第9話 既に味方が取り込まれていたとは・・・

 リリアーナ中尉に一通りの質問やレクチャーを終えてそろそろメシにしようと考えていたところで、

 「あ、後ですね、男性のそれも独身男性の航宙艦に女性が泊まったりクルーになったりすると、き、基本的に愛人とかそういうのに見られます・・・」

 少し顔を赤くして、恥ずかしそうにリリアーナ中尉が俺にカミングアウトをしてきた。

 俺は当然意味を理解するまでフリーズである。

 「・・・えっ!?何その意味分かんない偏見・・・」

 意味を理解したら思わずそんな事を言ってしまったが、リリアーナ中尉は更に・・・

 「そもそも、惑星間航行性能がまだまだ低い時代からあるしきたりらしく・・・その、客船なんかはそうならないのですが、個人の船に乗るとそういう扱いになります。」

 「・・・それが分かっていて、何故来た?軍の命令では無いんだろ?」

 地球でも大航海時代はそんな感じだったのかもしれないが・・・いや、多分普通に色んな意味で危ないから・・・いやいや待てよ?昔の漁師とかの価値観の方が近いのか?いずれにしてもコレ、責任とって(はぁ~と)パターンか?

 などと内心で汗を垂らしていると、

 「そ、それで・・・灯護さんがよろしければなんですけど・・・」

 こ、これは・・・来るのか!?

 「出来ればクルーとして雇っていただけませんか?その、諸事情で実家にも帰れない状況でして・・・」

 キターーー!?・・・じゃないよ!?なんだ諸事情って!?立ち昇るフラグ臭が半端ないな!?

 「えっと、とりあえず諸事情って言うのは?」

 俺は努めてクールにリリアーナ中尉に質問する。

 「実は少し前から言い寄って来る気持ち悪い人がいて、その人は伯爵家の出で、三男坊なんですけど凄く素行が悪いし気持ち悪くて、その上に女性の敵って感じの人で生理的に受け付けないんですよ、キモイし・・・」

 「おおう・・・3回も言うほどか・・・」

 「はい、しかも妹にも声をかけてやがりまして・・・本当にキモくて・・・妹とも話をしてるんですけど、気持ち悪くてどうしようもなくて・・・気持ち悪いんですよ」

 まさかの6連発!?ていうか、妹の方にも声をかけるとか完全にないわー・・・ん?話?妹と何を話してるんだい?

 「・・・まさかと思うけど、セーフティ・シェルター、避難場所に俺の船を使おうとしてる?」

 リリアーナ中尉の思惑を確認すると、

「いえいえ、そのそれだとちょっと申し訳ないからその、愛人とかになってくれたら守ってくれないかな〜って思ったり?今なら妹も付いちゃうし、美味しいぞ!?みたいな?」

 中尉、キャラが崩れておりますゾ!?・・・つまり、この流れは・・・俺が爆発される流れという事ナノかな?(すっとぼけ)

 「・・・とりあえず、前向きに検討してあげるから、その諸事情を話しなさい。」

 「分かりました、ありがとうございます。」

 とりあえず、彼女の可愛い笑顔は反則だと思う、そう俺はこの時の男の性について悲しく思った。


 リリアーナ中尉はまず徐ろに、

 「あ、私の事はリリィと呼んでください、妹の名前はエルアーナ、私はエルって呼んでます。」

 妹の名前を教えてから本題に入る

 「それで理由なんですけど、そもそも私達が軍に入った理由が、実家の両親がかなりの俗物って奴でして・・・両親の政略結婚から逃げる為に私とエルは軍に入隊しました。」

 俺は頷いてリリィに話の続きを諭す。

 「普通、こういった政略結婚なんかは両家の合意だけでは無く本人達の同意も必要になります。これは帝王国法にも記されております。ですが、私達の両親はそれが分かっていなくって・・・私と妹がいないところで勝手に決めちゃったんですよね・・・はぁ~・・・」

