

 

 

 ***

 

 

『……保健室の場所が分からないなら、最初にそう言えば良いのに。 つくづく馬鹿だな、君は』

 

『うるさいっ……! ……てか、ハナコは僕の心中会話まで読み取れるんだよね? だったら、僕が保健室の場所知らないって分かってたんじゃないの? それで敢えて黙ってた、って事じゃないの!?』

 

『そこに気づくとは……天才だね』

 

『なんて性格の悪い……!』

 

 あれから僕は、風晴かぜはれさんをかかえたまま保健室を探し回って、十分弱走り続けた。途中、ちょいちょい休憩は挟んだものの、保健室に着いた頃には僕の両腕はパンパンだった。……あ、いや、別に風晴かぜはれさんが重かったって言いたいんじゃなくて、普段僕はあんまり運動とかしないタイプだから、ちょっとキツかったってだけだからね、うん。


 そんなこんなで僕は今、保健室の入り口近くにある丸椅子に座って待機している。保健室担当の草影くさかげ峰太みねた先生が、気を失ったままの風晴かぜはれさんをベッドに運び、寝かせてあげているのだ。先生に、事情を説明するのにだいぶ手間取ったが、ハナコの助力もあって、なんとか誤魔化せた。後は、風晴かぜはれさんが無事に目を覚ましてくれれば万事解決なんだけど……。

 

「……お待たせ。 見た感じだと、君の言うとおり、ただ気を失っているだけみたいだね。 しばらく安静にしていれば、すぐに目を覚ますだろう」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 先生のその一言で、スッと肩の荷が下りた気がした。僕の精神騎スピリットも、胸のあたりをナデナデしながら、安心している様子を見せていた。

 

「後のことは、私に任せてくれれば良い。 ……ところで、君は教室に戻らなくて大丈夫なのか?」

 

 

「…………あっ」

 

 『教室』というワードを聞いた瞬間、僕の身体からサァーッと血の気が引いていくのが感じられた。そうだ……風晴かぜはれさんの心の救出に気を取られて、その後の問題について考えることをすっかり忘れていた。授業に遅れてしまった事に関しては、もう諦めがついている。今問題なのは、クラスメイトの存在だ。

 

(どうしよう……なんて説明すれば良いんだ……)

 

 風晴かぜはれさんの治療をするにあたって、僕は朝の時間に彼女を無理矢理体育館裏へと連れ込んだ。その際、他のクラスメイトには何の説明もしていなかったし、場所が場所なだけに、皆不安や怒りを抱いているに違いない。事実、僕は教室を出る直前に小竹こたけくんから怒りの込もった鋭いパンチを喰らっている。教室に戻ったら、今までの事に関する説明責任を追及されるのはまず間違いないだろう。

 

『……こればかりは、流石に私でもフォローしきれないかもしれないな。 精神的ダメージはおろか、肉体的ダメージも多少は覚悟しておいた方が良い』

 

『そ、そんなぁ……』

 

 軟弱キャラのようなセリフを吐きながら、静かにため息をつく。しかし、いつまでも保健室に居座る訳にもいかないし、いずれクラスメイトと顔を合わせなければならない時は来るのだから、これはもう逃れようがない。「どうかしたのかい?」と不思議そうに尋ねる草影先生に、なんでもないですよ、と愛想笑いで対応し、渋々席を立つ。腰と足がどこか重く感じるのは、精神騎スピリットが蒼い顔で僕の足にしがみついているからだろうか。というか、今の僕もきっと、精神騎スピリットと同じくらい顔が蒼くなっているに違いない。

 

「じゃあ……失礼しました」

 

 そう言ってお辞儀をし、ガチャッ、と保健室の扉を開いた。

 

 

 


「───随分帰りが遅いと思ったら、こんな所に居たんですね、藤鳥ふじとりくん」

 

 

「え……き、霧谷きりや、さん……?」

 

