第4話 1月4日

 なぜ、三が日が開けてすぐに、大学が始まるのだろうか。もう少し長くても良いのではないか?まぁ、そんなこと言っても仕方がない。仕方なく登校するとしよう。

 電車に揺られる。朝だし、席は空いていない。痴漢の冤罪も怖いため、両手でつり革を持っている。最寄駅から大学までは15駅ほど。なかなかに遠い。とはいえ、カップルの観察ができるから、苦ではない。目の前には、高校生カップル。彼女を人ごみの圧迫から守るために、壁ドンしている体格の小さい彼氏。萌えるわぁ。夏休み明け頃からだんだん仲良くなっていった二人がとうとうこんな関係になるとは!尊いわぁ...二人は目的駅に着いたため、降りて行った。残りは、ほぼサラリーマンしかいない。興味はない。立ちながら寝るか。


 急に後ろから肩を叩かれた。敵襲か!?

「おはようございます!天知くん。」

「...おぉ、上杉か。おはよう。お前も、家こっちの方だったんだな。」

「そうです。というか、同い年って言ってましたし、名前も間違えてたけど知ってるようでしたし、もしかして通ってる大学同じだったりします?」

「あぁ、やっぱり気づいてなかったのか。一緒の大学だぞ。何回か同じ講義取ってたこともある。」

「どうしていってくれなかったんですか!?」

「いや、まぁ、どうでもいいかなと思って...」

「どうでもよくないですよ......ところで、天知くん、電車が一緒ということで、一緒に帰るとかしません?」

「別に、他に誰かと帰るってわけでもないし、別にいいぞ。」

「やった!今日は何限までありますか?」

「今日は2限だな。」

「一緒ですね。それでは、2限が終わったら、大学の門の前で合流しましょう!」

「了解。」


2限が終わった。約束通り門前へ行く。すでに、上杉が立っていた。

「悪い。待たせたか。」

「いえいえ、全然待ってないですよ?」

「そうか。それじゃあ、帰るか。」

「...それなんですけど、今、12時じゃないですか?」

「...そうだな。」

「今から、一緒にお昼ご飯食べに行きません?」

「そういうことか。時間ならあるし、構わないぞ。」

「やった!それじゃあ、お昼ご飯食べに行きましょう!ちなみに、何が食べたいとかありますか?」

「特にはないな。3時からバイトだから、そこに間に合えば。」

「じゃあ、駅前のハンバーガー店とかで大丈夫ですか?」

「おう、別にいいぞ。」


「サムライバーガーと、白ぶどうジュースのSください。」

「かしこまりました。料金は、610円です。」

「はいよ。」

「それではお席でお待ちください。」

「先に席座っとくぞ。」

「わかりました。」


2人とも席に着いた。

「お前は何を頼んだんだ?」

「チーズバーガーです。好きなんですよ。」

「へー。そうか。でも、それだけで足りるのか?」

「お昼ご飯ですし、あまり食べると太っちゃいますし。」

「あー、まぁ、大学生になると高校の時より太りやすくなるよな。」

「僕の場合、正月太りもあってさ。」

「...そもそも、そんなこと気にするやつが、昼飯ハンバーガー店に来るか?」

「うるさいですよ。好きなものは好きなんだから仕方ないじゃないですか。」

「まぁ、おいしいしな。」

「ですよね。ところでなんですけど、明日は何限まであるんですか?」

「あー、明日は5限だな。」

「え!そんなにあるんですか!?」

「明後日も4限まであるしな。」

「なんでそんなに忙しいんですか!?」

「まぁ、卒業に必要のない講義も受けてるし、仕方ない。授業料変わらないのに、講義受けるだけで資格取れるんだから、活用しようと思って。」

「なるほど。優等生だね...一緒に帰りたかったんだけどなぁ...」

「まぁ、講義のない人間をそこまで待たせるのもなぁ...どうして、俺と一緒に帰りたかったんだ?」

「...泣いてる僕を見て、放っておかずに、優しく接してくれた君と仲良くしたいから?」

「どうして、疑問形なんだ!?...じゃあ、今週の休みにでも、一緒に遊びに出かけるか?」

「本当ですか!!行きます!行きたいです!行かせてください!」

「三段活用みたいになってるぞ。」

「文法的に、そのツッコミは正しくないですよ?」

「お前、意外と面倒くさいな。」

「文学部なので。」

「文学部が面倒くさいみたいなのやめような。」


店を出た。

「それでは、また日取り決めるために連絡しますね。さようなら。」

「了解。またなー。」

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