 両親が分かっていないの辺りでリリィは凄く遠い目をしてため息をついた。

 「私とエルは軍学校に通ったのでその辺りも多少教わっているのですが両親は全然らしくって・・・祖父母がいた時はよかったんですけど、去年亡くなってしまって・・・」

 「・・・その辺りから速攻でやらかしてると?」

 俺の言葉を聞いてリリィは静かに首を縦に動かした。

 「・・・はい、しかもお金を貰ってるぽくて、既に然るべき所には報告をしてあるのですが・・・相手の家も同じ穴の狢のようで・・・」

 ダブルでヤバイようだ。

 「・・・なるほど、つまりその相手が今言い寄って来てるキモい男で、しかも話が両家共にやらかしてるとなると話がデカくなっている為に当局もすぐにとはいかず・・・因みに報告はいつ上げたのかな?」

 「それが2ヶ月程前ですね、分かってからすぐに軍の密告メールで届けたので、漸く軍法務部に届いたばかりだと思います。小型艦でも軍本部がある首都までは最速で3ヶ月はかかるので・・・しかも、裏取りや真偽を調べるとなるともっと時間がかかると思うので・・・」

 とりあえず、既に必罰は確定しているようだが彼女達の安全がまだ確保されていないようだ。

 「ですから、どうせ逃れないのなら少しでも、その、カッコいい人がいいなぁ〜って(ボソッ)」

 「ん?今、なんて?」

 なんか凄い勘違いしたくなるような事が聞こえた気がするが・・・

 「いえいえ!?なんでもないですよ~、灯護さんは性格も良くて頼りになりそうですし、私達でもお手伝い出来ることがあるとも思ったのでお話させていただきました。」

 「そうか・・・ふむ、まぁ俺としては光栄というか嬉しいのだが・・・ルナはどう思う?」

 先程コッソリと俺の背後をフヨフヨと飛んでいる黒い球体にも話を聞くと、

 「よろしいのでは無いでしょうか?取り調べを受けた際にこちらを担当したのが彼女の妹君だったようですし・・・既に私とも取引をしておりますしね(コソッ)」

 「ん?最後なんて言った?」

 「いえ、妹君も中々優秀な方のようですし・・・そういえば、お二方は姉妹といえども随分そっくりなのですね?」

 ルナの急な話題転換に少し疑念を抱きながら、

 「そうなのか?リリィ?」

 リリィにそう聞くと、

 「私達は双子ですから、それなりに似てるとは思いますよ?」

 「コチラに写真データがございます。」

 そう言って見せてくれた写真は、

 「髪は同じ桃色だけどなんというか、写真だと文学系な第一印象だな。」

 「そう見えるかもしれませんが、実際は妹の方がスポーティーで強いです。私は3回に1回しか勝てません。射撃と操縦でしたら逆に私が勝つのですけど・・・」

 「確かに、捜索などでは拠点捜査や制圧の方が得意だと申し上げておりましたね」

 メガネに姉と同様の長い髪を彼女は束ねて右肩から前に流しているヘアスタイルが目の前にいるリリィとは違った印象を与える。

 情報端末を持っている今の写真だと、インテリ系にしか見えなかった。

 「まぁ、事情は分かったからとりあえず晩御飯にしようか?」

 そういった辺りで俺の腹が鳴るが、近くから小さく別の腹の音が聞こえた。

 「・・・なんですか?」

 顔を赤くしながら精一杯無かった事にしようとする所がいじらしく、思わず彼女の頭をポムポムしてしまった。

 「なんでもないよ、自動調理器でご飯を食べよう」

 「灯護、しっかりと私も買い物が出来たのですから私も後でナデナデを要求します!」

 この後、食事をとり、その時にリリィが自動調理器の性能に感動し、食べ終わった後で買い出しをしっかりと出来たルナをナデナデしてから、この日は休んだ。

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