 扉を開けた瞬間、僕の目に飛び込んできたのは、氷のように冷たい視線で僕を睨む霧谷きりやさんの姿だった。……いや、彼女だけじゃない。その後ろには、彼女と同じように怖い顔をしたクラスメイトがズラリと並んでいる。クラスの皆が、保健室の前に集まっていたのだ。

 

「一時間目の授業を無断で欠席した件は勿論……貴方には、それよりも重大な問題について謝罪をする義務がありますよね」

 

藤鳥ふじとり……テメェは俺の逆鱗に触れた。 一発……いや、百発ぐらい殴らなきゃ気がすまねぇ!」

 

陽葵ひまりちゃんは大丈夫なの……? 保健室に居る、ってことは、何かあったんだよね……?」

 

藤鳥ふじとり……頼むよ。 俺たちにもちゃんと訳を話してくれ」

 

「皆、待って……! 違うんだよ、これは……」

 

 皆の視線が一斉に突き刺さる。しん、と張り詰めた空気が僕たちを包んでいるようだった。僕の膝はガクガクと小刻みに震え、上手く息を吸うことさえままならない状態になりつつあった。

 

「か……風晴かぜはれさんは、保健室のベッドで眠ってる。 気を……失って、倒れていたから……」

 

「んな事ぁ見りゃ分かんだよ! 俺たちが聞きてェのは、何で風晴かぜはれが気を失って倒れてたのかだ!」

 

 小竹こたけくんの怒鳴り声が、廊下中に反響する。その声が引き金となったのか、他のクラスメイト達も口々に僕に対して文句や罵声を投げかけ始めた。「風晴かぜはれさんを返して!」「この疫病神!」「この学校から出てけ!」と、罵声は投石のように僕の方へと降り注ぎ、精神騎スピリットに生傷を負わせていく。足がすくみ、喉が震え、嗚咽が走る中で、僕の心はほとんどもう折れかけていた。

 

「ごめん……ごめん、なさい…………」



 今になって、ようやく気づかされた。僕は風晴かぜはれさんを救うことに必死で、周りの人の心配なんてこれっぽっちも考えていなかったのだ。皆の真剣な様子を見れば、嫌でも分かる。彼らにとって僕は、クラスの中心人物である風晴かぜはれさんを振り回し、その心を壊した悪魔なのだ。結果的にそれが彼女を救うことだったのだとしても、その事実は僕やハナコしか知り得ないし、言ったとしても伝わらない。……第一、彼女が心に傷を負うきっかけを作ったのは僕なのだから、これは当然の報いなのだ。

 頭の中はもう真っ白だった。口から漏れ出る息に覇気はなく、視界すら虚ろになってくる。考えが、何一つまとまらなかった。

 

『おい、気を……に持て! 君が…………と、皆を……い……的が…………だぞ!』

 

 脳内で、ハナコが何か叫んでいる。しかし、その声はノイズ混じりで響き、ほとんど聞き取れない。次第に、目の前で響く怒号すらも遠い音のように感じ始めた。……そうして、僕までもが気を失って倒れるようなオチだったら良かったのかもしれない。けど、僕の意識は、急に僕の両肩をガシッと掴んだ霧谷きりやさんの手によって、敢えなく引き戻されてしまう。

 

「貴方は、どうして風晴かぜはれを体育館裏に連れ出したんですか? そこで風晴かぜはれに何をしたんですか? せめて、それだけはきちんと話してください。 でないと……私たちは、貴方を人として信用できなくなってしまいます」

 

「ぅ、あ…………」

 

 霧谷きりやさんの精神騎スピリットが、僕の精神騎スピリットの眼前に剣を突き立てる。僕は、霧谷きりやさんの鋭い眼光から逃れられなくなっていた。パクパクと情けなく口を動かすしか出来ない僕の横で、僕の精神騎スピリットは蒼い顔のまま膝をついている。「もう限界だ」と、そう表現しているみたいだった。

