第5話 1月7日

[それじゃあ、1月7日の午前10時に駅前に集合でお願いします。]

[あいあい。]


 さて、集合場所に着いた。現在、9時半である。普段であれば、土曜日のこの時間は家で寝ているのだが、遅れてはいけないと思って寝てたら、思った以上に早く起きてしまった。仕方なく、予定より早い時間に家を出たのだが、この時間に外出するのも悪くないと思った。というのも、今日、行き道でデートに向かう男女を見たのだ。手をつなぎながら横並びで改札を抜けようとするがゆえに若干辛そうな体制になる彼氏、「一旦、手離した方が楽やろ」とつっこみたくなるような、でも、ほほえましい光景が目の前に広がっていたのだ。あぁ...素晴らしい!断じて不審者ではないぞ!


「天地くん。天地くん!」

「おぉ!びっくりした!上杉か。早いな。まだ、集合の15分前だぞ?」

「そういう天地くんこそ早くないですか?」

「俺はまぁ、早く目が覚めたからなぁ...」

「楽しみだったってことですか!?」

「もう、それでいいよ...」

「んで、今日は何をするんだ?」

「14時30分から一緒に映画を見ましょう!ということで、チケットを今から取りに行きます。」

「あいよー。」


 チケットを取り終わり、早めの昼ご飯へ・・・


「この商品も今月中には、20円値上げするそうですよ。」

「またか!?この前も値上げしてなかったっけ?」

「物価高も大変ですねぇ。」

「だなぁ。ところで、どうしていつも敬語なんだ?」

「あぁ、大学生になってから、年上か年下かわからなくてですね。敬語を使うようにしているんですよ。それに本当に仲のいい友達というのも大学にはいないので...」

「なるほどなぁ。まぁ、それが楽なんだったらいいけど。俺も敬語でしゃべったほうがいいか?」

「いや、そのままの方がいいです。僕も慣れてきたら、タメ語で話したいと思ってますし。ただ、最近敬語ばかりで急に帰るのは難しいんですよね。初めてできた大学の友達ですし...」

「...そうか。まぁ、ぼちぼちでいいよ。」

「でも、確かに他人行儀な感じはしますね...そうだ!名前の呼び方だけでも変えません?」

「というと?」

「下の名前で呼び合おうってことですよ。僕の下の名前知ってます?」

「澪だろ。この前聞いたよ。」

「...」

「どうした?」

「こうやって、友達に下の名前で呼び捨てで呼ばれるの初めてなので...その...」

「照れてるのか?かわいいかよ。」

「可愛いなんてそんな...」

「で、俺のことは下の名前で呼ばないのか?それとも忘れたか?」

「覚えてますよ。そ、聡助でしたよね。」

「かんでるな。本当に言い慣れてないんだな。」

「しょうがないじゃないですか!」

「んじゃ、まぁ、そろそろ行くか。」

「...そうですね。」


 映画鑑賞後・・・


「めっちゃ、良かったですね!最後はハッピーエンドでしたし!」

「まぁ、良かったのは良かったけど。あれ、若干男の方、おかしくない?本当に愛があれば、あそこまでひどい状況にはならなかったような気が...」

「それは、確かにそうですけど...別にいいじゃないですか!終わり良ければすべて良しですよ!」

「まぁ、それはそうかぁ。ところで、時間も微妙だけど、どうする?喫茶店でも寄るか?」

「聡助くんに時間があるなら、行きたいです!」

「了解。そこの店でいいな?」

「はい!」


 喫茶店マスターは、見た目では何歳か判断のつかない、しかし、かっこいい雰囲気をまとっている。

「いらっしゃい。いつものでいいか?...?今日は2人か?」

「あぁ、大学で友達ができたんだ。俺は、いつもので。澪はどうする?」

「私も同じもので大丈夫です。」

「そうか。ようやくお前にも友達ができたか。あいよ。いつもの2つ。」

「ここの店、いつも来るんですか?」

「あぁ、結構通ってる。それに、アルバイトもさせてもらってるんだ。」

「へぇ、確かにいい雰囲気の店ですしね。」

「ついでに晩飯もここで済ますか?おいしいぞ?」

「じゃあ、そうします。」

「今日は、聡助が友達を連れてきた記念だ。オムライスでいいよな?サービスするよ。」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


晩飯終了


「おいしかったです!ありがとうございました!」

「そう言ってくれると、うれしいよ。また来てくれ。聡助、こういう風に友達つれてきて店の売り上げに貢献してくれてもいいんだぞ。」

「考えとくよ。」


「本当に、おいしかったですね。」

「そうだな。流石、俺の目標だよ。」

「将来は、喫茶店を経営するんですか?」

「あぁ、あんな感じの店を開きたい。」

「へぇ、いいですね!もし、聡助くんがお店開いたら、通いますね!」

「友達もつれてきてくれたら助かる。」

「マスターと同じこと言ってるじゃないですか。似ていってるんじゃないですか?」

「そうだと良いなぁ。」

「いいなぁ、聡助くんには目標があって。僕、まだ将来のことなんて考えられないですもん。」

「...まぁ、ぼちぼちでいいんだよ。自分のペースでさ。最悪、ずっと迷ってるようなら、俺が開店する喫茶店で雇ってやるよ。そのうち、やりたいことも見つかるだろ。」

「それ、良いですね!聡助くんと一緒に働くの楽しそう!まずは、あの喫茶店でアルバイトしてみようかな...」

「いいんじゃないか。あの店もあと一人ぐらい雇う余裕ぐらいあるだろ?」

「また、親に相談してみますね。って言ってるうちに着いちゃいましたね。僕は、こっちなので。またね。」

「おう、じゃあな。」

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俺は毎年クリスマスイブにイルミネーションを見に来たカップルを1人で観察している。が、今年は観察はほどほどに2人でイブの夜を過ごす。 同窓会後、熱が出た @wowsakaren004

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