 

 

 僕は、悪いことをしてしまったのかな? 頼みの綱であったはずの僕の信念が、音を立てて崩れていく。

 ……そうだ。このクラスに災いをもたらしてしまったのは紛れもない僕だ。そして、風晴かぜはれさんを……いや、彼女を含めたクラスの皆を振り回してしまったのも僕だ。

 僕が責任を追及されるのも当然だ。

 僕が皆から非難されるのも当然だ。

 

 僕は………僕は………………

 

 

「………………僕は、最低最悪の人間だ……」

 

 

 

 

「───そんな事ないよ。 剣悟けんごくんは、私のこと助けてくれたじゃん」

 

 えっ……と、掠れた声が漏れる。非難轟々の僕を、唯一擁護してくれたその声は、僕の真後ろから聞こえてきたものだった。

 すぐに、ガチャ、という音が聞こえる。振り返ると、そこには目に涙をいっぱい浮かべた風晴かぜはれさんが立っていた。彼女は、覚束無い足取りでゆっくりと此方に歩み寄ると、おもむろに僕の手を掴んだ。

 

「そんな風に自分を責めないでよ。 キミは私のこと救ってくれたのに、キミがそんなじゃ私、浮かばれないよ」

 

 彼女は困ったような笑みを浮かべながら、茫然として立ち尽くす僕の手をぎゅっと強く握った。ただそれだけのことなのに、何故だろう? 心にスーッと正気が戻っていくような、そんな心地よい感覚が僕を包んでいた。温かい……そう表現するべきだろうか。さっきまで浴びていた罵詈雑言を投石に例えるなら、今のこの感覚はまさに、自然の風を浴びているような心地だ。いつの間にか動悸は収まり、膝の震えも止まっていた。霧谷きりやさんの精神騎スピリットから距離を取ることに成功した僕の精神騎スピリットも、いつの間にか元気を取り戻し、何とか立ち上がれるようになっていた。

 

『……なるほど。 彼女の精神騎スピリット踊り子ダンサーであると同時に、回復系ヒーラーだったという訳か』

 

『え?』

 

 不意に聞こえたハナコの声。その言葉に釣られて風晴かぜはれさんの足元へ目を移すと、そこではすっかり元気になった彼女の精神騎スピリットが、華麗なダンスを踊っていた。よく見ると、彼女の精神騎スピリットはダンスをしながら、何かのエネルギー波のようなものを僕の精神騎スピリットへと送っている。……ひょっとして、これが僕の心を癒してくれたのだろうか? ピョンッ、ピョンッと元気にジャンプし始める僕の精神騎スピリットは、まるで"水を得た魚"を表現しているみたいだった。

 

『全く、世話の焼ける……。 君はもう少し、気を強く持つ練習をした方が良いんじゃないか?』

 

『ハナコ……ごめんね、心配かけて。 ありがとう』

 

『お礼なら私じゃなくて、目の前にいる彼女に言ってあげなよ』

 

 そう言って、ハナコは顎を使って風晴かぜはれさんの方を指した……ような気がした。声だけだから分かんないけど。風晴かぜはれさんは、僕の手を握ったまま動かない。僕に何かパワーを送るみたいに、グッと手に力を込め続けていた。

 先程まで僕に罵声を浴びせ続けていたクラスメイト達は、風晴かぜはれさん本人の登場に面食らったのか、しばらくの間ボーっとしてつっ立っていた。その中で、真っ先に我に返った霧谷きりやさんが、風晴かぜはれさんにおずおずと声をかける。

 

「か、風晴かぜはれさん……もう大丈夫なんですか?」

 

 彼女のその一言で、後ろにいたクラスメイト達も、火がついたかのように次々と風晴かぜはれさんに声をかけ始める。先程まで僕を責め立てていた時の様子とは打ってかわって、ワントーン高い、風晴かぜはれさんを気遣うような声音だった。

 風晴かぜはれさんは、ゆっくりと僕の手を離すと、そのまま僕のちょうど前に立った。霧谷きりやさん達と僕との間に、風晴かぜはれさん自身が壁となって立ちはだかっているかのようだった。彼女は、軽く深呼吸をしてから、霧谷きりやさん達クラスメイトに対して、こう言った。

 

「……私ね、皆に嘘ついてたんだ」

 

「え……?」

 

 真っ直ぐにクラスメイト達と対峙する風晴かぜはれさん。その表情は、彼女の裏に立つ僕からは見えない。ただ、足元に見える彼女の精神騎スピリットは、僅かながらビクビクと震えているみたいだった。

 

「昨日のさ、昼休みの事……実は私、まだちょびっとだけ怒ってるんだよね。 クラスの皆が、寄って集って私のことをバカにしてるみたいで、その……どこにも自分の味方が居ないような気分になって……正直、腹立たしい以前に、怖かった」

 

 クラスメイト達は、苦虫を噛み潰したような顔で押し黙り、風晴かぜはれさんの言葉に耳を傾けていた。

 

「……でもね。 えっと……私は皆に対して怒ってただけじゃなくて、自分にも怒ってたの。 今までずっと、私は能天気な陽キャで通してきたからさ。 私が感情を表に出したら、皆に迷惑がかかる。 だから、どんな時も、何があっても、絶対に笑っていよう。

 ……そう心に決めてたのに、怒っちゃったの。 皆に対して怒鳴り声あげちゃった。 ……私は、自分を許せなかった」

 

風晴かぜはれ……」

 

 小竹こたけくんは、とても悲しい目をしていた。広崎ひろさきくんは、目を閉じてただ黙っていた。梓内あずさうちさんは、うっすらと目に涙を浮かべていた。霧谷きりやさんは、信じられない、といった様子で口をポカンと開けていた。皆が多種多様な反応を示すのを、僕は風晴かぜはれさんの後ろからじっと見つめていた。

 

「私が教室を飛び出した後、暫くして、また戻ってきたでしょ? あの時にはもう、私はすっかり元に戻ってたんだ。 ……今までの、感情を押し殺す私に」

 

「そんな……じゃあ、風晴かぜはれさんはあの時、元気になった訳ではなく……」

 

「うん。 ……あの時は、バッチリ心が死んじゃってたんだと思う。 昨日の記憶も、なんとなく朧気だしね。

 ……でも、それで良いと思った。 皆に迷惑かけるぐらいなら、初めから感情なんか無くしちゃった方が良いって、そう思った。 ……でもね」

 

 そこで風晴かぜはれさんは一度言葉を切ると、振り返って僕の方を見た。

 

「そんな私に気づいて、ハッキリと"NO"を突きつけてくれたのが、剣悟けんごくんだったんだ」

 

 いきなり風晴かぜはれさんに見つめられ、固まってしまう僕。 どうすれば良いのだろう……と、視線をあちこちに移しながら動揺する。 と、ふと彼女の精神騎スピリットに目がとまった。 精神騎スピリットは、タラタラとしきりに汗を流しながら、僅かに震えていた。

 

(もしかして、不安なのか……?)

 

 毅然と振る舞う彼女からは想像もつかないが、彼女の心は不安で押し潰されそうになっているみたいだった。……いや、感情を表に出さないことに長けている彼女にとっては、それくらい容易なのかもしれない。でも、失感情症アレキシサイミアを抱えていた彼女にとって、自身の感情と向き合い、それを言葉にして伝えるというのは、相当苦しくて大変なはずだ。彼女は今、勇気を振り絞って不安と戦っている。

 なら、彼女のために、僕に出来ることは……!


 

 ───パシッ。

 


「え……? 剣悟けんご、くん……?」

 

 僕は、風晴かぜはれさんの手をそっと握った。僕の精神騎スピリットには、ヒーラーの力はない。だから、さっきの風晴かぜはれさんみたいな力はきっと出せない。それでも、少しでも風晴かぜはれさんの不安を和らげる手助けをしたいと思ったのだ。具体的に言うと、これは身体的接触による不安の低減・心理的な安心感を増幅させる効果を狙ったものだが……今はそんな解説どうでも良い。僕は、風晴かぜはれさんが不安に打ち勝って、最後まで話せるようサポートしてあげなきゃいけないのだ。

 

「大丈夫……ゆっくりで良い。 ゆっくり、少しずつ……自分の言葉で話せば大丈夫だから」

 

「……うん。 ありがと」

 

 コクリ、と小さく頷いた風晴かぜはれさんは、そのままもう一度クラスメイト達の方を向いた。心なしか、彼女の精神騎スピリットの汗が引いたような気がする。それでも僕は、風晴かぜはれさんの手をギュッと握り続けた。

 

剣悟けんごくんはね、体育館の裏に私を連れ出して、説教してくれたの」

 

「うん……え? 説教?」

 

「へ? あぁ、ごめんごめん。 何て言えば良いのかな……教え諭してくれた、って感じかな?」

 

「それもうほとんど"説教"って意味だよね……」

 

 クソッ……脳内でハナコがクスクスと小さく笑っているのが聞こえる……。でも、今は真面目な雰囲気なんだし、グッと堪える僕である。

 

剣悟けんごくんは、感情を押し殺そうとする私に、"我慢しなきゃいけない感情なんて無い"って教えてくれた。 辛い時には"辛い"って言って良い、怒りたい時にはちゃんと怒って良い、って……そう教えてくれたの。 その言葉に私、どれだけ救われたか」

 

 そう言って、風晴かぜはれさんは唐突に深く頭を下げた。

 

「あの日、急に怒って怒鳴っちゃったり、いきなり教室を飛び出しちゃったり……それで、皆を不安にさせちゃったことについては、私に非があると思う。 だから、ごめんなさい!

 ……でもね、あれが本当の私なの。 怒ったり、泣いたり、笑わなかったりする私も、ちゃんと"私"なの。 理解はしなくて良い……けど、知っていて欲しい」

 

風晴かぜはれさん……」

 

「それと、もう一つだけ。 ……剣悟けんごくんは、私の心を救ってくれた人なの。 だから、もうこれ以上剣悟けんごくんを責めないであげて。 私は、剣悟けんごくんのことを許した。 ……だから皆も、剣悟けんごくんを許してあげて欲しいんだ」

 

 風晴かぜはれさんの言葉は、後ろで聞いていた僕の心にも深く突き刺さった。でも、不思議と精神騎スピリットに外的損傷はなくて、むしろ心地いいような、じんわりと熱くなるような……そんな感覚だった。

 きっと、皆にも届いているだろう。風晴かぜはれさんの、誠心誠意の言葉が。一人ひとりの精神騎スピリットの様子を見るまでもなく、皆の顔を見ていれば、それが何となく分かるような気がした。


 数秒の沈黙の後、風晴かぜはれさんはゆっくりと頭を上げると、チラッと皆の様子を伺ってから、

 

 

「───はい! 真面目な話はこれでおしまいっ!

 私は、こうやって笑ってる方が自然体だからさ、これからもこのテンションで営業させて頂きますんでヨロシクゥ! ……ただ、泣きたい時には泣くし、怒る時には怒るから、それもよろしくお願いいたしまーすねっ♪」

 

 え……という拍子抜けしたようなクラスメイト達の顔。シリアスな場の空気は、その空気を作った帳本人によって崩された。でも、彼女のその笑顔は今まで通りの……作り物じゃない、彼女の本来の笑顔だ。

 

 

「…………あはっ」

 

 その笑顔に、その空気に……安心して思わず笑いが込み上げてきてしまう。強張っていた全身の筋肉が、緊張が、ストンと抜け落ちたみたいに無くなったからだ。

 

「え!? ちょっと剣悟けんごくん、今はまだ笑う所じゃなくないかい!?」

 

「あははっ! ご、ごめん、なんだか可笑しくて……!」

 

「全くもぉ~……ふふっ」

 

 しまいには、風晴かぜはれさんまで笑い始める始末。何が面白いのかすら分からないままに、二人でケラケラと笑い合う。

 ……そんな僕たちの様子を見ていたクラスメイトの中からも、

 

「……はははっ、何だよ急に笑い出しやがって!」

 

「もぉ~台無しじゃん! ……でも、何かちょっとホッとしたかも!」

 

「良かった……これでホントのホントに一件落着だね!」

 

 明るい声がポツポツと聞こえてくる。もう、クラスの皆を包んでいた険悪なムードは消え去った。転校当初に見た、明るい一年二組が戻ってきた。そう感じて、僕はなお一層嬉しくなった。保健室の前の廊下で、クラスメイト全員が揃って笑い合う。そんな、端から見れば異様に感じるかもしれないそんな光景。その中で僕は、この上ない満足感と幸福感に包まれながら笑いあっていた。

 


  

 ***

 

「──ら、彼女の『心此処に在らずメランコリック』はほぼ完治、か。 残念、あのまま首吊りでもする展開になってれば、もっと面白いストーリーになってたのに」

 

 校舎の屋上に寝そべり、風に髪を靡かせながら、彼は心底つまらなさそうに呟いた。彼が身体を僅かに傾けると、その視線はちょうど、保健室の前の廊下に位置する窓にぶつかる。彼はそうして、保健室の前に群がる一年二組の生徒たちを気だるげに見下ろしていた。

 

「ま、今回のゲームは俺の負けってことにしておこう。 まだまだ猶予はあるし、バカみたいに悩んで苦しみそうなカモは、此処には大勢いるからね」

 

 そう言って彼は、オレンジ色のペンダントを揺らしながらスクッと立ち上がる。それと同時に、一瞬強く吹き上げた風が、屋上の隅にあった花束の花弁を散らした。クシャリ、と音を立てながら、花束ごとその花弁を踏み潰して立ち上がる彼。その視線は真っ直ぐに保健室の方へと向けられて、そこにいた生徒の中の一人を───藤鳥ふじとり を突き刺していた。

 

 

「さぁ……君はどこまでやれるかな? 藤鳥ふじとり剣悟けんごクン」

 

 力なく開かれたその瞳は酷く濁っていて、同時にこれ以上ないほど霞んでいた。

 彼の仕掛けるゲームは、まだ始まったばかりだった。

 

 

 ***

 

 

 

 

「……全く、能天気にも程があります。 でも、私たちは藤鳥ふじとりくんのことだけでなく、風晴かぜはれさんのことも誤解していたんですね……」

 

 皆が笑い合う中で一人、伏し目がちにボソリとそう呟く霧谷きりやさん。どうやら、先の件で僕を責めていた事を反省し、少し落ち込んでいるみたいだ。僕が彼女の方に視線を向けていると、それに気づいた風晴かぜはれさんが、そっと霧谷きりやさんの方へと歩み寄り、

 

「つーばきちゃん! そんなに落ち込まないで。

 ……私知ってるよ、椿ちゃんがクラスの皆を引っ張って、私に謝ろうとしてくれてたこと。 それに、今ここに皆が集まってるのも、椿ちゃんや皆が私のことを心配してくれてたからでしょ? ……その気持ちは、本当に本当に嬉しい! だから、ありがとっ!」

 

「っ……!」

 

 ニコッと笑いかける風晴かぜはれさん。そんな彼女に心を打たれたのか、霧谷きりやさんは眼鏡を外して目尻の涙を拭うと、ほんの少し口角を上げて笑い返した。

 

「貴女には敵いませんね……。 ……ありがとうございます、風晴かぜはれさん……!」

 

 鎧に覆われた霧谷きりやさんの精神騎スピリットは、風晴かぜはれさんの精神騎スピリットから軽くパンチを受けて、敬礼していた。……多分、"胸を打たれた"んだと思うけど、鎧のせいでよく分からない。まぁ、彼女の誤解も解けたみたいだし、大丈夫だろう。

 

 

藤鳥ふじとりッ!!」

 

「……はひっ!?」

 

 突然、図太い声で僕の名前が呼ばれる。ビックリしながら振り返ると、そこには神妙な面持ちの小竹こたけくんが立っていた。

 

藤鳥ふじとり……俺を殴ってくれ!」

 

「は……ええ!?」

 

「俺は……お前にとんでもなくひでぇ事を言っちまった。 お前の言い分を理解しようともせず……お前に手をあげたりもしちまった。 それは、俺が風晴かぜはれに手をあげちまったようなモンだ」

 

 小竹こたけくんは、ギュッと固く目を閉じて語る。そっか……彼は彼なりに、責任を感じているんだな。そりゃ、確かに小竹こたけくんに一発殴られたりはしたけど、元はといえば僕が彼を刺激するような行動をとったからだし、事の発端を思い起こしてみても、彼はどちらかというと被害者側だ。それなのに、小竹こたけくんは自分にも非があると反省している。彼の精神騎スピリットも、髪や服装をテキパキと整えて"心を入れ替えよう"としているみたいだ。彼は本当は真っ直ぐで、真面目で、誠実な男なんだな……そう思った。

 

「そんな事できないよ。 小竹こたけくんに迷惑をかけたのは僕だし」

 

「駄目だ! それじゃ俺の気が治まらねェ! 俺には俺なりのケジメのつけ方ってモンがあんだ!」

 

 どこぞの古いヤクザみたいだな……と内心で思いつつ、どう対処すれば良いものか分からずに困ってしまう。まさか本当に殴る訳にはいかないし、どうしよう……? そう悩んでいた時だった。

 

 

「必殺! ニャガシャカストレートチョオオップ! えいやーっ!」

 

「ぐおっ!? 何を……って、風晴かぜはれ!?」

 

「んっふふー。 剣悟けんごくんに代わって、私が一発お見舞いしてやったぜぇー!」

 

 小竹こたけくんの真横から近づいて、彼の頭にいきなり軽めのチョップを放ったのは、風晴かぜはれさんだった。ビックリして目を白黒させる小竹こたけくんに、風晴かぜはれさんは優しく笑いかける。

 

「そんな気負わなくって大丈夫なのにぃ~。 淳平じゅんぺいくんは悪いことなーんにもしてないじゃん。 むしろ、私のこと心配してくれて、私のために色々気を回してくれてたんでしょ? それは、素直に嬉しいし」

 

「は!? いや、違、俺は別にそんなつもりじゃ……!」

 

「あははっ、照れなくても良いじゃん! お主も可愛い奴よのぉ~♪ ……ありがとね、淳平じゅんぺいくん」

 

「っ! お、おぅ……」

 

 赤くなった顔をポリポリ掻きながら、小竹こたけくんは小声でそう返事をしていた。ここで笑ったらまた別の理由で殴られそうだから、ニヤケそうになる頬を押さえて必死に堪える。ま、本人は満足してるっぽいし、大丈夫だろう。

 とにかく、皆落ち着いたみたいで良かった。一時はどうなる事かと思ったけど、最終的には、クラスメイト皆に笑顔が戻っていた。やっぱり、一年二組には笑顔が似合う。

 

 

回復系ヒーラーとしての力と、踊り子ダンサーとしての力。 その両方を駆使して、君だけでなく、皆の心にも救済をもたらした。 彼女はまさに、クラスのムードメーカーであり、中心的存在だな。 ……すごいよ、風晴かぜはれ 陽葵ひまりという人間は』


 ハナコも、風晴かぜはれさんのを魅力と技量を認めているようだった。僕も、ハナコと同意見だ。強さだけじゃなくて、優しさも持っている。それこそが彼女の個性なんだと思う。ついさっきまで気を失って眠っていたのに、回復してすぐに皆の前に立って、あれだけの雄弁が出来るなんて、普通は考えられない。それをやってのける彼女の精神的な強さと、根っこにある優しさは、尊敬に値すると思う。

 

 

 

「……そうだね。 風晴かぜはれさんは、太陽みたいな存在だよ」

 

 

「へぁっ!?」

 

 突如、変な声を上げて飛び上がる風晴かぜはれさん。どうしたんだろう? と一人首を傾げていると、皆の視線が一斉に僕の方へ向いた。そうして初めて、僕がまた何かやらかしたんだと気づく。

 

「け、剣悟けんごくんさぁ! 本当に反省してるのっ? そういう、その……小っ恥ずかしい発言をポロッて出すのは、私は、如何なものかと、思うのですがっ!!」

 

「いや、ごめん! 今のはその、心の声が……」

 

「心の声って何!? 余計恥ずいんだけど!」

 

 風晴かぜはれさんの抗議とともに、皆から笑いが起こる。うぅ……油断するとすぐ心中会話を忘れちゃうなぁ……。でも、今の風晴かぜはれさんは、会話を誤魔化そうとしたりはしていないみたいだ。"怒る時はちゃんと怒る"を実践しているのだろう。それがなんとなく分かるからか、僕は怒られている身でありながら、少し嬉しかった。ただ、そんな耳まで真っ赤にして怒らなくても良いのになぁ、とは思うけど……。

 

 

『全く……相変わらず君は爪が甘いね。 そろそろ会話のやり方には慣れた頃だと思っていたのに』

 

『うぅ……返す言葉もない……』

 

『……でもまぁ、今回はよくやってくれた。 初めてにしては上出来だったよ。 ありがとう』

 

『え……』

 

 ハナコに珍しく誉められたのでキョトンとしていると、ハナコはコホン、と軽く咳払いをして、改まった口調でこう言った。


『……深層世界での出来事やその前後の記憶は本来、彼女の頭の中から消えるはずなんだ。 が、現に彼女は、君に救われたという事実をちゃんと覚えている。 君が深層世界で、彼女の精神騎スピリットとしっかり向き合ったおかげさ』


『そ、そうなんだ……』

 

風晴かぜはれさんの心此処に在らずメランコリックを治療できた功績は大きい。

……だが、これは氷山の一角だ。 葉後高校には、まだ心此処に在らずメランコリックになり得る危険を孕んだ人間が大勢いる。 君にはこれからも、そういった生徒たちを救っていって欲しい。 ……お願いできるかい?』

 

 ハナコの真っ直ぐな言葉が脳内に響く。目の前には、二組のクラスメイト達の笑顔が溢れていた。笑い合ったり、はしゃぎ合ったりする仲間たちの喧騒は、不思議と気分を穏やかにさせた。そんな光景を見ていれば、答えなんて自ずと決まってしまう。足元に目をやると、僕の精神騎スピリットも、コクリと何かを決心したように強く頷いていた。……僕の心はもう決まっているみたいだ。

 

 

 

『勿論やるよ。 風晴かぜはれさんだけじゃない……僕は、皆を心の苦しみから開放してみせる! 皆を救ってみせる! ……だから、今後ともよろしくね、ハナコ』

 

『あぁ、頼んだよ。 剣悟けんごくん』

 

 ギュッ、と首から下げたペンダントを握りしめながら強く決意する僕。これから先、どんな苦労が待ち受けているかは分からない。……けど、必ずやり遂げてみせる。そんな強い思いを胸に秘めながら、僕は皆と一緒に教室へと帰るのであった。

 


 

 第一章 完


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